- 会員限定
- 2017/03/17 掲載
8年ぶり再上場のスシロー、なぜ「店舗あたりの売上」が驚異的なのか
加谷珪一(かや・けいいち) 経済評論家 1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『新富裕層の研究-日本経済を変える新たな仕組み』(祥伝社新書)、『教養として身につけておきたい 戦争と経済の本質』(総合法令出版)などがある。

回転寿司「だけは」例外的な成長市場
上場にあたっては、約2000万株が売り出される予定となっており、これによってファンドは投資資金を回収することができる。スシローにとっては、ファンドという制約条件がなくなるので、経営の自由度が増すことを意味している。上場をきっかけに本格的な出店攻勢に出る可能性は高い。
回転寿司は数少ない成長市場のひとつだが、競争が激しいことでも知られる。同業のかっぱ寿司は赤字に転落しており、ゼンショー傘下の「はま寿司」は、果敢な出店攻勢によって店舗数でスシローに迫る。短期的には「スシロー」と「はま寿司」とのシェア争いが、中長期的には市場の飽和に伴う業界再編が注目ポイントとなるだろう。
現在、寿司全体の国内市場規模は約1兆4000億円ほどあるが、人口減少や消費の低迷によって緩やかな縮小が続いてきた。ここ10年は、回転寿司の市場が伸びたことで寿司市場全体の縮小にも歯止めがかかりつつある。回転寿司以外の寿司は以前として減少傾向が顕著だが、回転寿司だけは10年で約1.5倍となり、すでに6000億円の規模に達する。
トップの「スシロー」をゼンショー傘下の「はま寿司」が追う
スシローは現在、回転寿司最大手となっており、国内で442の店舗を構える(2016年9月末時点)。トップのスシローを「はま寿司」と、くらコーポレーションの「くら寿司」が追うという図式だ。かつて業界のリーダーだった「かっぱ寿司」は価格戦略の失敗などもあり、スシローやはま寿司に水をあけられている。同じ回転寿司といっても各社の戦略は異なる。スシローは回転寿司とはいえ、味を重視しており、その分だけ客単価も高い。スシローの平均的な店舗は120坪と広く、1店舗あたりの年間売上高は3億円超と他社を圧倒している。これは外食産業全体で見ても驚異的な数字といってよい。スシローは高級感を打ち出し、高めの客単価を維持することで他社を引き離している。
似たような路線を走っているのがくら寿司である。くら寿司は、4大添加物(化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料)無添加をウリにしており、やはり客単価は高めだ。1店舗あたりの売上げもスシローほどではないが大きい。
ブランド名 | スシロー | はま寿司 | くら寿司 | かっぱ寿司 | 元気寿司 |
企業名 | スシロー グローバル ホールディングス | ゼンショー | くらコーポレーション | カッパ・クリエイト | 元気寿司 |
決算期 | 2016年9月期 | 2016年3月期 | 2016年10月期 | 2016年3月期 | 2016年3月期 |
回転寿司関連 売上高(百万円) | 147,702 | 101,034 | 113,626 | 69,397 | 26,059 |
回転寿司関連 営業利益 (百万円) | 7,509 | 4,251 | 6,527 | 2,549 | 346 |
店舗数(国内) | 442 | 433 | 385 | 336 | 133 |
標準的な店舗面積 | 120坪 | 120坪 | 125坪 | 90~110坪 | 60坪 |
※元気寿司の売上高は国内のみ ※はま寿司は、営業利益ではなく経常利益 ※かっぱ寿司の営業利益はデリカ事業含む (出典:各社資料より筆者作成) |
客単価が安いため、売上高ではスシローとは差があるが、店舗数ではほぼ互角の状況にある。スシローの当面のライバルは、はま寿司とみてよいだろう。
はま寿司を運営するゼンショーは、実は以前から回転寿司の市場に並々ならぬ関心を寄せており、以前はスシローやかっぱ寿司に資本参加していたこともある。スシローが2009年に上場を廃止したのも、ゼンショーによる資本参加がひとつのきっかけとなっている。
【次ページ】新規の店舗には1億円以上の投資が必要なケースも
関連タグ
関連コンテンツ
PR
PR
PR