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2017年10月10日

コメ輸出を3年で4倍超に、日本の「ブランド米」が世界で勝てるワケ

実りの秋。食欲の秋。今年の新米が出回る時期だが、いま、日本産のコメを世界じゅうの人々が食べたがっている。「貿易統計」によると、コメの輸出量は直近5年で4.7倍と右肩上がりで伸びている。9月8日、斎藤農水大臣は新たな政府目標として「2019年のコメ・コメ加工品の輸出量10万トン、金額600億円達成」を発表。3年で量を4.2倍、金額を2.7倍にするチャレンジングな計画だが、十分に達成可能な理由がある。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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日本のブランド米は世界で戦える

(© crittipon – Fotolia)


コメの輸出を3年で4.2倍に増やす政府計画

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 斎藤健農水大臣は9月の記者会見で「コメの輸出」の政府目標を発表した。

「2019年、10万トン、600億円」

 コメの輸出量の目標を掲げるのは農政史上、初である。数字には、穀物(玄米、精米)としてのコメだけでなく日本酒や米菓のようなコメ加工品も含まれているが、2016年のそのコメおよびコメ加工品の輸出実績は量で2.4万トン、金額で221億円だった(財務省「貿易統計」より)。それを2019年までに輸出量で4.2倍、輸出金額で2.7倍に引き上げるという、数字の上ではけっこうチャレンジングな政府計画である。

 「3年で4.2倍」は一見、現実離れしているように見える。しかし、加工品を除くコメの輸出量が直近5年間で4.7倍に増えていること、アジアでも欧米でも日本産米、特に食味に優れたブランド米の需要が高まっていること、農林水産省が輸出振興のための販売促進策の強化を打ち出し、それを来年度予算案に盛り込む方針であることなど考え合わせると、「達成はとうてい無理」とは言い切れないだろう。斎藤農水大臣は会見で「高い目標だが、果敢に挑戦したい」と述べている。

 実際にコメの輸出は近年、増加の一途をたどっている。財務省の「貿易統計」によると、2016年の穀物としてのコメの輸出量(商業用/加工品輸出、政府食糧援助を除く)は、2011年からの5年間で4.7倍の増加をみせ9986トンだった。2017年に1万トンを超えるのはまず確実とみられている。輸出金額ベースでは同期間に4.08倍になっていた。

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日本からの商業用のコメの輸出数量(左軸棒グラフ、単位:トン)、
輸出金額(右軸線グラフ、単位:億円)の推移

※政府による食糧援助を除く
※出典:財務省「貿易統計」


コメの国際取引には成長できる余地がある

 アメリカ連邦農務省の統計「PS&D(2015/2016年度)」によると、世界のコメの生産量は精米ベースで4億7000万トンで、最大の生産国は中国で1億4600万トン(31%)である。2位はインドの1億400万トン(20%)、3位はインドネシアの3600万トン(8%)。日本はバングラデシュ、ベトナム、タイ、ミャンマー、フィリピンに次ぐ第9位で、全体の約2%にすぎない。

 世界のコメの消費量は精米ベースで4億7000万トンで、生産量と均衡している。最大の消費国も中国で1億4400万トン(31%)。2位はインドで9300万トン(20%)、3位はインドネシアの3800万トン(8%)。日本はバングラデシュ、ベトナム、タイ、ミャンマー、フィリピンに次ぐ第9位で、ここまでの順位は生産量とまったく同じである。

 コメの輸出大国1位の座は、インドとタイが争って目まぐるしく入れ替わっている。ともに輸出量1000万トン前後のこの両国で世界のコメ輸出量の約半分を占め、それに次ぐのが10%台のベトナム、パキスタン、アメリカ。そうした国々に大きく離されてミャンマー、カンボジア、ブラジルなどが続く。日本は伸びているとはいえ世界全体の0.3%程度しかなく、「その他大勢」だ。

 一方、コメの輸入量第1位は中国の500万トン(13%)で、2位はフィリピンの200万トン(4%)、3位はインドネシアの100万トン(3%)である。ブラジル、アメリカ、日本、タイ、ベトナムなどがそれに続く。あとは米作の規模が小さいヨーロッパや中東、アフリカの各国が少しずつ輸入している。

 コメは生産国、消費国がアジアに偏り、自国内消費に回る分が大半を占めるために輸出入があまり活発でなかった。全世界の輸出量(4000万トン)は生産量の8.5%、輸入量(3800万トン)は消費量の8.1%にとどまっている。その点は、アメリカ、カナダ、ロシア、ウクライナなどが大量に輸出し、国際的な商品作物として先物取引市場が発達した小麦(生産量に占める輸出量の割合23%)や大豆(同42%)とは、事情が異なる。コメの国際取引はようやく世界的に活発になってきたところ。しかしその分、今後、成長の余地がある。

 農水省「食糧需給表」によると、2015年度のコメの国内生産量は843万トン。輸入量はタイ、アメリカ、オーストラリア、中国などからの「ミニマムアクセス米」の77万トンに調製品などを合わせて83万トン。輸入と国内生産を合わせると926万トンになる。そのうち860万トンのコメが国内で消費され、12万トンが援助米も含め海外に輸出され、残りが備蓄に回っている(玄米ベース)。コメの国内消費量は年に約8万トンのペースで減っており、よほどの大凶作でも来ない限り、輸出を伸ばせる余力はある。

日本のコメはどこに多く輸出されているのか?

 日本のコメはどこに多く輸出されているのか? 財務省「貿易統計」によると、2016年の輸出数量も、輸出金額も、1〜4位は1位香港、2位シンガポール、3位台湾、4位アメリカの順だった。この4つの国と地域で数量ベースで74.2%、金額ベースで69.5%を占めている。4ヵ国とも直近5年間で日本からのコメの輸出量は大きく増加し、香港は4.2倍、シンガポールは3.9倍、台湾は4.9倍、アメリカは6倍になっている。

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日本からの商業用のコメの主な輸出先

※「その他」の上位はインドネシア、カナダ、オランダなど
※政府による食糧援助を除く
※出典:財務省「貿易統計」


 台湾は広大な平野があり米作が盛んだが、香港、シンガポールは都市国家で農地が乏しく、食糧の大部分を輸入に依存している。しかも、かつては韓国とともに「アジアの四龍(フォー・ドラゴン)」とも呼ばれた経済先進国で、他のアジア諸国よりも国民の生活水準が高い。それは日本から輸入するコメの平均価格にも反映している。

 1トン当たりの輸入金額は、コメの輸入規制が厳しく関税割当制度もある中国を除くと、タイ、モンゴルは10万円台、ベトナムは21.6万円だが、香港は25.2万円、シンガポールは22.9万円と高め。産油国で国民の所得水準が高いマレーシアの26.9万円と同じグループを形成している。台湾に至っては29.1万円のアメリカ、30.5万円のオーストラリア、30.5万円の英国をしのぎ、35.3万円となっている。

 このデータは、アジアの中でも台湾、香港、シンガポール、マレーシアは、欧米諸国と同様に日本から比較的高価格のブランド米を輸出するのに適しているマーケットであることを示している。そこの消費者は舌が肥えていて、値段が少々高くても「おいしい日本米」を欲しがっていると言えそうだ。

 それは農林水産省もわかっていて、8日の斎藤農水大臣の記者会見では、日本米の需要が見込める国・地域「ターゲット国」を絞り込み、それぞれに対し有望な品目(品種、産地)と個別の輸出目標を具体的に設定した上で、販売促進活動を強化する「選択と集中」型の輸出振興戦略が示された。ターゲット国候補として中国、香港、シンガポール、アメリカなどが挙げられていた。

 具体的には、輸出用米の産地「輸出基地」と、海外での日本産米の市場開拓に意欲的に、集中的に取り組んでいる民間の米穀卸や商社「輸出事業者」を募集して、10月末に公表・指定する予定。つまり「余ったコメを輸出に回す」のではなく、最初から輸出を目的とした多収穫、低コストの計画的、安定的なコメ生産を行う体制を整える。それに加え日本酒や米菓などコメ加工品でも、輸出先に合わせた輸出品のリニューアル、再編成を進めていくという。

 その結果、最終的に「2019年・10万トン」という輸出目標を実現すれば、コメの生産調整が2018年産米からなくなる中、年々低下している国内のコメ消費の不振に悩まされているコメ農家にとって所得向上につながる。

 農水省は輸出量の飛躍的増加を目指すこの大臣直轄、官民一体のプロジェクトの経費を来年度予算の概算要求に含める方針を固めている。その中には輸出用などコメの市場拡大に取り組む産地に対し、10アール当たり2万円を助成する交付金(転作助成金)の制度も盛り込まれている。

【次ページ】なぜ日本の「ブランド米」は世界で戦えるのか?

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