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  • 2019/07/23

成蹊大 池上敦子教授が挑む「持続可能な教育」が “自ら思考する力”を育むワケ

特集:2030年予測

国連が提唱する「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)」に注目が集まり、持続可能な社会の担い手を育む教育(Education for Sustainable Development、ESD)が重要視されている。そうした中、成蹊学園は2018年4月、「サステナビリティ教育研究センター」を開設した。同センターの所長を務める成蹊大学理工学部 教授 池上敦子氏は「これからの社会に必要なのは、実践や観察を通して自ら思考する人材と、多様性を受け止める力です」と語る。SDGsの達成年限である2030年に向けた教育のあるべき姿とは。

聞き手:編集部 佐藤友理、執筆:庄司里紗、撮影:濱谷幸江

聞き手:編集部 佐藤友理、執筆:庄司里紗、撮影:濱谷幸江

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成蹊大学理工学部 教授
成蹊学園サステナビリティ教育研究センター 所長
池上敦子氏


教育では「ESD」「SDGs」の観点が重要に

──成蹊学園の「サステナビリティ教育研究センター」では、どのような活動を行っているのでしょうか。

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池上氏:サステナビリティ教育研究センターは、ESDを軸に、学園内外の機関をつなぐハブ拠点を目指しています。

 将来にわたって人間社会が発展しつづけるためには、地球環境に配慮した成長や開発が不可欠です。こうした「持続可能な開発」が国際的なコンセンサスとなる中、その担い手となる人材を育む教育の重要性が叫ばれるようになりました。ESDはそうした動きを背景に、2005年から2014年までの10年を「国連ESDの10年(DESD)」とする国連第57回総会決議によって始まり、その後は「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」の下、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)主導によって、世界各地で推進されています。

 サステナビリティ教育研究センターでは、成蹊学園の小・中高・大それぞれで行われているESDの取り組みを統括し、学園内外にわかりやすく発信しながら、学校横断的なプロジェクトや学外と連携したイベントなどを多数実施しています。

 ESDが対象としているのは、環境保全に関する学びだけではありません。ESD の目標は、持続可能な開発に関する価値観(人間の多様性、環境の尊重、機会均等など)をあらゆる学びの場に浸透させることです。

 さらに、それらの学びを通じて子どもたちの思考力や批判力を育み、コミュニケーション力やリーダーシップの向上につなげていく。つまり、持続可能な社会に対する人々の価値観や行動に変革をもたらすこと、それがESDのねらいです。

──ESDの推進は、近年注目を集めているSDGsとはどう関わっているのでしょうか。

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池上氏:SDGsは、2015年の国連サミットで採択された国際目標です。持続可能な開発のため、2030年までに達成すべき17のゴールを掲げています。わかりやすく言えば、地球上のあらゆる人々がより幸せに暮らせる社会にしていこう、という国際的な合意ですね。つまりSDGsもESDも、目指す方向は同じなのです。

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SDGs 世界を変えるための17の目標
(出典:国連広報センター)

 SDGsは環境や社会、経済など、実に幅広いテーマを包括しています。そして17の目標は、それぞれ個別に存在するのではなく、密接に関連しあっています。これらの課題を解決していくには、まずは何が問題かを知る必要がある。つまり、教育の力が必要なのです。

──教育機関がESDに取り組むことは、SDGsの実現にも大きな意義を持つのですね。

池上氏:SDGsは国家や企業、個人などさまざまなレイヤーで実践することが求められています。ESDは教育現場からSDGsにアプローチし、目標の実現を教育の力でサポートする活動とも言えるでしょう。

本の中の知識を覚えることだけが学習ではない

──2018年4月に「サステナビリティ教育研究センター」が設立されるまでには、どのような経緯があったのでしょうか。

池上氏:そもそもは成蹊学園が推進する学校間連携強化の活動がきっかけでした。

 成蹊学園では、かねてよりキャンパス内に小・中高・大学が集積する利点を活かした一貫教育に力を入れています。たとえば、成蹊小学校の英語教育を成蹊大学の学生たちがサポートする取り組みや、成蹊中学の3年生が成蹊大学のゼミを体験するプロジェクトなど、生徒たちが世代や学年を超えてつながる機会を多く提供しています。

 こうした学年や年齢を越えた動きは非常に重要です。通常の学年カットの教育(同年齢で構成された教育活動)では、「テストの点数がいい」「足が速い」などと、人間の評価基準は数値になる一部の能力に寄ってしまいます。

 しかし、年上のお兄さんお姉さんや、だいぶ年上の大学の先生、年下の児童、生徒がごちゃまぜになってコミュニケーションをとると、「子どもから慕われる面倒見のいい学生」「大学教授顔負けの宇宙博士のような小学生」など、学年カットの世界では見えてこなかった人の良いところ、味、才能、価値、能力が見えてきます。そうして子どもたち1人ひとりの魅力が開花していくのです。

 そんな中、メンバーの一人から「ユネスコ憲章」のことを教えられたのです。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の理念が定められた憲章の前文には「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と記されています。その考え方は、成蹊学園の掲げる教育理念とも一致しており、私はとても感銘を受けたのです。

 そこで、ユネスコ憲章の理念を核とするESDを成蹊学園の教育活動に取り入れれば、よりよいシナジーが生まれるのではないかと考えました。理事会にESDを実践するための拠点づくりを提言したのは、2017年10月のことです。その後、先行してESDに取り組む教育機関や専門家などの協力を得ながら準備を進め、センターの開設に至りました。

【次ページ】成蹊学園の理念とESDの共通点

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