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- 2019/11/12 掲載
医療ITがことごとく「スケーラビリティの限界」を迎える理由
なぜ医療ITに相互運用性が必要なのか?
IT革命が興ったとされる年から四半世紀が過ぎ、医療の現場にもようやくその波が訪れようとしている。医療ITの導入と活用自体は新しい話ではないが、古くから使われてきた医療ITは個別の医療機関やITベンダーの独自開発で、互換性のないものが多かった。しかし、近年の医療ITでは相互運用性を視野に入れた標準や規約への準拠が重要視されるようになっている。医療ITに相互運用性が必要な理由は多々あるが、主な理由は以下の通りである。
- 医療ITが大規模化、多機能化しており、全システムの開発を1社で担当することが難しくなったり、ITベンダー各社が一部機能に特化し始めたため、マルチベンダーによるシステム構築と、複数システムの相互接続が必要になった。
- 医療ITが複雑化したため、個別のサブシステムごとに導入時期や更新時期をずらす必要が出たため、サブシステム間を繋ぐ仕組みが必要になった。
- 医療ITの更新または入替時に旧システムからのデータ移行が必要になった。
- 医療サービスの品質向上のため、データの検索や分析に関するユーザ要求が高まってきた。
- 医療サービスの効率化を目的として、個別の病院で自己完結する医療から、地域で包括的にケアを行う医療にサービス形態がシフトしており、複数の医療機関を跨る情報共有が必要になった。
このような要求への対応は、一般に使用されるITシステムの基盤レベルでは比較的早い段階で整備されたが、医療業界向けのアプリケーションレベルでの対応は他業界に比較して決して早いほうではなかった。
医療ITシステムの全体像
ここから医療ITの相互運用方法を語りたいが、その前に、医療ITの全体像について簡単にまとめておきたい。一口に医療ITと言っても多くの構成要素が存在する。
たとえば電子カルテ(EMR/EHR: Electronic Medical Record/Electronic Health Record :注1)やレセコン(日本独自のシステムであるが、レセプト(診療報酬明細書)を作成するソフトウェア))などの医事会計システムを始め、LIS(Laboratory Information System)やRIS (Radiology Information System)などの部門システム、CPOE(Computerized Physician Order Entry)のようなオーダリングシステムが主要どころであるが、それ以外にもデジタル医療機器などのハードウェアも医療ITに分類される。
医療ITについて、グローバルに共通する一般的な分類は存在しない認識であるが、独断を交えて分類すると下図のようになると思われる。
電子カルテ(EMR/EHR)とは
医療ITの中核的な存在であり、患者の診療情報を一元的に管理するシステム。従来医師が診療の経過を記入していた紙のカルテを電子的なシステムに置き換え、一括してデータベースに記録することを目的としている。
日本では、2001年12月、e-Japan構想の一環として厚生労働省が策定した「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」において、「2006年度までに全国の400床以上の病院および全診療所の6割以上に電子カルテシステムの普及を図ること」が目標として掲げられたが、費用対効果が見えないことなどが理由で達成は困難となっている。
オーダーエントリーシステム(CPOE)とは
オーダーエントリーシステム(Computerized Physician Order Entry)は、医師や看護師が行う検査や処方などの指示(オーダー)を電子的に管理するシステム。旧来は医師が紙の伝票に指示を記入して、関係する部門に送り、各部門のシステムに入力するやり方が一般的だったが、医師が端末に指示を直接入力することにより、入力ミスの防止と効率化を行うことを目的としている。
PACSとは
PACS(Picture Archiving and Communication System)とは医療用画像管理システム。CR、CT、MRI、XA、DR、USといった医用画像撮影装置(モダリティ)で撮影した画像データを保管・管理する。技術の進展とコストの低減により、大量に撮影されるようになった医用画像を高速かつ効率的に管理できる仕組みとしてのPACSが強く求められるようになっている。
【次ページ】相互運用性を助ける標準と規約
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