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  • 2019/01/04

パワードスーツとは何か?6分類で理解する「人を強化する」ツールの基本

TechVision:世界を変革するトップ50テクノロジー

「人間を強化する」というアプローチの研究が進んでいる。私たちが着用する「服」にテクノロジーを載せることで、より人間が自由に活動できるようにする試みだ。このような服は「パワードスーツ」と呼ばれ、軍事領域や介護領域で徐々に活用されつつある。ここで、パワードスーツとは何か、どんな種類があるのか、具体例を解説する。

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐

フロスト&サリバン ジャパン 伊藤 祐

フロスト&サリバンジャパン 成長戦略シニアマネージャー。日本、シンガポール、フィリピン、タイ、イギリス等において、ビジネスプロセスリエンジニアリングやERPシステム導入、海外展開戦略策定やM&A実行支援、スマートシティのグローバルトレンド調査等のプロジェクトに携わる。慶應義塾大学にて経済学士取得。

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活用事例も耳に入るようになったパワードスーツ、どんな種類があるのか?
(© YakobchukOlena - Fotolia)

パワードスーツとは

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 パワードスーツとは、動力源の有無や種類にかかわらず、人が装着することで動作や姿勢への何らかのアシストが得られる機器を指している。身体的能力を補助・強化する業務用ツール、または個人向け医療ツールとして、ヘルスケアや軍事防衛、製造などの分野で今後の発展が期待されている。

 パワードスーツの身近な用途としては「介護ロボット」がある。たとえば、介護者が要介護者の移乗動作(ベッドから車椅子などへ移る動作)をサポートする際に着用すれば、身体的負担を軽減して腰痛などを防ぐことができる。

 また、患者の歩行支援やリハビリなどにも活用できる。2012年には下半身がまひした英国の女性がパワードスーツを装着してロンドンマラソンを完走したという例もある 。超高齢化社会を迎えるにあたって、日本政府が介護を重要な国家問題と位置付け、2015年度に52億円の補正予算を組んで「介護ロボット等導入支援特別事業」を実施したことは記憶に新しい。

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 もう一つの代表的な例は「軍事用パワードスーツ」だ。いわゆる、アイアンマン型のパワードスーツだ。まるでSF映画のようだが、コンピューターが人間の知的能力を拡張する装置だとすれば、パワードスーツは人間の身体的能力を拡張する装置である。

 世界初のコンピューター「ENIAC」は、そもそも米軍が第二次世界大戦中に弾道計算などの目的で開発したものだが、パワードスーツについても同様に、極限的な身体的能力が求められる軍事用途で開発が進んだ。

6つのカテゴリー

 フロスト&サリバンでは、用途によってパワードスーツを以下の6つのカテゴリーに分けている。

1.全身パワードスーツ(ヘルスケア、軍事防衛、製造)
 装着することによって、非常に重いものを持ち上げるなど身体能力や作業能力を高める。通常は不可能なことをできるようにする。全身パワードスーツは、他の5つのカテゴリーのパワードスーツをすべて組み合わせたものである。

2.四肢サポートスーツ(ヘルスケア、軍事防衛、製造)
 手足の代わりを果たしたり、特定の手足の能力を高めたりする。たとえば、膝サポートスーツを装着すれば、それほど体力を使わずに普段より速く走れるようになる。

3.腰背中サポートスーツ(ヘルスケア、軍事防衛、製造)
 重作業をする人員が腰や背中を痛めないように着用するもの。姿勢の矯正、直立時の筋肉サポート、事故で腰背中に怪我をした患者のリハビリなどにも利用できる。

4.パワードグローブ(ヘルスケア、製造)
 握力を高める。通常は神経に疾患や外傷がある患者が着用する。石油・ガス業界でも利用されており、作業員がグローブを装着することによって、潤滑剤や大型部品を簡単に扱えるようになる。

5.身体拡張型ロボットアーム(ヘルスケア、軍事防衛、製造)
 身体拡張型ロボットアーム(supernumerary robotic arms)は、パワードスーツの比較的新しいコンセプトである。装着すると、体から第3、第4の腕が生えたような形になる。これらの冗長なロボットアームは本来の腕の代わりになるわけではなく、両手がふさがっている際、ドアを開ける、ボタンを押す、ツールを持つなどの簡単な作業のために使われる。

6.工具保持スーツ(製造)
 製造業で重い工具を操作する際に着用する。作業員が起立または中腰の姿勢を取ると、工具の重さはスーツを通して地面に伝わり、重い工具を軽々と動かせるようになる。

 現時点で技術的に成熟しており、市場のニーズにも応えられるのは、四肢サポートスーツと腰背中サポートスーツだ。たとえば、日本のサイバーダインが提供する「HAL」はヘルスケア用途の四肢サポートスーツであり、装着した身体障害者や高齢者の生体電位信号を感知して歩行を支援する。



 また、同じく日本のイノフィスが提供する「マッスルスーツ」は、ヘルスケアや製造で使われる腰背中サポートスーツである。



 マッスルスーツは、先述の介護ロボット等導入支援特別事業では、介護者の腰痛を予防するデバイスとして一躍脚光を浴びた。海外でもフォードが2018年夏に自動車組み立てライン作業員向けにEkso Bionicsの「EksoVest」を導入した事例がある。



 EksoVestは上半身(腕、背中)をサポートするバネ式のスーツで、四肢サポートスーツと腰背中サポートスーツの中間的存在だ。導入に先立って行われた実証試験では、作業員の疲労や怪我につながる1日のインシデント数が83%減るという効果が得られた 。

 このように、市場から確実に求められているこれら2種類のパワードスーツは、ヘルスケア、製造業界を中心として今後さらに導入が進んでいくだろう。フロスト&サリバンでは、パワードスーツ市場は今後5年間、年平均およそ40%で急成長すると予想している。

【次ページ】衣服のように身にまとう人工筋肉「パワード・クロージング」

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