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  • 2018/04/24

医療ロボット・介護ロボットは現場をどう変える?現状や最新事例、今後の課題は?

連載:世界のロボット新製品

日本の社会問題のトップともいえる「少子高齢化」。この課題解決に期待されるのが、医療ロボット、介護・福祉ロボットだ。社会動向、国の施策、国際基準の制定などこの分野を取り巻く状況を解説した上で、パナソニックやサイバーダイン、岡田製作所などのすでに現場で活躍するロボットを、動画を交え紹介していく。

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

アスラテック 事業開発部 部長 羽田卓生

1998年にソフトバンク入社後、出版事業部に従事。2004年に、テレビ東京系番組「テレビチャンピオン」にて、初代ケータイ王になる。2006年より、ソフトバンクモバイルを経て、2013年のアスラテックの立ち上げ時より同社に参画。現在は、事業開発部門の責任者を務める。任意団体ロボットパイオニアフォーラムジャパンの代表幹事。WEB媒体での執筆や多数の講演・セミナーの講師など幅広く活動。直近ではSoftBank World 2017の特別講演に登壇。

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特に人手不足が叫ばれる、医療/介護・福祉業界。ロボットの活用はどのように進められているのか
(© Julien Tromeur – Fotolia)



医療、介護・福祉向けロボットとは何か

 今回は、「医療」「介護・福祉」向けロボットをテーマにその最新状況を把握と分析を行う。まずは、この分野の定義を確認してみたい。以下、ロボットの分類はNEDOのロボット産業関連のレポートにある分類項目を参照している。

 その中の、サービス分野の「医療」「介護・福祉」の定義は以下の通り。

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ロボットにおける、「医療」「介護・福祉」の定義

 この「医療」「介護・福祉」分野は、同じくNEDOの市場予測では、2035年には、約5,000億円にもなるとされている。2018年3月現在の市場規模、約300億円から、17倍という急成長を遂げる。

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急成長する「医療」「介護・福祉」分野

 では、なぜ、このように「医療」「介護・福祉」分野は、急成長するのか?いくつかの理由があるが、主要因として以下の3つが挙げられる。

1.少子高齢化から来る、社会ニーズの高まり
2.政府の支援
3.国際規格の策定


1.少子高齢化から来る、社会ニーズの高まり

 日本国の抱える社会問題としての、少子高齢化。そこから、直面する課題解決の1つとして、この分野のロボット導入が期待される。現時点で、医療、介護の現場での労働力不足は国や医療、介護関係の団体各種レポートで報告されている。高齢化が進めば、一層医療、介護のニーズは一層増し、ますます、必要とされる人手とのギャップは増える一方となる。

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介護職の労働力不足は38万人に及ぶ

 民間シンクタンクの調査レポートでも、ロボットでの解決に対して期待されていることが伺える。三菱総合研究所の「社会課題解決につながる未来の商品・サービスに対する消費者のニーズ調査」(内外経済の中長期展望 2017-2030年度)では、トップ10のうち6項目が、この「医療」「介護・福祉」関連となっている。また、富士通総研の「性別・世代別にみるロボットやAI(人工知能)への期待と不安」では、2位に「ロボットやAIが進化して医療や介護の役立ってほしい」という項目が挙がっている。

政府によるロボット化の支援

 2014年に首相官邸で開催された「ロボット革命実現会議」が、現在の政府が行うロボット施策の起点となっている。この会議によって、発表されたのが、「ロボット新戦略」だ。すべてを読むには、少々ボリュームが多いので「ロボット新戦略のポイント」をご覧いただきたい。

 冒頭から、「少子高齢化や老朽インフラ等、ロボットが期待される『課題先進国』。」と、「少子高齢化」が課題として掲げられている。そして、介護・医療に関して以下のように具体的なゴール設定された項目もあり、この分野への強い意欲を感じさせる。

ロボット新戦略におけるゴール設定

◆介護の2020年のゴール設定
・介護ロボットの国内市場規模を500億円に拡大
・移乗介助等に介護ロボットを用いることで、介護者が腰痛を引き起こすハイリスク機会をゼロにすることを目指す
・最新のロボット技術を活用した新しい介護方法などの意識改革
◆医療の2020年のゴール設定
・ロボット技術を活用した医療関連機器の実用化支援を平成27~31年度の5年間で100件以上

 このロボット新戦略を受けて各省庁が検討を進め、さまざまな会議でその検討内容の発表を行っている。最新の動向は、昨年、10月に実施された「未来投資会議構造改革徹底推進会合」で、厚生労働省と経済産業省が連名で発表した配布資料に見ることができる。

 この中で注目したいのが、「ロボット介護機器の開発重点分野の改訂(平成29年10月)」だ。

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ロボット介護機器の開発重点分野の改訂
(出典:首相官邸 公表資料)


 これまでの「装着」「排泄物支援」などに「トイレ誘導」「生活支援」などが加わり、さらにはこれらの技術を制御する「介護業務支援」という分野も追加された。上図で挙げられているような支援が介護現場で見られる日も、そう遠くないかもしれない。

3.国際規格「ISO13482」の策定

 国際規格としてISO13482が2014年に発行され、市場の成長の後押しとなった。パーソナルケアロボット(生活支援ロボット)の安全性に関する規格で、日本の提案が採用される形で発行されたという経緯がある。この規格により、生活支援ロボットは国際安全規格に基づいた安全認証を取得することが可能になったのである。

 生活支援ロボットの販売や導入においては安全認証を取得していることが適切な安全対策の証明となるため、このISO13482が注目されているのだ。

 すでに国内メーカーでは、12機種のロボットがこの規格を取得している。今後、ますます増えていくだろう。

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国内メーカーのISO13482取得一覧

「医療」「介護・福祉」向けロボットの現状

 ここまで、「医療」「介護・福祉」向けロボット分野を取り巻く環境を説明してきたが、ここからは実際のロボットの状況を簡単に説明する。

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「医療」「介護・福祉」向けロボット(ジャンル別)

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「医療」「介護・福祉」向けロボット内訳(国別)

 まず、その利用内訳は「介護・福祉」向けが81%、「医療」向け19%と、大きな差がついている。医療向けのロボットは得に開発、導入の難易度が高いことが原因の1つとも考えられる。国別では、日本が圧倒。課題先進国ゆえにこの分野へのロボットの取り組みが活発なことが伺えた。

 では、ここからは具体的なロボット製品を見ていこう。「医療」「介護・福祉」分野のロボットというと、HALをはじめとした装着型の移動・リハビリ支援ロボットの知名度が高いが、今回は非装着型のロボットをNEDOの分類項目ごとに各1事例ずつピックアップして紹介する。

介護・介助支援:洗浄後のお尻を拭くロボット便座

 介護・福祉(介護・介助支援)分野で着目したのは岡田製作所によって開発された介護ロボット便座「楽々きれっと」だ。このロボットは平成27年度「ロボット介護機器開発・導入促進事業(開発補助事業)」に採択されている。



 洗浄機能付きの洋式便器に後から取り付けることができ、ロボットアームが水洗後の水分を拭き取ってくれる。現在、第5号試作機まで完成しており、最終モデルを開発中だ。

 排泄支援ロボットは経済産業省と厚生労働省が公表する「ロボット技術の介護利用における重点分野(平成29年10月改訂)」の中でも介護者のニーズの高い分野のため、今後の製品化を期待したい。

自立支援:パナソニックの起立歩行アシストロボット

 介護・福祉(自立支援)分野としてはパナソニックの自立支援型起立歩行アシストロボットを紹介する。



 被介助者の起立・着座・静止(衣服着脱時)などの動作状況を検知し、自立的動作を支援することが可能。小型・軽量で、スリングの着脱が容易なため、急な利用にも対応できる(スリング:吊り具)。

 今後実用化されれば、従事している介護職員の7割が腰痛などを抱えるとされる介護現場の負担軽減に一役買うことになりそうだ。

手術支援:日本でも普及の「ダヴィンチ Xi」

 医療(手術支援)分野からは米国Intuitive Surgical社が開発した手術支援ロボット「ダヴィンチ Xi」をピックアップした。



 このダヴィンチXiは第4世代にあたるロボットで、日本でも多くの医療機関へ導入されている。ロボットの機能による支援によって、従来よりも高精度で体への負担が少ない手術が可能となっており、手術支援ロボットの中では最も知名度の高いロボットの1つだ。

調剤支援:ヒューマンエラーを防止する「DimeRo」

 医療(調剤支援)分野のロボットの中ではユヤマのDimeRoが挙げられる。



 DimeRoは薬品の選択/秤(ひょう)量/配分/分割/分包といった作業のすべてをフルオートで行うロボット。人の作業では完全に防ぐことができない薬品の選択、秤量の際の作業ミスを防止できる。調剤業務が時間短縮できるため、それにより生まれた時間を、服薬指導・在宅医療への参画に充てるなど、薬局のサービス品質向上が期待できるのではないだろうか。

 調剤支援分野は「医療」「介護・福祉」ロボットの中でも事例が少なく、これからさらに新しい事例が出てくる可能性がある。

安全かつ正確に血液を採取する採血ロボットも

 最後に、医療分野の中で手術支援・調剤支援に該当しないロボットを1つ紹介する。米国VascuLogic社の自動採血ロボット「VenousPro」だ。



 血液を採取する医療機器で、操作はタッチスクリーンで行う。赤外線と超音波で適切な挿入部位を選定し、高精度で針を静脈に挿入できる。

 現状、広く世に普及しているというわけではないが、健康診断など採血の機会は数多くあるため、今後開発が進めば多くの医療機関に導入されるかもしれない。

普及に向けて立ちはだかる3つの壁

 HALのサイバーダイン社の決算資料を見ると、2016年度の売上が、約16億円で医療用モデルの稼働台数が188台、福祉用モデルの稼働数が422台、という数字が出ている。まだまだ、ビジネスとしては「これから」という感じが否めない。では、この分野のロボットが普及していない原因は何なのか?大きく「価格」「使い勝手」「社会的なイメージ」の3つあると考えられる。

 「価格」は、まさにロボットを利用した際の費用対効果がその課題となっている。決して安いモノではないため、積極的な導入の壁になっている。

 「使い勝手」は、医療、介護などの現場で、職員が使いこなせるかどうか不安、という壁だ。事実、ロボットは新しい機械だけに、使い方を学ぶ必要はある。もっと簡単に誰でもすぐに使えるようにならないと、普及の壁になりうる。

 最後「社会的イメージ」は、“医療・介護従事者がロボットに代わってほしくない”という考えが多いことだ。この問題には、「ロボット新戦略」にも「介護をする際に介護ロボットを利用したいとの意向(59.8%を80%に引き上げ)」「介護を受ける際に介護ロボットを利用してほしいとの意向(65.1%)を80%に引き上げ」と、克服すべき目標として掲げられている。

 医療/介護・福祉分野にかぎらず、この“3つの壁”を克服できれば、普及に向けて大きな弾みが付くだろう。

(執筆協力:菅沼 美和、水口キリコ)

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