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  • 2015/06/08 掲載

富山市長 森雅志氏が解説、なぜ路面電車の整備で市民の寿命が伸びるのか

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急激に進む人口の減少と高齢化社会の進行は、地方都市にとって最大の難題だ。有効な対策を立てないと、高齢者医療費など、行政コストの増大でどうにもならない状態に陥りかねない。そこで富山市は「コンパクトシティ」を掲げ、路面電車など公共交通の整備と中心市街地の魅力アップに努めている。それが市民の「健康寿命」を延ばし、行政コストの増加に歯止めをかけることにつながるという。北陸地方のアイデアマンとして知られる森雅志富山市長が、事業の狙いや成果について語った。
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富山市長 森 雅志 氏

地方都市や町村部で深刻な行政コストの増大

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 日本の人口は急激な少子化と高齢化社会の進行で、2050年に今より3000万人も減ると推計されている。減少ペースが緩やかな大都市圏と違い、地方都市や町村部が深刻な影響を受けることは間違いない。「Microsoft CityNextソリューションフォーラム 2015」で、森市長は「富山は典型的な地方都市。10年ほど前から何か布石を打たないと、衰退が加速すると感じてきた」と強い危機感を示した。

 中でも心配なのが高齢者の医療費や介護、福祉費用の増加だ。

 社会の高齢化とともに平均寿命も延びているが、介護を必要としない「健康寿命」が同じように延びているわけではない。亡くなるまで寝たきりにならずに働いてくれる高齢者が増えれば、40歳以上の市民が払う介護保険料の上昇や市の高齢者対策予算の増加を抑えられる。

 だが、富山県の持ち家率は全国1位で、1世帯当たりの自動車保有台数も全国2位。郊外に住んでどこへ行くにも車を使う県民の暮らしぶりが現れている。つまりそれほど歩かず、運動不足が心配な県民性なのだ。森市長は「あまり外へ出ず、引きこもりがちになって体を壊す高齢者が多い。もっとお出かけして歩いてくれたら、長く健康を維持できるのではないか」と考えた。

 この10年で市民の平均体重は増えたが、エネルギー摂取量は変わらない。運動量や歩行数が減って体重が増加したわけだ。スポーツジムで1年間運動を続けられる人は全体の2割しかいないが、街をもっと歩けば運動量をカバーできる。「今までは歩きたくても歩ける街ではなかった。楽しくて気がついたら歩いている街にしたい」。これが森市長のたどり着いた結論だった。

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富山市のまちづくりの基本方針
(出典:森市長講演資料)


なぜコンパクトシティ構想に至ったのか

 そこで富山市は、高齢者が気軽に出かけられるよう中心市街地の魅力アップに取り組む。そのために目をつけたアイデアが「コンパクトシティ」だ。これは都市の郊外への拡大を抑えて中心部にさまざまな施設を集中させることで、市街地のスケールを小さく保ったまま暮らしやすくしようというもの。

 その一環として市は中心市街地の再開発で建設された複合商業施設に隣接して全天候型の野外広場・グランドプラザを設けた。さらに市民の移動手段としてJR西日本から富山港線を引き継ぎ、路面電車の富山ライトレール(LRT)として運行を始める。「多少強引でも、公共投資で中心部に足を運びやすくしたかった」と森市長は語る。

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富山ライトレールの整備
(出典:森市長講演資料)


 もちろん高齢者対策だけではない。中心部ににぎわいを取り戻し、市の活性化を図る狙いも込められている。富山市は郊外への人口流出が目立ち、県庁所在地としては人口密度が全国最低。これ以上分散が進めば、中心部の地価が低迷し、投資を呼び込めなくなると心配されていたからだ。買い物客の多くが隣県の金沢市に流れていることも、森市長の頭にあった。

【次ページ】増え続ける高齢者の外出で医療費の削減を

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