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  • 2020/01/09 掲載

いまや全国1160カ所、年2,500億円を売り上げる「道の駅」 2020年新たなステージへ

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道路利用者へのサービス提供の場所から観光、物販の目的地へと進化してきた道の駅が、2020年からさらに機能を高めて地方創生の拠点を目指す。国土交通省の有識者会議が提言したもので、国交省は道の駅の第3ステージと位置づけ、本格的に拠点整備の支援に乗り出す方針。有識者会議のメンバーでもある跡見学園女子大観光コミュニティ学部の篠原靖准教授(地域活性化論)は「道の駅が地方へ向かう訪日外国人観光客を受け入れ、地域活性化のけん引役になるべきだ」と提言する。道の駅が誕生して四半世紀、一部の地域では提言を先取りした活動が始まっている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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大阪と名古屋の中間に位置し、年間40万人近い買い物客がある「お茶の京都みなみやましろ村」。近くではホテル大手の米マリオット・インターナショナルの協力でホテルが建設中だ
(写真:筆者撮影)


お茶に特化した南山城村、訪日客見据えてホテルを建設

 大阪市と名古屋市を結ぶJR関西本線。その中間に位置する京都府南山城村北大河原の月ヶ瀬口駅で、小高い丘の上にある駅舎から北側を見下ろすと、国道163号沿いに道の駅が見える。南山城村が設置した「お茶の京都みなみやましろ村」だ。

 南山城村は京都府最東南端に位置し、奈良県や三重県と境を接している。人口約2700人の過疎の村だが、宇治茶の産地として有名。2017年にオープンしたお茶の京都みなみやましろ村は、地域の特性を生かし、お茶に特化した道の駅になっている。

 中をのぞくと、土産物売り場に特産の宇治茶がずらり。食堂のメニューは茶そばに茶飯、抹茶ソフトクリーム、抹茶プリンとお茶づくしで、午後のティータイムには宇治茶が登場する。三重県亀山市からやってきた主婦(64)は「大阪へ出掛けたときはいつもここでお茶を買う」とにっこり笑った。

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「お茶の京都みなみやましろ村」の館内は特産のお茶がずらり。大勢の買い物客が品定めしている
(写真:筆者撮影)

 開業前は年間12万人の買い物客を目標にしていたが、1年目の2017年度は約41万人、2年目の2018年度は約38万人がやってきた。売上高も2017年度が約3億9,000万円、2018年度が約3億8,000万円と目標を約1億円上回っている。南山城村産業観光課は「お茶に特化した独自性と他で味わえない魅力的な商品が好調の要因でないか」と胸を張る。

 道の駅の北側では、南山城村と不動産大手の積水ハウスがホテル大手の米マリオット・インターナショナルの協力を得て、ホテルを建設している。訪日外国人観光客の増加を視野に入れ、道の駅を地域の観光拠点にしようというわけだ。開業予定は2020年11月ごろ。お茶の京都みなみやましろ村に新たな目玉施設が誕生する。



道の駅へ行政、観光、防災機能など集約

 道の駅は1993年に制度が創設された。当初は通過する道路利用者に食事やトイレなどのサービスを提供する場所(第1ステージ)と位置づけられたが、2013年からの第2ステージでは道の駅自体が目的地となることを目指し、土産物店や食堂だけでなく、さまざまな観光施設が併設されるようになった。

道の駅のステージ
第1ステージ 道路利用者へサービス提供
第2ステージ 道の駅を目的地に
第3ステージ 地域の観光・防災拠点に
(出典:篠原准教授報告資料から筆者作成)


 道の駅は2019年6月現在で全国に1160カ所が整備されている。年間の利用者は2015年で延べ約2億4000万人を数え、約2,500億円の売り上げがある。知名度が高い観光地を持たない地方自治体が整備するケースが多く、プラネタリウムや温泉、観光農園などの目玉施設を併設して激しい集客競争を繰り広げている。


 しかし、地方は今、急激な人口減少に直面している。地方創生はなかなか進まず、地方経済の疲弊も深刻だ。道の駅は観光拠点として一定の役割を果たすようになったものの、地元に十分な金を落としているところは一部にとどまっている。

 その一方で、急増する訪日外国人観光客は団体旅行から個人旅行に切り替え、大都市圏から地方へ足を延ばすことを視野に入れ始めている。このまたとない好機を生かすためには、道の駅が観光客受け入れ態勢を強化するとともに、これまで以上に魅力的な存在に生まれ変わる必要がある。

【次ページ】国交省は新たな施策を展開する方針、自治体に求められるビジネスモデル

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