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  • 2018/02/11

BPRとは何か? 基礎からわかる進め方の基本と事例

政府の掲げる「働き方改革」やグローバル化、IT化が進むビジネス環境において、企業は今までにも増して大きな変革が求められている。そこで改めて注目するべきなのが「BPR(Business Process Re-engineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング=業務改革)」だ。抜本的な「業務改革」を意味するこの言葉は、いわゆる一般的な業務改善とどように違うのか。どのようなメリットがあり、どのような手法で取り入れるべきなのか。参考にすべき導入事例やERP選定の方法、成功のポイントを1つひとつ基礎からわかりやすく解説していく(初出2018年1月25日)。

田中 仁

田中 仁

大手総合商社にて10年間勤務し、新規事業開発を中心に資金調達、財務・会計等を担当。東京のほか、アメリカのベンチャーキャピタルやイギリスの金融機関等にて勤務経験もある。

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業務改善としばしば混同される「BPR」。その定義や手法とは
(© designer491 – Fotolia)



BPR(業務改革)とは何か。業務改善とはどう違うのか

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 BPRとは「ビジネスプロセス・リエンジニアリング(Business Process Re-engineering)」の略称だ。「リエンジニアリング」とは、業務・組織・戦略を根本的に再構築することを指す。つまりBPRとは、企業の目標を達成するために、企業活動や組織構造、業務フローを再構築することである。

 BPRは業務改革、業務プロセス改革とも呼ばれるが、「業務改善」と果たしてどう違うのか疑問に思った方もいるかもしれない。そもそも「改革」と「改善」では意味が大きく異なる。改善は「現状を肯定し劣る部分を是正すること」である一方、改革は「現状を否定し従来の制度を改めること」である。現状を否定するのが「改革」で、現状を肯定するのが「改善」なのである。

 言葉の定義は上記として、では具体的にどう違うのか。まず業務改善は、業務にかかわるヒト(従業員や顧客、パートナー等)、モノ(動産や不動産、その他所有物)、情報(IT)のいずれか、またはすべてのビジネスプロセスを対象に、ムリやムダを省くことで業務の効率化を目指す。

 一方、BPRは、社内業務プロセスを抜本的に見直すとともに、製造、研究開発、品質管理、製品やサービスの供給方式、人事評価などすべての企業活動を、顧客(市場)志向に首尾一貫した業務プロセスとして再統合・最適化することを目指す。

 まとめると、業務改善は従業員や業務フローを重視しており、商品・サービスの品質向上、コスト削減、組織の体質改善などの部分的な効果を得る。一方で業務改革(BPR)は顧客(市場)を重視しており、企業のすべてを対象に産業構造やビジネスルールの抜本的な改革を行うことで飛躍的な効率と生産性の向上を得る。つまり業務改善は、BPRの一環なのだ(図1)。

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図1:BPRのステップ
(出典:総務省、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「民間企業等における効率化方針等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究」をもとに作成)


 業務改善以外にも、BPRに含まれる経営手法は他にもある。たとえば、企業活動の一部またはすべてを外部企業に業務委託するアウトソーシングする手法だ。さらに人事、総務、経理などの特定の業務プロセスを切り離して外部委託する手法も該当する。これらをまとめて「BPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)」ともいう。

 また、「シェアードサービス」は、大企業や企業グループなどの組織における各部門共通業務を一部門に集約し、効率化を図る手法だ。これらの経営手法は、BPRの過程において、特定の業務プロセス効率化のために導入が検討されることが多い。

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BPRの歴史~バブル崩壊の日本では失敗に終わった

 ここでBPRの歴史を少し紐解いておこう。

 1990年初頭、米国の長期不況によって疲弊した企業経営を見直し、立て直すための抜本的な革新として、BPRの原型とも呼べる概念を提唱した人物がいる。それが、元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマー博士と、経営コンサルタントのジェイムス・チャンピー氏だ。共著『リエンジニアリング革命』が大ベストセラーとなったことを皮切りに、BPRの考え方が世界的に普及された。

 では、日本ではいつ頃からBPRが注目され始めたのだろうか。1990年といえば、日本では91~93年のバブル崩壊が思い起こされる。バブル崩壊後の日本でも革新的なBPRは歓迎され、国や地方公共団体、民間企業が組織改革の手法として参考にした。

 このように、米国で生まれたとされるBPR。その起源には、1980年代に日本企業の業務プロセスを米企業が参考にしたという背景もあるが、BPRが注目され始めたころの日本はバブル崩壊期である。結果、皮肉にもBPRは当時、リストラの助長やそれに伴う混乱などを生んでしまった。日本におけるBPR導入期といえるこの時期の取り組みは、成功とは言い難いだろう。

BPRの現状~働き方改革で再注目

 しかし、BPRはここにきて改めて重視されつつある。少し古いが2014年に日本能率協会が行った調査によると、対象となった企業の約7割がBPRに取り組んでいるという結果が得られた(図2)。

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図2:BPRの取組状況(n=89)
(出典:株式会社日本能率協会コンサルティング「『BPR(業務の抜本的改革)』に関する実態調査報告書」


 この調査によると、業界トップ企業や業界2~3番手企業のBPRによる目標達成率が向上する一方で、業界中位以下のBPRによる目標達成率は低く課題が残るが(図3)、BPRという手法は一般的になりつつあるといえる。

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図3:BPRプロジェクトの目的達成状況(n=89)
(出典:株式会社日本能率協会コンサルティング「『BPR(業務の抜本的改革)』に関する実態調査報告書」


 また現在、日本の社会現象として、超高齢社会による労働力の低下は顕著である。このような社会を背景に、政府が乗り出した政策が「働き方改革」だ。長時間労働の解消・ワーク・ライフ・バランスの実現、そして柔軟な働き方への環境整備による労働力の確保が挙げられる。

 国全体の生産性向上・国力の向上を目指す動きに、企業も適応する経営手法を身に付けなければならない。長時間労働を減らし業務の効率化を目指すには、通常業務の改善だけでは大きな恩恵は得られない。そのため、業務の根底から変革するBPRは、最も効果的な手法のひとつといえるだろう。

BPRを導入するメリットは業務フローの把握と従業員・顧客満足度の向上

 ではBPRを導入することで、具体的にはどのようなメリットを享受できるのだろうか。

 第一に、業務フローの見える化である。既存プロセスの改善だけでなく、組織構造全体を対象とするBPRでは、全社的な業務を俯瞰的に把握しなければならない。全社レベルで業務フローを洗い出すことで、生産性向上を阻害する原因の発見。これらは従来の組織体系の見直しにもつながる。

 第二に、従業員満足度・顧客満足度の向上である。BPRは、企業の掲げる目標達成を目的とする。その目的のために業務効率化を進めることで生産性が上がり、従業員の満足度につながる。またこれにより高品質の製品・サービスを提供することが可能になり、結果として顧客満足度にもつながるのだ。また、プロジェクトごとに目的やゴールを位置付けできることも利点だ。

 BPRは自社がターゲットとする顧客や市場を中心に再統合を目指すため、従業員の意識改革などにもつながり、組織体系変革さらには産業構造変革にも役立つ手法だといえるだろう。

BPRの進め方~業務仕分け、ERP、シックスシグマ

 BPR導入に必要なのは、業務全体の可視化、意思決定プロセスの改革である。業務全体を可視化することにより、ビジネスフロー全体の流れを把握し、改革目標を作成する。そして意思決定プロセスの改革により、意思決定のスピードアップを高め、改革スピードを向上させる。

 BPRを具体的に進めるには、多様な手法が用いられる。その具体例をいくつか挙げていこう。

・業務分析による業務仕分け

 一般的なBRP導入方法として用いられる手法で、ここでの「業務」は「繰り返し行われる作業」と定義される。

 少し掘り下げると、この繰り返し行われる「作業」は何のために行われるのだろうか? それは、付加価値の生産である。複数業務を一連の流れとし、付加価値はその流れのなかで生まれる。こうした一連の流れを「業務プロセス」と呼ぶ。業務分析を行うことで、この業務プロセスを可視化していくのだ。

 そして、自社の業務の優先順位付けを行い、重要業務に支障をきたすことがないように再編成を行う。この優先順位付けは、業務の性質を細かく分析することが必要だ。分析には、ABC分析やプロセスマッピング、BSC(バランススコアカード)などの手法を用いることが多い。ここで優先度が低いとされた業務はアウトソーシングすることも考えるべきだろう。

・ERP/ERPパッケージの導入

 ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)は、統合基幹業務システムとも呼ばれる。企業の経営資源効率化、経営判断のスピード化の実現を図るに用いられる。これらを実現するためのソフトウェアはERPパッケージと呼ばれ、SAPやオラクルなどが主要ベンダーとして世界的に有名だ。

 ERPは財務会計、予算、在庫、人材などの幅広い管理業務を対象としており、業務フローを可視化できるため、ERP導入がそのままBPRを進めるための手法となりうる。また、BPRにおいては既存の業務フローに抜本的な変更を加えるため、ERP導入を求められることがあり、いずれにしてもBPRとは切っても切れない関係と言えるだろう。

 なお、EPRパッケージ導入には、規模にもよるが数億円から数十億円、場合によっては数百億円規模のシステム投資が求められる。グローバル企業であれば、拠点すべてに導入するのか、あるいは子会社も含めて導入するのか、といったさまざまな判断が求められる。

・シックスシグマ

 シックスシグマは、事業経営のミスや欠陥品の発生率の低下を目指す統計学の手法である。顧客満足のための本質的な課題解決手法であり、製造部門、営業部門、サービス業だけでなく間接業務にも効果的だ。徹底した顧客満足をトップダウンで追及していくシックスシグマは、BPR導入において有効な手法となりうる。

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図4:BPR及び関係概念・手法
(出典:総務省、三菱UFJリサーチ&コンサルティング「民間企業等における効率化方針等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究」をもとに作成)


 また、BPR導入の基本姿勢の例として、日本能率協会は7つの要約を挙げている
1.白紙姿勢(ゼロ・リセット)による、根本的な新たなビジネスプロセスの創出
2.経営力と現場力の連携による、トップのリーダーシップ発揮とミドルの改革推進の連携
3.段階的成果出しによる、短期成果と中長期成果に分けて段階的に成果を実現
4.ITの実際的活用による、業務改革後の姿を描いたITの有効活用
5.業務面・情報面の基盤整備による、業務ルールや流れの標準化
6.人材変革の重視による、業務改革後の人材変革増を想定し推進
7.業務改革の徹底実施による、経営成果と人材変革の実現のため業務改革の実施を徹底

 上記にもあるように、企業にはBPRを推進する強いリーダー育成や、情報システムの導入などが求められる。また、ステークホルダーの調整も必要である。もちろんERP導入やシックスシグマ以外にも、BPRの手法は数多く存在する。次ページで国内企業の事例とともに解説していこう。

国内企業の3つのBPR事例

 BPR導入企業は多数あるが、ここでいくつかの導入事例を紹介する。

・シックスシグマによるBPR事例

 製造業を営むA社はバブル崩壊後、ボトムアップの改善だけによる組織全体の生産性向上だけでは事業継続が困難だと判断し、BPRによる間接業務の抜本的な生産性向上を図った。

 それに伴い、経営改革推進本部を新設し、自社用に開発したシックスシグマを導入。この際シックスシグマを手法とした理由は、トップダウンで改革を進められるためだ。シックスシグマを社員に教育し、その基本であるDMAIC(Define,Measure,Analyze,Improve,Control)というフレームワークを利用して各プロセスにおけるムダを徹底して排除した。

 また、モチベーション向上のため、経営者が現場を何度も訪問し、同時に表彰制度も導入した。改革をプロセス・イノベーションとバリュー・イノベーションに分けて定義し、それについてのベストプラクティスの研修なども実施。これにより、企業は年間数千億円のコスト削減効果を得たほか、社内コミュニケーションが向上したという事例になる。

・シェアードサービスによるBPR事例

 市場環境の変化によって、中核事業の売り上げが急激に悪化したB社は、事業構造の変革が必要だと認識しBPRを実施。社員能力転換による組織力強化と、グループ全体の間接業務の効率化を目指した。

 まず、人事・総務などの間接業務を提供するシェアードサービス専門の子会社を設立。これにより、グループ全体の統治による組織横断的な業務標準化を可能とした。これにより、グループ全体で間接コストの大幅削減に成功している。

・SCM(サプライチェーン・マネジメント)による導入事例

 仕入れから販売までの各プロセスを一つのつながり(チェーン)としてとらえて最適化を図る経営手法、サプライチェーンマネジメント(SCM)によってBPRを実現した事例もある。

 業績好調時こそ大規模な改革を要すると判断したC社は、成長・収益の双方のバランスを重視しつつ、「国際的な拠点の再編成を含む大規模な事業プロセスの改革」と「IT 技術を駆使した個別の業務プロセスの改革」の2軸を掲げて抜本的な改革を進めた。

 主要部門である制御機器部門では、国際的な拠点の再編成に100億円を投資。1000人規模の移動を、1人もリストラせずに実現。また、対話、教育、研修を充実。中国拠点では、グローバル拠点であるという認識を徹底し、モチベーション向上を図った。また、その前段階では、グローバルで統一的な品番体系の整備も行っている。

 その結果、製造固定費数十億円の圧縮を達成し、改革への投資を3年で回収した。

 その他、より実践的な事例については以下を参考にしていただきたい。

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BPR成功の要因と失敗の要因

 では最後に、紹介した事例のようにBPRを成功に導く要因は何か、あるいは失敗に終わる要因は何かまとめる。

 まず成功要因だが、全体でBPRを推進するために、BPRの必要性、目的などを事前に共有することが重要である。また、社員の積極的な協力を誘発するため、モチベーション向上を図るなど、ボトムアップアプローチも必要だ。

 加えてBPRを推進する過程で、インフラ整備と呼ばれるような業務改革に沿う新ルールの策定、データベースの見直しなどの基盤整備を行う必要もある。全社的な目的の共有化、そして浸透化させることがポイントといえるだろう。

 なお日本能率研究所の調査によれば、プロジェクトで実現成功したポイントは上から順に3つ、「プロジェクトの目的やゴールの明確化、関係者への継続した周知」「トップの強いリーダーシップの発揮」「事業戦略との関連付け」となっている(図5)。

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図5:BPRプロジェクトの成功ポイントとして実現できているもの(n=89)
(出典:株式会社日本能率協会コンサルティング「『BPR(業務の抜本的改革)』に関する実態調査報告書」


 では一方で、BPR導入における失敗要因とは何か。

 一つは、BPR推進における目的およびゴールが理解できていないこと。現状を変えようと「とりあえず」で始めても、期待した成果は得られず、ムダな混乱を社内にもたらす。

 また、全社的な視点のみでBPRを進めることも失敗の原因となりうる。ERP導入にしてもSCMにしても、現場がその重要性を理解できず、また実際に現場に即していないものであればやはり混乱や「改革疲れ」が起こるだろう。

 日本能率協会の調査を見ると、反省点の上位には「企画案は作成できるが、実施が難しく成果に結びつかなかった」「プロジェクト責任者やトップの方針が定まらず、プロジェクト方向性・範囲が右往左往した」「部門単位の小粒な改善にとどまってしまった」と並ぶ(図6)。

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図6:BPRプロジェクトの反省点(n=89)
(出典:株式会社日本能率協会コンサルティング「『BPR(業務の抜本的改革)』に関する実態調査報告書」


 以上の成功要因・失敗要因を押さえた上で、企業にプラスの効果をもたらすBPRを意識して進めることが重要だ。BPRは全社的な取り組みになるので危機的環境下でしかなかなか成功しないのも事実だ。経営陣がどれだけ危機意識をもって主導的に進められるかが大きなカギを握ることになる。ERPパッケージに限らず、さまざまなITツールを駆使しながら取り組んでいただきたい。

〔参考文献〕
『リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新』、マイケル ハマー (著),‎ ジェイムズ チャンピー (著),‎ 野中 郁次郎 (翻訳)、日経
『民間企業等における効率化方針等(業務改革(BPR))の国の行政組織への導入に関する調査研究』三菱UFJリサーチ&コンサルティング
『「BPR(業務の抜本的改革)」に関する実態調査報告書』、日本能率協会コンサルティング

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