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- 2018/11/15 掲載
自治体職員を“ロボット”で穴埋め?「RPAで働き方改革」の公算
「RPAで労働人口不足をカバーする」
そういった中、注目が集まっているのが、自治体の業務自動化を支援する「自治体RPA」だ。
政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)は2018年6月、「世界最先端デジタル国家」の創造に向けて「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」の改訂を閣議決定した。その中で政府は、重点取組の一つとして「地方のデジタル改革」を掲げ、地域生活の利便性向上のための「地方デジタル化総合パッケージ」を策定している。
「地方デジタル化総合パッケージ」の柱の一つが、RPAなどを活用したデジタル自治体行政の推進だ。具体的には、自治体の定型的かつ膨大な作業量が発生する業務プロセスを、RPAを活用して自動化・省力化する。これにより、自治体職員の稼働時間の削減効果やミスの軽減、行政サービスの向上、さらには、自治体職員の働き方改革にもつながることが期待されている。
総務省では、自治体RPAの取り組みに向けて予算化も進めている。総務省は2018年8月、「総務省重点施策2019(落ち着いて、やさしく、持続可能な社会の実現)」および、「平成31年度総務省所管予算概算要求の概要」を公表した。
今回の重点施策の一つに掲げられているのが「自治体戦略2040構想の推進」だ。これは、自治体行政スマートプロジェクトやクラウドの進展を見据えた次世代の自治体情報システムのあり方などの検討を行っていくものである。
自治体行政スマートプロジェクトでは、従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮できるスマート自治体への転換を目指している。AI・ロボティクスが処理できる事務作業は、AI・ロボティクスによって自動処理できる仕組みづくりだ。
また、自治体行政のさまざまな分野で、AI・ロボティクスなどを活用した標準的かつ効率的な業務プロセスを構築するプロジェクトを創設していくという。なお、総務省では2019年度の予算で、自治体行政スマートプロジェクトの実施に要する経費2億4000万円を新規に概算要求している。
具体的な取り組みに向けて、研究会でも検討が進められている。総務省は2018年9月、「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(第1回)」を開催した。同研究会では今後、以下の2点を中心に、具体的な検討を進めていく方針だという。
- 国や自治体の動き、民間・海外も含めた技術発展の動向を踏まえながら、AI・ロボティクスの活用が有効な類型の検討
- 各自治体がAI・ロボティクスを個別に導入すると、重複投資となりうることを踏まえ、動き出しつつあるAI・ロボティクスの自治体の導入を効果的に効率的に行う施策の検討
年間1400時間の作業時間を削減を目指す-つくば市
実際、地方自治体が独自にRPAを導入・検証する動きも出てきている。その1つが茨城県つくば市だ。同市では2018年1月から、株式会社NTTデータ、株式会社クニエ、日本電子計算株式会社と共同で、自治体業務においてRPAを活用するための共同研究を実施している。同共同研究では、つくば市役所職員のアンケートやヒアリングを実施し、定型的かつ膨大な作業量が発生する業務を抽出している。これら業務の量や難易度を評価し、RPAの作業特性などを考慮する。そのうえで、既存システムにRPAソフトを導入し、職員の稼働時間の削減やミスの軽減による業務品質向上などの改善効果の測定を行い、RPAの適合可能性の高い業務や処理を分析している。
自治体では、特に確定申告時期の税務処理には多くの時間外労働が担当課職員に課せられている状況にあり、これらの課題解決のためにRPAを活用することで「作業時間の短縮(効率化)」と「ミスの少ない正確で的確な処理」の効果を測定している。
つくば市の市民税課は、新規事業者登録や電子申告の印刷作業などの全5業務にRPAを導入し、結果として、3カ月で約116時間の削減、年間換算で約336時間の削減できるとした。市民窓口課では、異動届受理通知業務にRPAを導入し、結果として、3カ月で約21時間の削減、年間換算で約71時間の削減を見込む。
なお、今年度は、市民税課・市民窓口課に加え、納税課・資産税課へ導入し、来年度以降効果が見込まれる部署を対象に順次導入を行う予定となっている。市民税課業務全体の5%にRPAが適用できた場合、年間で約1,400時間の作業時間が削減でき、約370万円相当の時間外勤務手当が削減する計画だ。
【次ページ】繁閑差をRPAで解決(したい)-宇城市
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