- 2026/09/03 06:40 掲載
“政府支援”をつかめる企業、逃す企業…「地域未来戦略」で広がる新たな商機とは
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」
全国に“稼げる産業集積”をつくる政府の新戦略
地域未来戦略とは、人口減少などにより地域経済の縮小が心配される中、全国各地に強い経済基盤を構築するためとして、2030年度までを計画期間として作られた政府戦略です。
石破政権下での議論をベースに25年12月に決定した「地方創生に関する総合戦略」を刷新し、高市政権が掲げる「強い経済」の実現を前面に押し出す建てつけに変更。
官民投資によって供給力を強化し、実質賃金の年1%程度の上昇定着や中小企業の労働生産性向上を目指すとし、雇用と所得、消費、企業収益、税収が連動して伸びる好循環を、産業クラスターの形成によって全国各地で生み出すといった構想を打ち出しています。
カギを握るのが「戦略17分野」です。
AI・半導体、デジタル・サイバーセキュリティ、情報通信、量子、防衛産業、航空・宇宙、海洋、造船、マテリアル、合成生物学・バイオ、創薬・先端医療、資源・エネルギー安全保障・GX、フュージョンエネルギー、防災・国土強靱化、港湾ロジスティクス、フードテック、コンテンツで構成されています。
これら17分野を中心に官民投資を促進するために、3つに分けて計画の方向性を整理しています。それぞれの計画において、インフラ整備や地方創生を絡めた環境整備を一体的に行い、産業強化を支援するという筋書きです。
国・都道府県・市町村が分担、「3つの支援ルート」を整理
それでは3つの計画を、それぞれ具体的に見ていきましょう。まずは、国が主導する「戦略産業クラスター計画」。戦略17分野に関係する企業の大規模投資を起点に、世界をリードする産業クラスターを形成するとしています。
自治体や経済団体、民間企業、大学、金融機関などから、地域ブロックごとに「戦略産業クラスター有識者検討会」を立ち上げ、そこで計画の素案を策定します。そして、都道府県が候補案件を国へ提案し、国が計画を策定するというプロセスを踏みます。
具体的な施策としては企業の設備投資だけでなく、道路や港湾、工業用水、産業用地、空港アクセス鉄道などのインフラ、産業人材の育成も一体的に進めるとしています。国家戦略特区制度などを活用した規制・制度改革も視野に入れています。
第2は、都道府県知事などが主体となる「地域産業クラスター計画」です。輸出による域外収益や国内上位シェアが期待できる産業を都道府県が選び、核となる企業を中心に育成します。
こちらは戦略17分野に限らず、各地域が「勝ち筋」を見いだした幅広い産業を対象にできるのが特徴です。個別企業への投資支援だけでなく、共同設備や共同事業による効率化や、地域に不足するサプライチェーン機能の補完も支援します。
第3は、市町村レベルを交えて作成する「地場産業成長プラン」です。農林水産や観光、スポーツ、伝統工芸、部品加工など、地域資源を生かす産業が対象となります。個々の事業規模が小さくても、付加価値の向上や域外・海外への販路拡大によって、地域経済を面的に支えることを目指します。こちらは地域密着による「事業の状況に応じたきめ細かな支援」が期待されています。
戦略17分野との結び付きが一番強いのは、「戦略産業クラスター計画」。そして「地域産業クラスター計画」、「地場産業成長プラン」については、地域ごとの特性に合わせて支援先や支援方法が異なるという全体的な棲み分けになっています。 【次ページ】設備投資・インフラ・人材育成を“一体支援”
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