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2013年02月21日

決定的に異なるビッグデータ環境の「ヒト」と「モノ」:篠崎彰彦教授のインフォメーション・エコノミー(51)

大量の断片的データを素早く収集する情報処理技術と高度な統計解析技法が組み合わさった「ビッグデータ」現象が注目されている。「いつでも(時間)、どこでも(位置)、誰でも(ヒト)、何でも(モノ)」のデータが有機的に関連付けられ、価値ある「情報」や意思決定の支えとなる「知識」に昇華できるのだ。ただし、リアルな時空における「ヒト」と「モノ」の違いは大きい。ビッグデータの活用に際しては、「誰でも」と「何でも」の違いをよく認識しておくことが大切だ。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠ア彰彦

クラウド化とビッグデータの時代

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 メール、検索、つぶやき、SNSなどを通じた情報量の拡大は加速度的だ。飛躍的な情報技術革新によって、今では日常のあらゆる活動がデジタル・データとして生成され、文字、音声、画像、映像など多様な形態でネット上に流通し蓄積されている。

 もっとも、生成された莫大なデータの多くは、意味ある「情報」として認識されないまま消滅したり、埋もれたまま退蔵されたりしている。データ化されたさまざまな事象を意味づけたり関連付けたりする過程で「知識」を創造し、有効に活用しているとは必ずしも言い切れないのが実情だろう(データ、情報、知識の違いと概念整理は連載の第12回参照)。

 それが今大きく変わろうとしている。ユビキタス化を経てネット上のデータを誰もが容易に活用できるクラウド化が進んだ。さらに、小さな断片的データを大量に素早く収集する情報処理技術と高度な統計解析技法が組み合わさり、脈略のない膨大な量のデータが人々の意思決定や判断に役立つ「情報」や「知識」に昇華できる環境が生まれている。いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれる現象だ。

 スマホを身につければ居場所が特定化でき、電子マネーを使えば何を購入したかがわかり、つぶやけばその人の考えもとらえることができる。家電製品や自動販売機に埋め込まれたセンサーは人を介することなくモノの使用状況をデータとして発信できる。こうした大量のデータをうまく解析すれば、マーケティングや商品開発に活かすことが可能だ。

 ユビキタス時代にキーワードとなった「いつでも、どこでも、誰でも、何でも」は、時間データ、位置データ、属人データ、物体データとして、バラバラではなく有機的に関連付けられて、何らかの価値がある「情報」となり、それらを判断の支えとなる「知識」へとうまく体系化できるようになったのだ。

改めて問われる「ヒト」と「モノ」の違い

 ここで改めて問い直されるのが、ネット上ではなくリアルな時空における「ヒト(誰でも)」と「モノ(何でも)」の「社会性」の違いだ。ヒトであれモノであれ、情報技術に親和的なデジタル化=データ化されるということは、明示的ではないにしろ事実上はそれぞれに何らかのID(個体識別番号)が付与されていることを意味する。

 個別にIDが付与されることによって、ヒトやモノが集合体としてではなく、単体として個々に識別され、それらがネット上で結びつくことによって解像度の高い情報が生成される。この点を技術の側からみると、構成要素としてのヒトとモノは、IDが付与される対象としてまったく同列の存在だ。

 しかし、現実の経済社会における両者の性格はまったく異なる(図表1)。

図表1 「ヒト」と「モノ」の社会性の違い
「ヒト」「モノ(含む動植物)」
データ化される
対象の社会性
・意思決定の主体
・管理されることを敬遠
・所有権(売買)の対象にはならない
・法的には債権・債務の概念が及ぶ
・意思決定の客体
・管理されることにメリット
・所有権の対象(売買可能性)
・法的には物権の概念が及ぶ

 IDの対象がヒトである場合、それは「自由」な意思決定の主体であり、基本的に「管理」されることを忌避する傾向をもつ。出退社時間管理など社会生活を送る上で最低限必要な管理、あるいは、セキュリティ上必要な管理にはやむなく同意できても、トイレの利用状況や嗜好品の購買歴管理など、日常生活の細事にわたって私的領域に立ち入られ、過度の管理=監視が行われることには拒絶反応が強い。

【次ページ】「ヒト」と「モノ」の社会性の違い

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