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  • 2018/03/01 掲載

建築家 小堀哲夫氏が語る「独創性」を生む「環境の4要素」からの働き方改革

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今や「働き方改革」はすべての企業にとって避けて通れないテーマとなっている。社内の各所で「生産性向上」が叫ばれ、「労働時間短縮」が重視される。しかし、「注目すべきは『生産性』ではなく『独創性』であり、環境を変えてこそイノベーションを起こすことができる」と語るのが2017年に「日本建築学会賞」「JIA日本建築大賞」という国内二大建築賞を史上初めて同年中にダブル受賞した小堀哲夫建築設計事務所 建築家で法政大学兼任講師の小堀哲夫氏だ。同氏が受賞作品のROKIのROGIC(ROKI Global Innovation Center)と、2017年に竣工した日華化学のNICCAイノベーションセンターを例に「建物」からイノベーションを起こす方法を語った。

執筆:経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥、聞き手:編集部 佐藤友理

執筆:経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥、聞き手:編集部 佐藤友理

photo
小堀哲夫建築設計事務所 建築家
法政大学兼任講師
小堀哲夫氏


「日本建築学会賞」「JIA日本建築大賞」を受賞した小堀哲夫氏

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――最初に小堀さまの経歴について教えていただけますか。

小堀氏:昨年、「JIA日本建築大賞」と「日本建築学会賞」を2つ同時に受賞しました。それら2つを同時にいただいた建築家は初めてということで、急にフィーチャーされるようになりましたが、それまでは淡々と仕事をしていました。

 JIA日本建築大賞は、日本建築家協会が年間を通じて特に際立った成果をあげた作品を表彰するものです。一方、日本建築学会賞は、日本建築学会が近年中の国内建築作品であり、芸術・技術の発展に寄与する作品を表彰するものです。

――受賞理由について詳しく教えていただけますでしょうか。

小堀氏:この2つの賞は、静岡県浜松市に本社を置く自動車用フィルターの製造などを行うROKIの研究開発施設「ROGIC(ROKI Global Innovation Center)」の設計を行ったことに対して与えられたものです。この施設が時代性を照らしていることと、これからの日本社会にとって有益だと判断されたことが受賞につながったのだと思います。

 この「時代性」には3つのポイントがあります。1つは環境が働く人に大きな影響を与えることが分かったということ。2つ目は環境の要素として自然がとても大事だということ。3つ目は、環境が人間を独創的にさせると分かり、これこそがイノベーションや働き方改革が求められる今の日本に必要であるということです。

画像
ROGIC(ROKI Global Innovation Center)外観
(写真:新良太)


――「環境が人間を独創的にする」ということについて詳しく教えていただけますか?

小堀氏:私は大学卒業後11年間、B2B案件を多く扱う組織設計事務所で働いていました。民間企業とのお付き合いが多くて、いろんな建物を設計していましたが、そこに足りないなと感じていたのが「人間の居場所」です。

 超高層ビルを建てて、吹き抜けを作り、椅子を置いて美しい空間を作ったとしても、そこに人が佇めるかというと無理です。ただ美しいだけです。どうしても人間の視点が欠如した建築が多く、「人がどういう場所で働きたいか」という視点が欠けていました。

 こうした環境では人間が豊かな創造性を発揮するのは難しいと思います。では、どういう環境なら創造性を発揮できるのか、イノベーションにつながるのかを考えた結果がROGICです。

ビジネスの転換を迫られるROKIは「働き方」を「環境」から見直した

――ROGICのプロジェクトはどのように始まったのでしょうか?

小堀氏:私が前の組織設計事務所を辞めたのはリーマンショックのときで、ほとんど仕事がなかったのをクライアントだった経営者の方々が心配してくれました。そうした方々と話しているうちに、「どういう環境がイノベーションにつながるのか」というフリーディスカッションが深まり、それがきっかけでROGICのプロジェクトが始まりました。

 ROKIは車の部品メーカーです。得意とするのは内燃系のフィルター。技術領域がドラスティックかつスピードをもって進化し続ける中で、今ある人材とポテンシャルを活かして創造性を発揮することが重要です。さらなる成長発展を遂げるためには、従来とは別次元の発想をもって技術の研鑽に励むことのできる場が必要と考え、創造性を最大限に発揮できる建築をテーマとしました。

「独創性」のヒントは江戸時代の京都にさかのぼる

――ROGICの方向性はどのように決まったのでしょうか。

小堀氏:「創造性とは何か」「働き方とは何か」をROKIの担当者と徹底的に話し合いました。お互いに何がいいのかを探り合った結果、「日本人の感性」という話に行きつきました。

 日本人は自然環境と断絶するのではなく、自然環境と建物とうまく調和させながら新しい創造性を生み出すソースとして自然と付き合ってきたのではないか、と考えたのです。たとえば、京都にある桂離宮は17世紀前半(江戸時代)に建築された月を見るための場所で、自然を建築空間に取り込んでいますが、そこから和歌が生まれます。

 これからの企業に求められるのは0から1を生み出すこと、つまり「アート」です。日本人は1を1.1、1.2と伸ばしていくことには長けていても、0から1を生み出すイノベーションは苦手と言われています。ですが、もともとは自然に触発されてアートを生み出してきたわけですから、建物でも自然を感じられる環境をつくりたいと考えました。

 経営者は想像力や創造性を働かして最大限のアウトプットを出せと社員に言いますが、それは環境を変えない限り無理です。研究者の人数を変えることなく、環境を変えることでいかにポテンシャルを高めて引き出すかというのが今回のプロジェクトでした。

【次ページ】生産性の先に均一化があり、多様性の先に独創性がある

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