• 2026/08/26 06:40 掲載

なぜ日本は成長できない? 開業も廃業もG7最下位…“企業が消えない国”の致命的弱点(2/3)

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第194回)

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ノーベル賞で注目…「創造と破壊」が生む成長のメカニズム

 シュムペーターによると、「新結合」は古い均衡点を微調整するような「連続的な適応」ではなく、「旧結合の淘汰」によって、大きな断層を生みながら「非連続的に」達成される。これは最新の現代経済学にも受け継がれている有力な視点だ(Schumpeter(1926))。

 たとえば、2025年のノーベル経済学賞は「イノベーション主導による経済成長の解明」などに取り組んだノースウエスタン大学のモキイア教授、コレージュ・ド・フランスのアギヨン教授、ブラウン大学のホーウィット教授に授与された。

 受賞理由は「創造と破壊がイノベーションの原動力」であると同時に「破壊の負の側面を緩和する制度」が重要であることを明らかにしたことだとされる。

 創造と破壊は、経済・産業・企業の各層における「新陳代謝」のダイナミズムを意味しており、これから本格化するAIの社会実装でも重要な論点となるだろう。

AI投資だけでは不十分?G7分析が示した「新陳代謝」の効果

 新陳代謝による経済成長は実証分析の結果からも明らかだ。小玉他(2026)では主要先進7カ国を対象に、企業レベルと産業レベルの新陳代謝(創業率、廃業率、資本と労働のリリエン指数)がマクロ経済の生産性に与える影響が検証されている。

 リリエン指数とは、各産業における資本や労働の増減率と全産業の増減率の乖離を集計したもので、この値が大きいほど産業間の新陳代謝が活発であることを示す。

 筆者も加わったこの研究では、日本、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリアの7カ国について、2001年から2019年までのデータを用いて、ベイジアンネットワーク(複数の要因の関係を確率で表すモデル)による因果構造分析が行われた。その結果、次の3点が明らかとなった(図表1)。

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図表1:企業・産業の新陳代謝と生産性に関する主要7カ国の実証分析
(出所:小玉他(2026)より筆者作成)

 第1に、新陳代謝の活発さが直接的、間接的に生産性向上に影響を与えていること、第2に、産業の新陳代謝に比べて企業の新陳代謝の影響が大きいこと、第3に、企業の退出(廃業)はこうした相互作用の起点となって、さまざまな経路で生産性向上に影響する主要な要因(key factor)であることだ。

 これは、イノベーションの渦中にあるAI時代の成長戦略では、「フロンティアを拓く取り組み」と「旧領域からの退出促進」を表裏一体で進める必要があることを示唆している。

 つまり、攻めのAI投資で新たなビジネスを創出するだけでは不十分であり、新陳代謝のもう1つの機能、すなわち、ヒト、モノ、カネの経済資源を古い領域から成長する新領域へ移動させる「退出」の促進策も欠かせないのだ。
【次ページ】まさかのG7最下位…企業が入れ替わらない日本に必要な仕組み
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