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「ソフトウェアテスト」で急成長を続けるSHIFTは、ITベンダーで活躍するエンジニアの新たな受け皿となりつつある。実際、多くの企業がITエンジニアの獲得に苦労する中、月に60人という驚異的な人材獲得力を発揮しているという。その理由とは何か。丹下社長に、同社の人材戦略と獲得した人材をビジネスでどう活かすのかを聞いた。
前編はこちら(この記事は後編です)
エンジニア不足の中、毎月60人を採用
──各社がIT人材の獲得に苦労する中、人材の獲得にも成功されています。毎月60人もどうやって人材を獲得されているのでしょうか。
丹下氏:システム開発には「デスマーチ」が多いと言われますよね。誰も悪くないのにチーム全体か疲弊して、システムの品質もどんどん悪くなり、プロジェクトが破綻してしまう。我々は、こうしたことをなくし、IT業界全体をよりよくしたいと考えています。
これから40代、50代を迎えるエンジニアは、我々の会社に来てもらえば、これまで培った技術を使って、ITをよりよくすることに貢献できます。それに気づいたエンジニアが、弊社を選んでくれているのが、現在の状況です。
もちろん、エンジニアの給与は高く設定しています。ただし、その分、厳しいのも事実です。一般的なIT企業の場合、エンジニアとしてキャリアを積んでいくと、専門職としてエンジニアを極めるか、マネージャになるかを選択するタイミングがやってきます。弊社もそれは同じですが、専門職としてエンジニアとしてやっていける、端的にいえば"技術だけで飯が食える"のは5%くらいだと思います。
──それ以外は“技術だけ”では食えないということでしょうか? テストエンジニアを採用するとき、CAT検定の結果の他に、特に重視しているポイントはありますか。
丹下氏:その通りです。技術だけで食える人は本当に一握りです。これを誤解している人は意外と多いと思います。なんちゃってエンジニア、名前だけのコンサルタントが跋扈(ばっこ)しているのが現状だと感じています。
CAT検定以外で重視しているのは業務知識の有無です。分業化するということは、要求仕様を書く人、コードを書く人、テストをする人……など、専門職が増えるということです。そうしないとビジネスがスケールしません。
しかし、分業化すると情報伝達ロスが生まれます。そこで指示書が必要になります。その指示書をどう書くかが、分業化の革命を起こすポイントなのですが、今のところ、その"つなぎ目"を置き換えるテクノロジーはまだありません。そこで、指示書がなくても問題ないように、業務知識のあるエンジニアを重視しているのです。
そのため、採用ではCAT検定というテストへの向き不向きをチェックするとともに、たとえば製造業、小売業、金融業といった各業界の知識の有無をもって判断しています。
──将来的には業務知識がなくても、ソフトウェアをテストできる世界が実現するということですか。
丹下氏:AIも含めて、現在の技術ではまだ難しいと思います。方法論やツールにおいて、ドラスティックな革命が必要でしょう。
製造業で学んだノウハウを役立てる
──セキュリティやITコンサルティングなどの子会社も抱えていらっしゃいますが、今後は、テスト以外にも事業を拡大されるのでしょうか。
丹下氏:たとえば、iOS向けのアプリは、世界で年間1万3000本くらい作られています。しかし、法人としてやっていくには、ランキングのトップ100に入らないと厳しいのが現実です。何億円もの資金を投入して、長い時間をかけて開発しても、App Storeに公開して1週間後に勝負が決まります。そこでトップ100に入れなかったら、すべての努力が無駄になってしまうのです。
原因はいろいろ考えられるでしょう。UIやUXが足りなかったのかもしれないし、デザインやマーケティングがまずかったのかもしれない。我々は、それを「ラストワンマイル」と呼んでいます。
SHIFTは、このラストワンマイルのボトルネックを解消する会社でありたいと思っています。そのためには、テストでも企画でも、デザインやマーケティングでも、何でもやりたいと考えています。ただし、開発そのものには興味はありません。先に述べたように、開発はいずれコモディティ化するからです。
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