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  • 2016/08/17 掲載

「解雇」と「飼い殺し」、非道なのはどちらか?

ライフネット生命 出口会長と島澤 諭氏が議論

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少子高齢化が進む日本。その影響は企業の中にも如実に現れてきている。組織の構成員の年齢が上がっていく中、正社員の解雇が難しい日本では、経験豊富で優秀な人材も、チャンスに恵まれなかった人材も、「定年」が来れば一律で退職する。では、チャンスを逃した人々を「解雇」するのと、正社員として定年まで「飼い殺す」のであれば、どちらが非道なのか。ライフネット生命 代表取締役会長 出口 治明氏と政治経済学専門家 島澤 諭氏が対談した。

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日本では、社員の「解雇」が難しいと言われているが

エイジフリーで働きたい人がいつまでも働ける社会が実現する!

出口:この国の一番の課題は高齢化対策です。安倍首相も「一億総活躍社会」に向けて介護離職ゼロの実現を目標に掲げています。では、介護とは何かと言えば「平均寿命マイナス健康寿命」です(健康寿命とは分かりやすく言えば、一人でご飯が食べられ一人でトイレに行ける状態を指します)。介護を減らそうとすれば平均寿命を延びないようにするか(これは実施不可能な政策です)、健康寿命を延ばすしか他に方法はありません。僕は健康寿命を延ばすことがとても大事だと思っています。

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 もう少し詳しく実際の数字をみてみましょう。厚生労働省の発表によると、2013年の日本人の健康寿命は男性が71.19歳、女性は74.21歳で2010年から少し伸びています。2014年の平均寿命は男性80.5歳、女性86.83歳です。この平均寿命から健康寿命を差し引いた期間(男性約9年、女性約12年)が、介護など人の手助けが必要となる期間です。10年前後も介護期間があるのは、介護する側もされる側も大変です。ですから、世界に先駆けて超高齢社会を迎えた日本では、平均寿命ではなく健康寿命を延ばすことが何よりも重要なのです。

 健康寿命を延ばす方法として医師が異口同音に推奨するのは、働くことです。そうであれば高齢化対策の基軸は、定年を廃止してエイジ(年齢)フリーで働ける社会を創ることです。まだ十分働ける人を「定年」という形で強制的に引退させるのは、本当にもったいないことです。

 大阪にいる僕の友人たちは、全員がリタイアして年金生活に入っていますが、大学の聴講生になるなど、今も社会で精力的に活動しています。人間という動物は社会的な触れ合いがあるのが何より大事で、働いているほうが認知症も進みにくくなります。エイジフリーで働きたい人がいつまでも働ける社会を実現し、それを世界に示すことが、超高齢社会にいち早く到達した日本が果たすべき使命だと思います。

島澤:定年廃止を掲げると、「高齢者に優しい企業」といったとらえ方をする人もいますが、それとは少し意味合いが違いますね。

出口:僕が創業したライフネット生命でも、就業規則で定年制は廃止しています。仕事の実力と年齢が関係ないということは、逆に若い人でもやる気と実力があれば、どんどんキャリアがアップしていくということです。実際に私も親子ほど年が離れた社員と日々議論しながら職務に励んでいます。言い換えれば、定年制がない社会というのは究極の実力主義社会であるとも言えます。

島澤:定年制を廃止すれば、当然働いている最中に認知症や業務の遂行が困難になる人も出てきます。でもそういう方には辞めていただける仕組みがあればいいという話ですよね。もちろん、この場合、社会保障制度がしっかりしていることも重要です。

出口:そうなれば労働がさらに流動化し、解雇の自由という習慣も根付くはずです。若者が裾野にたくさんいるピラミッド型の社会は「敬老原則」でいいのです。でも高齢化社会になれば、「エイジフリー原則」に転換して、高齢者でも働きたい人はずっと働く。そして、年齢や医療などの社会保障は年齢にかかわらず(エイジフリー)、困っている人に集中すべきなのです。

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