- 2025/11/20 掲載
ChatGPT登場から早3年…今知っておくべき「AIブーム」の正体、“激動30年”を超図解(2/3)
「表面的」に捉えてはいけない、AIとICTの歩んだ道
AI開発の歴史は、コンピューター(情報技術)やインターネット(通信技術)と同様に20世紀半ばにまでさかのぼることができる。AIという用語は、人工知能の研究領域が確立された「ダートマス会議(1956年)」の提案書(1955年)が初出とされる(McCarthy, et al [1955])。ただし、提唱された概念そのものは注目を浴びたものの、現実への応用では、簡単なパズルや迷路しか解けず(第1次ブーム)、専門家の知識を詰め込むエキスパートシステムも、多様で複雑な現実問題に対処できなかったため(第2次ブーム)、ブームの後は「冬の時代」を繰り返した(図表1)。
特に第2次ブーム後は、1990年代から2000年代まで、かなり長い「冬の時代」となった。同じ頃、ムーアの法則に導かれて、順調な発展が続いた情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)の足取りとは対照的だ。
本連載で詳しく解説したとおり、ICTはパソコンとインターネットを両輪として、米国の「ニュー・エコノミー」を力強くけん引したばかりか、モバイル化によって途上国経済の発展さえも促し脚光を浴びた。「冬の時代」を過ごしたAI開発とはまるで正反対だ。
ICTとAIのこの「明暗」だけを表面的に捉えると、両者はまったく違う道を歩んできたように思える。だが、実はICTとAIの開発は密接に関わりながら並走していた。
なぜAIは「冬の時代」を繰り返したのか?
AIの開発には大きく3つの要因が影響する。第1は、機械学習などAIのアルゴリズム開発、第2は、半導体やコンピューターなど計算資源の発展、第3は、AIの学習に欠かせない豊富なデータの利用可能性だ。AIの基本概念やアルゴリズムの手法については、第1次ブームのころから脈々と研究が進められていたが、実際の人間行動で常時触れるさまざまな情報をデータ処理するには、コンピューターの性能(計算資源)があまりに限られていた。
さらに、人間の思考に必要な複雑で多様な情報を大量に収集し、AIが学べる状態でデータとして蓄積すること(availability)は、そもそも現実的ではなかった。それゆえ、人間のような知能を実際に造り出す取り組みは、大きな壁にぶつかったわけだ。
特に第2の「冬の時代」は、パソコンとインターネットが勃興し、次々と社会実装されていった時期であり、AIではなくICTの領域に多くの資金と人材が押し寄せた。しかも、その勢いは先陣を切った米国や先進国だけにとどまらなかった。
2000年代に入ると、携帯電話などのモバイル技術を突破口に新興国や途上国までも巻き込んで怒涛のような「情報化のグローバル化」が世界を覆ったのだ。第2の冬が長く続いたのは、ICTブームの奔流が世界規模で広がり続けたからに他ならない。 【次ページ】火付け役は? 第3次AIブームをもたらした「3つの要因」
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