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  • 2022/03/15

アマゾンも本格参入のデジタルヘルス、日本の医療の今後も決める「5000億ドル市場」の実態

年初に米ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市CES。今年のCESで注目すべきテクノロジートレンドの1つとして挙げられたのが「デジタルヘルス」だ。デジタルヘルスとは、デジタル技術を活用して医療やヘルスケアを変革する分野である。長引くコロナ禍の影響により精神面のケアを行う必要性が高まり、単なる遠隔診療や診断だけではなく、カウンセリングやフィットネスを含めたメンタルヘルス対応が求められている。2022年2月には、アマゾンがヘルスケア事業「Amazon Care」を米国内で開始し、今後は国境を越えた競争が進むことが予想される。コロナ禍でデジタルヘルスの普及が進んだ米国における現状と課題から、今後のトレンドを整理する。

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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競争激化が予想されるデジタルヘルス
(Photo/Getty Images)


デジタルヘルスの中でも注目の3分野

 米国の調査会社Global Market Insightsによると、世界のデジタルヘルス産業は2025年には5,040億ドルに到達する見込みだという。また、デジタルヘルス関連のテクノロジーも1,569億ドル規模となる。携帯端末があれば国境を超えたリモートケアも可能になるため、国際的な競争も今後は進むことが予想される。

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世界のデジタルヘルス産業は2025年には5,040億ドルに到達すると予想される
(出典:Global Market Insights)

 今年1月に開催されたCES(テクノロジー見本市)では、注目すべきデジタルヘルスの投資先として3つの分野が挙げられた。1つ目は「コンシューマー・ファーストモデル」だ。コロナにより、特に米国では医療弱者の存在が浮き彫りになった。「経済的疾患」と呼ばれるほどに、今回のコロナ禍では低所得者層の多い地域での罹患や死亡者が目立ち、医療制度そのものの抜本的改革の必要性が叫ばれた。

 そのため、コロナ後も見据えた今後のデジタルヘルス分野において重要になるのは「すべてのコンシューマーにとってシンプルかつ必要に応じた医療が適切に利用できる環境作りだ」と語るのは、ベンチャーキャピタル企業Define Ventureのリン・チョウ・オキーフ氏だ。

 Define VentureではLGBTQを含むマイノリティに対するヘルスケアの提供に注力するFOLX Healthに投資するなど、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)よりも一歩進んだ、これまでのシステムから取り残されがちだった人々を対象とするデジタルヘルスシステムの構築が重要としている。


 2つ目がヘルスケアのアフォーダビリティ(affordability)だ。これは「値ごろ感」「費用を負担可能であること」を意味する言葉である。Precursor Venturesのシドニー・トーマス氏は「米国が公的保険ではなく民間保険を利用するシステムを続ける限り、ヘルスケアのアフォーダビリティは重要な課題で有り続ける」と語る。オバマケアなどで低所得者への健康保険が普及した米国ではあるが、より良いケアを受けるためには高額の保険が必要という現状は変わっていない。

 一方でトーマス氏は「コロナ禍で興味深い医療保険モデルが登場した」と指摘する。これまでのように包括的に保険料と医療費を支払うのではなく、患者自身が製品やサービスを選んで個別に支払うというものだ。

 車の保険で走行距離に応じた保険料を支払うように、受けた治療や薬の分だけを支払うミニマム保険のような制度が今後主流となる可能性がある。特にデジタルヘルスではこうした細分化がしやすい。

 3つ目がヘルスケアのビジネス面だ。Rock HealthのCEOビル・エバンズ氏は、ヘルスケアのB2Bモデルは「ヘルスケアに効率性と効果性を飛躍的に高めるポテンシャルを持つ」と語る。

 たとえばヘルスケア企業Arineは、医薬品マネジメントを提供することで現場の医師のワークフローをサポートするシステムを築いている。こうしたシステムは特に産婦人科のような特化した分野で威力を発揮する可能性を秘めているという。

米国におけるデジタルヘルスの普及の実態

 では、実際のデジタルヘルスの普及はどうなっているのか。米調査会社Parks Associatesによると、米国におけるデジタルヘルス利用者はコロナにより劇的に増加した。同社の調査では、「何らかのデジタルヘルスを利用したことがある」という人は2021年6月時点でブロードバンド保有世帯の64%となり、37%が「ウェアラブルデバイスを保有」、25%が「コネクテッド・メディカルデバイスを保有している」と回答した。

 こうしたデジタルヘルス、リモートケアの利用促進の原動力となっているのは、米CMS(Centers for Medicare & Medicaid Services、米保健福祉省の一環)がコロナ対応で制度を転換したことが大きい。CMSはデジタルヘルスの対象となる医療分野やサービスなど135項目を追加したため、これまで自宅では受けられなかったリモートケアなどが対象となった。

 その他の要素として、医療業界の人手不足が深刻となりデジタルヘルスへの需要が高まったこと、医療系デバイスの発達によりこれまで以上に詳細なリモートケアが可能になったこと、コンシューマー側の需要が高まったことなども挙げられる。

 CMSが提供するMedicare、Medicaidは高齢者と低所得者に対し政府が提供する公的医療保険だ。そのため、特に年収3万ドル以下、テクノロジー弱者、黒人およびヒスパニックなどの層によるデジタルヘルス導入が進んだことも、普及の大きな要因となっている。

【次ページ】米大手医療機関の調査で分かった、解決必須の「5つの課題」

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