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  • 2019/04/18

イノベーションの9割は「過去からの学び」、それを得るたった2つの方法

少し前までビジネスパーソンに欠かせない3本柱は、「英語」「ITスキル」「金融リテラシー」とされてきた。だが人工知能(AI)時代には、この3本柱があっても、優秀な人材として正当な評価を得られなくなる。AI全盛時代に「ほしいと思われる人材」になるためには何をすればよいのか。『できる人の読書術』(ダイヤモンド社)を上梓した堀 紘一氏が語ってくれた。

ドリームインキュベータ 取締役ファウンダー 堀 紘一

ドリームインキュベータ 取締役ファウンダー 堀 紘一

1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。現在、取締役ファウンダーを務める。

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ドリームインキュベータ
取締役ファウンダー
堀 紘一 氏

読書こそ付加価値のある人間を作り上げる

 従来の日本的経営システムの人事管理には3つの柱があった。それは「年功序列賃金」「終身雇用」「新卒一括採用」だ。高度経済成長が終わり、日本企業の拡大・拡張が望めなくなると、この3本柱を崩すしかなくなる。旧来の3本柱に基づいたサラリーマン社会は、身分を重視する江戸時代の武士の評価システムとよく似ていた。学歴や入社年次、新卒か中途採用かでサラリー(武士なら石高)が決まり、それは生涯に渡って宿痾(しゅくあ)のようについて回る。

 同じようなプロフィールを持つ人は、本人の能力に関わりなく、同じようなサラリーマン人生を歩む。たとえば、東京大学から新卒で入ったら、数年後には係長になり、やがて課長になり、トントン拍子に出世して最低でも同期でもっとも早く部長になれる。私立大学出身で中途採用だとしたら、たとえ仕事ができても親会社では課長以上になれず、せいぜい子会社の総務部長止まりで終わる……といった具合である。

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『できる人の読書術』
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 こうした人事をもっとも顕著に、いや露骨にやっているのが「メガバンク」だ。東大卒ならいきなり出世コースとなる日比谷支店や麹町支店といった都心の支店に配属になり、2年経ったら本店へ移動する。これが早稲田・慶應大卒なら、まずは山手線沿線の渋谷支店や恵比寿支店に配属となり、2年経ってから主力支店に移動、本店に入るのは東大卒の2年後(大卒4年後)となる。

 その他の大学なら都内でも郊外の立川支店や、地方の浜松支店などに配属され、その2年後に山手線沿線の支店へ、主力支店や本店へ移動になるのは、早くても入行後7年目からだ。これが能力とは関係のない、悪しき“学歴人事”の実例である。

 旧来の3本柱が消えてなくなると、身分がある程度保証されていたサラリーマン社会は崩壊してしまう。その代わりに台頭するのが、ホワイトカラーである。ホワイトカラーには身分保証はない。そこそこの大学で学び、新卒で入ったとしても、会社に貢献できなかったら昇進はないし、サラリーも上がらない。居場所がなくなって、いずれ居づらくなって会社を出ていく他なくなる。

 ホワイトカラーの武器は、付加価値をつける能力である。新しいアイデアや創造性で付加価値を高めて、会社に貢献できる人しか残れなくなる。こうした変化は一時的な不況対策でもなければ、雇用調整でもない。日本企業、もっというなら、日本経済と日本的経営が新しい時代の変化に真正面から向き合い、変わろうとしている姿勢の表れに他ならない。

 ホワイトカラーという言葉はあまり聞かれなくなったが、付加価値をつけられる人材しか生き残れないという事実は変わりがない。超一流の人材とは、深い教養と洞察力で付加価値を創造できる存在だ。

選ばれし者の耳学問より誰でも可能な読書で研鑽を積む

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 付加価値をつけられる人間になるには、どうしたらいいのか。方法は2つしかない。1つは知恵のある人の言うことをよく聞くこと。もう1つは読書である。

 知恵、すなわち教養のある人の言うことを聞くのは、いわゆる「耳学問」。これは極めて贅沢な学習法である。その究極の形は、帝王学だ。古代ギリシャ時代の英雄であるアレキサンダー大王は、当時を代表する哲学者アリストテレスを家庭教師にして帝王学を学んだ。 アレキサンダー大王は、アリストテレスを生涯尊敬していたそうだ。

 日本の天皇家でも「進講」という形で、人文科学、社会科学、自然科学といった各界の学問の権威者から学ぶ仕組みがある。毎年1月には「講書始の儀」という形で、進講が行われる。ちなみに平成31年は、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大の本庶佑 特別教授ら3人が進講者となった。本庶氏は「免疫の力でがんを治せる時代」をテーマに講義した。

 帝王学は究極の耳学問だ。それは平民たるビジネスパーソンには無理だし、聞いてためになるような話をしてくれる人に巡り合い、直に話を聞ける機会も滅多にない。聞いて役に立つような話をしてくれる人は、1000人に1人いればいいほうだ。より高いレベルになると1万人に1人しかいない。その奇貨を利用するチャンスが得られる確率も限りなく低い。特異な人脈がない限り、耳学問で学ぶのは難しいのだ。

 私は三菱商事に勤めていた頃、またとない耳学問の機会を得た。当時、三菱グループ各社から1人ずつ選抜された社員たちが集まり、碩学を招いて3泊4日で研究会を開いていた。私は参加したくて仕方がなかったから、直属の部長に頼み込んで選抜してもらった。

 そこでゲストだった三菱総合研究所の牧野昇さんの話が聞けたのは、得難い体験となった。牧野さんは文句なしに1万人に1人クラスの語り部だ。牧野さんのような人の話を直接聞いて学びを得たら、付加価値がつけられる超一流の人材に最速で近づける。だが、その機会は限られているのだ。

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読書と耳学問が超一流の人材を育てる
(Photo/Getty Images)

 耳学問に比べると、読書はハードルが低い。耳学問は話し言葉がベースになっており、理論的に構築されていない場合がほとんどだ。聞き手側に下地がなかったら、耳学問が馬耳東風で終わる恐れもある。それに対して、本は人脈ゼロでも読める。私たち平民でも将来、突出できる可能性がここにある。読書にも読み手の素養は求められるが、書き言葉は話し言葉よりもロジカルで理解しやすいから学習効果にも優れる。

 読書を介して少しずつ教養を深めていけば、最終的には話し言葉で語られる耳学問でも学べるようになる。読書と耳学問の相乗効果で教養と洞察力を育てれば、付加価値を生み出せる超一流の人材に成長できる。

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