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2017年08月17日

日本の林業は「成長産業」、若者比率上昇など驚くべき状況になっていた

日本の林業は暗い過去を背負ってきたが、未来に希望を見出せる時を迎えている。林業従事者に若手が増え、木材の自給率は向上し、輸出もめざましく伸びているからだ。情報通信技術(ICT)の導入で林業生産は効率化し、ロボット技術などハイテクの導入で「3K」といわれた作業環境は改善している。高付加価値化や6次産業化などを背景に「林業ベンチャー」が全国で次々と旗揚げ。遠くない将来、林業は輸出に貢献する成長産業という新しいイメージで見られるようになりそうだ。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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日本の林業は今、未来に希望を見出せる時を迎えている

(© FRANK – Fotolia)


バッドニュースばかりの戦後日本の林業

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 林業は、若い世代の従事者が増え、輸出が伸びていて、成長産業になる可能性がある──そう言っても、なかなか信じてもらえないかもしれない。日本の林業は戦後の高度経済成長期から、マスメディアで悪いイメージばかり繰り返し流されてきたからだ。

 日本では終戦の1945年まで、戦争が起きるたびに建材、部材、燃料として木材が供出され森林資源が枯渇した。戦後の林業はそこから出発せざるを得ないハンデを負っていた。

 当時、ハゲ山に大量に植林されたスギやヒノキの若木がいま「適齢期」を迎え、大量の花粉を放出しては春先、国民を花粉症で苦しめている。

 しかも生産コストが高い国産のスギやヒノキはカナダ、アメリカ、インドネシア、マレーシアなど海外産の安い木材におされて需要が縮小し、伐採されないまま山から毎年、花粉をまき散らし続けた。

 エネルギー革命で薪や木炭が使われなくなり、マツはマツクイムシで壊滅的な被害を受けた。採算がとれなくなり山林地主が林業経営を放棄すると、耕作放棄地の荒れ地同様に原始林に近い状態に戻った。

 そうなると、林業で再び収益を得るには多大なコストと時間がかかるだけでなく、水害や土砂災害の原因にもなる。国土面積の約7割を占める森林の荒廃は、国土保全上も問題になる。

 国有林、公有林はそれを免れたが、かつての「三公社・五現業」の五現業の一つ、国有林野事業は特別会計の累積赤字が膨脹し、国家財政の「お荷物」視された。

 そこで少しでも自主財源を得ようと1984年に林野庁が募集を開始し、中止した1999年までに約8万5000人から約500億円を集めたのが「緑のオーナー制度」だった。

 投資家に出資を募って国有林のスギ、ヒノキを植林・育成し、20〜30年後に伐採した木材を競売にかけて得た利益で配当を出すスキームだったが、スギもヒノキも当初の半額以下になるなど木材価格が想定を下回って事実上「元本割れ」を起こし、投資家との間で国家賠償請求訴訟の裁判沙汰になってしまった。

 1990年頃に地球環境問題がクローズアップされると、「温暖化の原因になる二酸化炭素を吸収する森林を守れ」と唱えられるようになった。資源を計画的に再生していてもアマゾンの熱帯雨林の野放図な伐採・農地化などと同一視され、「貴重な森林をおびやかす地球の敵」とみなされ、それも林業のイメージを悪くした。

 ほとんど山の中で作業が行われる林業の現場は「きつい、汚い、危険」の「3K職場」視され、若い人が入ってこないため、農業や漁業と同じように従事者の高齢化が進んだ。

 そのようにバッドニュースばかりで「夢も希望もない衰退産業」とみられてきた日本の林業だが、時代が平成に変わり、21世紀に入った頃から、風向きが少し変わってきた。

34歳以下の比率は水産業や農業よりも多い

 林業従事者は、総務省が2015年10月1日に実施した国勢調査の速報値によると全国で4万7600人。1990年の国勢調査の10万497人と比べると、四半世紀で半分以下に減少した。しかし、2000年の国勢調査を境に高齢化には歯止めがかかっている。65歳以上の従事者の実数は2000年から2010年までの10年でほぼ半減。1990年に全体の24.6%を占めていた55〜59歳の従事者は一貫して減り続け、2010年は全体の13.5%まで低下している。

 それに代わり、1990年から実数でも比率でも伸び続けているのが、34歳以下の若い世代の林業従事者である。1990年は6339人で全体の6.3%に過ぎなかった比率は5年ごとに7.2%、10.2%、13.6%と拡大し、2010年は17.9%。実数は9170人。2015年の国勢調査の詳細な結果はこれからだが、若い世代は実数で1万人、比率で20%を超えそうだ。

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全国の年齢層別の林業従事者数の推移

(出典:総務省「国勢調査」10月1日現在)


 2010年の林業従事者の年齢層別の比率は65歳以上の高齢世代が20.8%で第1位、34歳以下の若い世代が17.9%で第2位だった。高齢世代はリタイアしていく一方、若い世代は実数が増え続けているので、2015年の国勢調査の結果で34歳以下の年齢層が最も多数を占めるのは、ほぼ確実だろう。

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2010年の林業従事者の年齢層別の実数、比率

(出典:総務省「国勢調査」10月1日現在)


 農林水産省が所管する第一次産業(農業、林業、水産業)のうち、2010年国勢調査で34歳以下の比率が最も高かったのは林業の17.9%だった。水産業は12.6%、農業は7.2%である。つまり林業は一般的なイメージとは違って、今や「多くの若者が働く産業」「若者が主役の産業」に、変わりつつある。

「輸出貢献産業」への道をたどりつつある

「木材は輸入材におされて国産材が売れなくなり、林業の衰退に拍車をかけている」

 産業としての林業を語る上で何度も何度も繰り返されてきたこの常套句も、今ではもう時代遅れになりつつある。

 昨年9月に発表された林野庁企画課「平成27年木材需給表」によると、木材の自給率は2002年の18.8%を底に回復を続け、2015年は33.3%だった。政府は「2020年に自給率50%」という数値目標を示している。もしそれが実現すれば、木材自給率は60年代の水準まで戻ることになる。

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木材の自給率の推移

(出典:林野庁企画課「平成27年木材需給表」)


 「木材需給表」によると、木材の輸入量はピークだった1996年の9044万立方メートルから2015年の5024万立方メートルへ、44.4%減少した。これが自給率回復の背景にある。為替の年間平均のドル円レートは、1996年は108円、2015年は121円だが、79円だった2011年でも輸入量は5431万立方メートルどまりで自給率は27.0%あったので、為替の円安のせいで輸入が減ったとは言えない。それより需要構造的に木材の「国内産シフト」が進んだと考えるほうが適切だろう。

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木材の輸出入量の推移

(出典:林野庁企画課「平成27年木材需給表」)


 さらに、日本の林業に明るい展望が開けているのは、木材の輸出が著しい増加をみせていること。1993年にはわずか5万立方メートルしかなかった輸出量が、2015年には228万立方メートルと22年間で44.8倍にもなった。直近、2012年の142万立方メートルから3年で61.1%も大きく伸びたのは、それこそ為替の円安が効いたと思われるが、輸出はそれ以前から徐々に伸びていた。それは、関係者の努力によって日本産木材の品質が海外で良い評価を受けるようになり、需要が掘り起こされたから、と言っていいだろう。

 主要輸出先は中国、フィリピン、韓国、台湾、アメリカの順で、アジアが中心。中国はスギ、フィリピンは合板、韓国はヒノキの高級材の輸出量が多い。アジアの新興国では住宅建設が盛んで、建築用材、特に内装材として日本の木材が好まれている。

 政府の「農林水産業・地域の活力創造本部」が2016年5月にとりまとめた「農林水産業の輸出力強化戦略」には、林産物のスギ、ヒノキの輸出は「丸太中心から高度な加工技術を活かした製品輸出への転換を推進する」「新たな輸出先の開拓に取り組む」とある。この戦略に基づいて林野庁は、海外展示会の開催やベトナムのPR施設の設置など日本産の認知度向上や、ブランド化、販売促進、アメリカやインドでの市場調査、販路開拓などを進めている。

 森林組合単位でも、鹿児島、宮崎両県の4組合は合同で木材輸出戦略協議会を設立し、鹿児島県の志布志港を拠点に中国、韓国向けのスギ、ヒノキ材の輸出に取り組んでいる。輸出量は2015年までの4年間で9倍に増えた。岡山県北部の森林組合でつくる美作材輸出振興協議会は、岡山県、津山市の支援を受け2016年8月、韓国ソウル近郊の城南市にヒノキの内装材や家具の展示・販売施設をオープンさせた。岡山県北部産のヒノキを旧国名の「美作(みまさか)」でブランド化し、アジアで販路を開拓中だ。

 現状はまだ21.9倍の輸入超過だが、日本酒(SAKE)がそうなったように、日本産の木材もその優れた品質が海外で評判を呼べば「メード・イン・ジャパン」がブランド化し、「輸出貢献産業」になっていく道をたどれる。もしそうなれば、立派な成長産業だ。

【次ページ】ICTを活用して究極の効率生産も可能に

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