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2018年04月13日

納豆値上げのホントの理由、「国産大豆の新時代」が幕開け

物価の優等生だった「納豆」が4月から値上げされた。メーカーは円安による大豆の輸入価格の高止まりを理由に挙げるが、今年初めと比べると為替は円高傾向で、大豆の国際価格は2015年以降安定している。それよりも、今納豆を筆頭に豆腐、豆乳など大豆加工食品のブームが起き、需要が高まっているのがメーカーを強気にさせているようだ。見えかけている「国産大豆の新時代」を、需要と供給の両面から紐解く。

執筆:経済ジャーナリスト 寺尾 淳

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“値上げの春”のニュースをにぎわす「納豆」。メーカーごとにその理由は微妙に異なるが……

(© gontabunta – Fotolia)


納豆の値上げは「原材料費」が理由ではない?

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 2018年4月から「納豆」が値上げされた。栄養価が高く、3パック(150グラム)でも100円未満の「物価の優等生」「庶民の味方」もついに屈服かと、ビール(業務用)やワイン、牛丼などとともに「値上げの春」のニュースをにぎわせている。

 「おかめ納豆」で知られる納豆業界最大手のタカノフーズ(本社・茨城県小美玉市)は2018年1月、4月から27年ぶりに値上げすると発表していたが、業界第2位のミツカン(本社・愛知県半田市)も4月2日、6月からの値上げを発表し追随した。こちらは2年ぶり。業界大手ではあづま食品(本社・栃木県宇都宮市)も5月以降に値上げするという。

 いずれも値上げ幅は10〜20%の範囲内だが、その理由は「円安で原材料の輸入大豆が高止まりしている」(タカノフーズ)、「人件費の高騰など製造コスト増」(ミツカン)と微妙に異なる。

 しかし原材料について言えば、大豆の国際価格は2015年以降は1トン当たり400ドル前後、日本円で4万円台で安定的に推移し、しかも年初から為替は円高に振れている。値上げするなら2012年9月に大豆の国際価格が史上最高の1トン当たり650.7ドルを記録したときや、アベノミクスの初期に円安が急速に進行した2013年のほうが、原材料高という説明に納得が行っただろう。

 ではなぜ、今なのか? どうやら本当の理由は「納豆の消費が旺盛になり、メーカーが強気になっているから」であるようだ。

「一過性ではない上昇基調」、“国産シフト”が進む消費者

 全国納豆協同組合連合会が毎年夏に発表している「納豆業界の市場規模」の推移をたどると、2006年は1,940億円だった市場規模は2011年には1,730億円と10.8%も縮小した。2012年は1,799億円へ4%弱、戻しただけに留まる。

 茨城県、福島県、岩手県など納豆消費量の上位県が東日本大震災の被災地と重なった不運もある。大豆の輸入価格が高騰してもメーカーは「消費者の納豆離れが怖くて、値上げなどとてもできない」が本音だったのだろう。

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納豆業界の市場規模の推移


 ところがその後、納豆の市場規模は右肩上がりの拡大を続ける。2013年は前年比約9%、2016年は前年比約8%の成長を遂げた。2016年の市場規模は2184億円と過去最高水準となり、2011年の底から5年間で26.2%もの拡大を見せている。

 その間、2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に指定されたが、大きかったのは健康志向の高まりを受けた「発酵食品ブーム」の流れで「納豆ブーム」が起きたことだろう。

 全国納豆協同組合連合会は「一過性ではない確かな上昇基調」と評価し、かつて健康系のテレビ番組を機に起こった“バブル”とは異なると強調。「健康志向と節約志向を両方満たす食品」「高齢者の単身世帯の増加も、手間をかけずに食べられる納豆には有利」と、その背景を分析している。

 納豆メーカーにしてみると、需要は過去最高で先行きの不安も小さい。値上げできる環境が整ったため、値上げに踏み切れるというわけだ。

 なお、最近は納豆だけでなく豆腐でも煮豆でも豆乳でも「国産原料シフト」が明確だ。国産大豆は輸入大豆より価格が高い。しかし食の安全・安心への関心の高まりを反映して「国産大豆使用」は一種のブランドになっている。それは「国産小麦使用」のパンやうどんが人気を博しているのと同じ理由である。

 総務省統計局の「家計調査年報」によると、2016年の二人以上世帯1世帯当たりの納豆年間支出金額は3835円で、2014年の3417円から2年で12.2%も増えた。その分、店頭で「ワンランク上の納豆」が選ばれるようになり、その目安になっているのが「国産大豆使用」という表示であるという。

 それを裏付けるデータが、全国納豆協同組合連合会が公表する納豆生産における国産大豆の使用量だ。2010年は約1万1000トンで国産比率は10%以下だったが、2016年はおよそ2.3倍の約2.5万トンで、国産比率は約18%まで高まった。今やスーパーの店頭では「北海道産」「宮城産」「茨城産」など、国産大豆使用納豆の花盛りになっている。

 また農林水産省の「食料需給表」によると、食用大豆の国内需要は2012年を底に2016年までに4.5%伸びた。農林水産省が豆腐や煮豆や納豆のメーカーなど実需者に実施したアンケートからの推計によると、2018年までの2年間で4%、2022年までの6年間で7%伸びると予測されている。

 国産大豆の需要に限ると2011年から2016年までの5年間で8.9%伸び、さらに2018年までの2年間で10%、2022年までの6年間で16%の2ケタ成長が見込まれている。国産大豆の需要には明るい見通しがある。

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食品用大豆の国内需要量の推移と予測


【次ページ】50年間振り回されてきた大豆農家に、国政の追い風

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