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- 2017/02/17 掲載
小売・外食が「大変革」、秩序を変えるのはアマゾンやウーバーだけではない
AIによる自動化で「出店戦略」が激変する
だが事業のシステム化という点では、1970年代にPOS(販売時点情報管理)システムが導入されて以降、大きな動きはなかったといってよい。つまり小売店というのは、POS導入以降は、基本的に同じ売り方を続けてきたともいえる。
だがこうした流れが大きく変わろうとしている。きっかけを作ったのは米アマゾンである。同社は2017年から、完全無人でレジすらないコンビニ「Amazon GO」を展開する。
Amazon Goでは、あらかじめスマホに専用アプリをダウンロードしておくと、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物カゴに入り、そのまま店を出れば、アマゾンのアカウントで課金される仕組みになっている。
店内には、無数のセンサーとカメラが設置されており、そこで得られた情報をAIが解析し、顧客の行動について判断する。一旦商品を手に取っても、商品を元の棚に戻せば、買い物カゴから削除され、課金されないという。
無人コンビニが軌道に乗った場合、そのインパクトは計り知れないものがある。従来のコンビニと比較して、もっとも大きな違いとなるのは、おそらく立地条件である。
アマゾンのコンビニはネット通販の顧客がアプリをインストールしてから入店することになるので、基本的に「一見さん」は来店しない。
このため、繁華街から一本入った路地でも出店が可能であり、無人化との相乗効果で店舗の運営コストが大幅に下がる可能性がある。場合によってはドミナント戦略といった、小売業の基本的な概念すら消滅してしまうかもしれない。
また、商品の品揃えも、従来の常識とはまったくかけ離れたものになるだろう。お勧め商品をリストアップする同社のリコメンデーション・システムはよく知られているが、これを店舗でも実現できる可能性が出てくる。これによって従来はコントロールするのが難しかった客単価を店側は容易に動かせるようになる。これは小売業界にとってはちょっとした革命である。
外食と小売の違いがなくなる
高度なITの普及は事業者の売り方を変えるだけではない。消費者の購買行動にも大きな影響を及ぼす。ITを使った配送サービスの高度化は、小売店と飲食店の垣根を消滅させる可能性があるのだ。シェアリング・エコノミー企業のウーバーは昨年、提携した飲食店の料理を指定した場所まで運ぶデリバリー・サービス「ウーバーイーツ」を日本国内でも開始した。楽天も同様の配達サービスである「楽びん」をスタートさせている。
ウーバーイーツは、提携する150店舗が提供するメニューの中から好きなものを選び、指定の場所まで配達してくれるというもの。
アプリでオーダーすると、画面には「準備中」「配達中」といったステータスが表示され、やがて配達員が料理を持ってくる(当初は東京都内の一部地区限定)。「楽びん」もほぼ同じサービスで、約300の店舗と提携(2016年12月時点)しており、東京都内の一部地域限定が対象。地図上に配達員の動きが示され、配達員がどの場所にいるのか確認することができる。
こうしたサービスが普及すると、先ほどの小売店と同様、飲食店の立地条件が変わる可能性が出てくる。
飲食店や小売店は立地条件がすべてであり、交差点の角といった優良物件は争奪戦となる。こうした物件の賃料はケタ外れに高いのだが、少し場所を変えただけで賃料は激減する可能性が高い。
売上高の一定割合を「出前」が占めるようになれば、必ずしも好立地の場所に出店する必要はなく、店舗のコスト構造は大きく変わる。
これに加えて、楽びんでは一部、コンビニからの配達にも対応するようになっている。小売店もデリバリーに対応するということになると、小売店と飲食店の違いは極めて曖昧にものとなってくるだろう。
【次ページ】中古と新品の垣根が消滅し、新しいエコシステムが完成する
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