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  • 2016/04/01 掲載

大幅拡大するSuica、減少する楽天Edy、インバウンドはキャッシュレス化を進展させるか

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国内でも年々、キャッシュレス化は進んでいると言われている。ここ1~2年、地方創生やインバウンドの動き、国際ブランドデビットやプリペイドの発行増加など、その動きは活発だ。また、電子マネーについては、明暗がくっきり分かれた。グループ外での展開を加速するnanacoとWAON、そして決済件数が拡大するSuica、その一方で伸び悩む楽天Edyという構図だ。今回は、こうしたリアル決済の最新動向について紹介したい。

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

TIプランニング代表取締役 池谷 貴

編集などの仕事を経て、カード業界誌の版元において、雑誌編集、プランニング、セミナー、展示会などの運営に携わる。電子決済、PCI DSS/カードセキュリティ、ICカード、ICタグなどのガイドブック制作を統括。2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD(ペイメントワールド)」などのサービスを手掛けるTIプランニングを設立した。

銀聯決済、多通貨決済の導入がカード会社の売りに

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ビッグカメラ、パルコなどで採用が進むAlipayのモバイル決済のイメージ
(出典:リクルートライフスタイル)

 国内の民間最終消費支出に占めるクレジットカード市場は、毎年比1%前後の成長を見せていると言われる。近年では、家賃、公金、医療、教育といった新分野でクレジットカードが利用されるケースも出てきており、コンビニエンスストアなどの少額決済で利用される機会も増加している。しかし、クレジットカードの保有者数は減少しているという報告もあるように、若年層のクレジットカード離れ、少子高齢化への対応も喫緊の課題となっている。

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 その一方で追い風もある。それがインバウンドと地方創生だ。日本政府観光局の発表によると、2015年の訪日外国人旅行者数は約1,974万人で、2016年は2,350万人程度まで伸びると予測されており、2020年までの3,000万人達成も見えてきた。国内のクレジットカード会社もインバウンド対応を売りにしたサービスを積極的に加盟店に勧めている。

 実際、銀聯の加盟店は約40万カ所と国内でも急拡大している。昨今の地方創生の動きの中で、地方創生予算を活用して決済端末導入補助の取り組みが行われているが、銀聯に対応した動きを整える自治体も多い。また、ホテルや商業施設などでは、外貨か日本円かを選択して支払いができる多通貨決済サービス(DCC)を導入するケースも目立つ。

 さらに、インバウンド対応としては、中国で最も利用されているインターネット決済サービス「Alipay(アリペイ)」の対面店舗でのモバイル決済、Tenpayの「微信:WeChat」および「QQ」に対応したモバイル決済の採用が進むと思われる。ビリングシステムでは、中国で金融機関向けのモバイルアプリを提供している北京新空気網絡科技股份有限公司と連携し、銀聯カードを用いたモバイル決済サービスを訪日外国人向けに提供開始している。

グループ外での展開を加速するnanacoとWAON、決済件数が拡大するSuica

 電子マネーについては、成長と停滞が目に見てわかる結果となった。

 たとえば、流通系の「nanaco」と「WAON」は、堅調な成長が続いている。nanacoは1年前に比べても利用件数の増加が見て取れる。

 一方で、WAONは、以前は平均利用単価を公表していたが、現在は非公表となった。2015年までは1,600円~1,800円の平均単価があったが、新たに少額決済が中心のローソンでの利用を開始したため、平均利用単価は下がっていると思われる。ただし、イオンの広報によると、ローソンでのWAONスタートの影響は大きく、取扱高も順調に増加しているようだ。

 nanaco、WAONともグループの電子マネー色が強いが、外部加盟店での展開の加速に向け努力している。

 「Suica」に関しては、交通系ICカードとしての保有率が高い強みを生かし、電子マネーとしての利用もさらなる伸びが期待できる。端末台数は2015年12月末には61万台まで増加。決済件数も相互利用先を含め、1億2,643万件と大幅な伸びを見せている。今後は、Suicaのポイントプログラムである「Suicaポイント」がグループ共通の「JRE POINT」に統合される予定であり、ポイントの魅力が高まれば、Suicaの拡大にプラスになるだろう。

 逆に心配なのは「楽天Edy」だ。2014年11月末の月間利用件数は3,290万件だったが、2016年1月末の決済件数は3,210万件と減少している。楽天Edyとしては、楽天グループのシナジーを生かし、成長しようともくろんでいるが、楽天市場などのインターネット決済と非接触電子マネーとの親和性は決して高いとは言えない状態。ここは、グループシナジーを生かして成長してきたnanacoやWAONとの決定的な差となっている。また、Suicaに比べて、チャージする動機づけが弱いため、利用が停滞しているといえるだろう。

 個人的には、楽天という資産を生かすには、非接触電子マネーよりもプリペイドカードに舵を切ったほうが、利用者の障壁を取り除き、「楽天カード」および「楽天ポイントカード」との相乗効果で成長を加速させることができるのではないだろうかと感じる。

画像
主要電子マネーの状況

 一方で、2020年に向けて期待される国際ブランド搭載の非接触決済サービスであるVisaのVisa payWave、MasterCard Contactlessなどについては、現状、導入が加速していない状況だ。国内ではFeliCa系の非接触IC決済サービスが普及しているため、流通加盟店としてもそれほど必要性を感じていないためだろう。

【次ページ】店舗独自のハウスプリペイドが急成長!?

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