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  • 2020/08/14

「高輪ゲートウェイ駅」はむしろ“今”が面白いワケ

連載:MaaS時代の明日の都市

JR東日本山手線で49年ぶりの新駅となる高輪ゲートウェイ駅が開業したのは2020年3月14日のこと。開業前は駅名決定のプロセスなどで何かと話題になったが、今はあの時の騒ぎがうそのように静かな日々を迎えている。周辺のまちづくりはまだ始まったばかり。なぜこのタイミングで開業したのか疑問に思う人もいるだろう。しかしウィズコロナの時代を迎えた今、ここは別の意味で注目すべき存在になりつつある。

モビリティジャーナリスト 森口 将之

モビリティジャーナリスト 森口 将之

1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社編集部を経て1993年にフリーランスジャーナリストとして独立。国内外の交通事情・都市事情を取材し、雑誌・テレビ、ラジオ・インターネット・講演などで発表。2011年には株式会社モビリシティを設立し、モビリティやまちづくりの問題解決のためのリサーチ、コンサルティングを担当する。著書に『パリ流環境社会への挑戦』『富山から拡がる交通革命』『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。

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高輪ゲートウェイ駅に今こそ注目すべき理由
(写真:アフロ)

話題に上らなくなった新駅

 高輪ゲートウェイ駅と聞いて多くの人は、駅名公募に対して6万件を超える応募があったにもかかわらず、130位に入った名前を選んだことから批判が集まったあの一件を思い出すだろう。


 しかも、開業した2020年3月は新型コロナウイルスの感染拡大が続いていた時期で、開業記念式典は中止され、関連イベントは延期されたこともあり、その後は一転して話題になることが少なくなった。

 新型コロナウイルスが、多くの日本人にとって最大の関心事であり続けたためもあるだろうが、開業後に何度か同駅を訪れると、利用者の数はまばらで、開業前後の騒ぎがうそのようである。それもそのはず、駅前にはこれといった建物がなく、反対側に抜ける道路もない。でもこの状況は、JR東日本にとっては織り込み済みである。

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駅舎のすぐ横には工事現場が広がる
(写真:筆者撮影)

この地に新駅が生まれた理由

 もともとこの地域には、JR東日本東海道本線などで使う電車や客車、機関車を収める車両基地があった。しかし、機関車や客車はブルートレインと呼ばれる寝台列車の廃止などで不要になり、東海道本線は東北本線や高崎線と直通運転する上野東京ラインが走り始めたことで、ここに車両基地を置く意味が薄れた。

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高輪ゲートウェイ駅が建設される前にあった車両基地(東京総合車両センター田町センター)。左手奥に品川駅が見える
(写真:筆者撮影)

 そこで上野東京ラインの車両は、すでに神奈川県や栃木県にある車両基地に集約し、跡地でまちづくりを行うことにした。その一環として新駅を計画したのだ。近くには都営地下鉄浅草線・京浜急行本線の泉岳寺駅があって羽田空港とダイレクトに結ばれているのに加え、隣の品川駅は2027年にリニア中央新幹線の始発駅になる予定でもあったので、発展が期待できるとのもくろみもあっただろう。

 JR東日本の資料によると、この地に駅を作り、まちづくりに乗り出すことを表明したのは2014年。翌年には基本概要を発表しており、「グローバルゲートウェイ品川」というコンセプトワードも掲げている。敷地を6つの区域に分け、高層ビルを核としたまちづくりを計画している内容だった。

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開発区域のイメージパース
(出典:JR東日本 報道発表資料)

 このコンセプトワードは駅名公募のときの資料にも紹介している。なぜ「高輪ゲートウェイ」という駅名になったか、ここで多くの人は理解できたはずだ。JR東日本は駅名公募の条件にこそしなかったが、ゲートウェイという言葉を入れたい気持ちが強く、公募で1位だった高輪と組み合わせたのではないかと想像している。

議論を呼んだ駅舎デザイン

 高輪ゲートウェイ駅はデザイン面でも話題になった。駅舎は日本を代表する建築家の隈 研吾氏がデザインした。駅舎の設計やデザインを建築家に依頼する例は近年増えてきており、JR東日本では常磐線日立駅が、この地で生まれた妹島 和世氏によってデザインされている。

 駅舎は、周辺に林立するであろうモダンな高層ビル群とは対照的な、木の質感を生かした建築で和の雰囲気が漂う。JR東日本では、駅名決定のプロセスで批判が続出したことに配慮したこともあり、江戸時代にはこの地に「高輪大木戸」という門が置かれ、にぎわいを見せていたという説明をしている。

 だが、この駅舎にも批判が出た。外観や改札口の駅名看板にJR東日本が一般的に使う書体ではなく、明朝体を使ったからだ。隈氏が手がけたデザインに合った書体を選んだとのことだが、視覚障害者にとって読みにくいという意見も出た。

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議論を呼んだ駅名看板のデザイン
(写真:筆者撮影)

 明朝体を用いたのは2カ所だけで、ホームの駅名標などはJR東日本の一般的な書体を使っている。個人的には、文字の識別性がさほど重要ではない駅舎外観以外はその書体で統一すれば良かったのではないかと思っているし、数か月後に訪れたらこっそり書き換えられているかもしれないとも思う。

 駅舎内部は折り紙をモチーフにした大屋根、ホームに到着する電車が見える吹き抜け、周辺が見渡せる大きなガラスなどが特徴になっている。もっとも吹き抜けやガラス張りは他の駅でも採用しており、熱反射率が高く光を透過する膜屋根の採用による電力量の削減、東北地方で取れた木材を使うことによる環境配慮など、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みのほうに好感を抱いた。

 それ以上に斬新だと思ったのは、案内や警備、清掃にロボットを導入するとともに、無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」を設置したことだ。後者は、大宮駅・赤羽駅で実証実験の経験はあるものの、常設店舗は初になる。さらに、自動改札機は新宿駅南口ともども、タッチの部分を斜めに傾けて使い勝手に配慮した新型が導入された。こちらはQRコードによる実証実験にも対応した作りになっている。

【次ページ】なぜ今こそ高輪ゲートウェイ駅に注目すべきなのか

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