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  • 2020/08/27

石炭火力“縮小”ようやく議論スタートも、脱石炭には程遠いこれだけの理由

二酸化炭素の排出が多い非効率な石炭火力発電所の縮小に向けた議論が、経済産業省の有識者会議で始まった。全国100基程度の石炭火力が休廃止の対象となる見通しで、年内にも意見をまとめる。小泉進次郎環境相が2月、石炭火力のインフラ輸出要件見直しを訴えたのをきっかけに、経産省の方針に変化の兆しが見えると評価する声もあるが、環境団体からは「石炭火力を新設し、今後も稼働を継続する内容で、脱石炭に程遠い石炭火力の長期延命策だ」「石炭火力温存や新設の口実に使う意図が見える」などと厳しい見方が出ている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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愛媛県西条市喜多川の四国電力西条発電所。2号機が経産省の非効率な石炭火力に含まれている
(写真:筆者撮影)

西条発電所2号機、四国電力は存続希望

 人口約11万人、愛媛県東予地方に位置する西条市。本陣川河口を中心とした海岸沿いに埋め立て地が広がり、臨海工業地帯を形成している。その一角の西条市喜多川に四国電力西条発電所がある。

 西条発電所は昭和の高度経済成長期に急増した電力需要を賄うために整備された。もとは主に石油を使っていたが、燃料を石炭に変更、環境対策で木質バイオマスも混焼している。現在は1、2号機合わせて約40万6000キロワットの発電能力を持つ。

 運転開始は1号機が1965年、2号機が1970年。ともに亜臨界方式と呼ばれる旧式施設で、1号機は2019年から高効率の超々臨界圧方式に切り替えるため、建て替えを進めている。運転開始は2023年6月の予定。このため、休廃止の検討対象には2号機がなる。


 四国電力は2018年度の電源構成で石炭火力が43%を占める。しかも、愛媛県伊方町の伊方原子力発電所3号機が稼働を停止しているため、代替発電となる石炭火力の比重が高まっている。

 2020年4~6月期の連結決算では、純利益が前年同月比89%減の8億4,600万円に落ち込んだ。新型コロナウイルスの影響で販売が伸びなかったためだが、火力発電の燃料代がかさんだことも一因に挙げられている。

 長井啓介社長は記者会見で「(石炭火力は)経済性と供給安定性に優れ、引き続き活用したい」と述べた。ただ、有識者会議の議論によっては休廃止に追い込まれる可能性を否定できない。今後、議論の状況を見ながら、慎重な検討を余儀なくされそうだ。

経産省内部から「従来の方針強調しただけ」との声も

 「高効率の石炭火力といっても、他の化石燃料に比べて二酸化炭素排出量が大きい。火力発電全体で考えていくべきでないか」「沖縄県や北海道、製鉄業界などが抱える特殊事情も考慮する必要がある」。オンラインで開催された経産省有識者会議の会合では、出席した学識経験者からさまざまな意見が出た。

 有識者会議はこれまで電力政策を議論してきたが、非効率な石炭火力の縮小に向けて本格的に意見を交わすのは今回が初めて。この日は具体策の検討に当たって考慮すべき課題を経産省が列挙し、委員から今後の検討の方向性に対する意見が出るにとどまった。

電力大手、電源開発が持つ非効率な石炭火力
非効率な石炭火力の設備容量
(万kW)
石炭火力全体の設備容量(万kW) 非効率石炭火力が石炭火力全体に占める割合(%) 総設備容量
(万kW)
非効率石炭火力が全発電容量に占める割合(%)
北海道 155 225 68.9 838 18.5
東北 290 623 46.5 1902 15.2
JERA 313 915 34.2 9464 3.3
北陸 100 290 34.5 824 12.1
関西 0 180 0 3179 0
中国 159 259 61.3 1153 13.8
四国 41 111 36.7 543 7.5
九州 176 346 50.9 1693 10.4
沖縄 75 75 100 216 34.8
電源開発 351 906 38.7 1637 21.4
(出典:経済産業省有識者会議提出資料から筆者作成)

 非効率な石炭火力の休廃止検討は7月、梶山弘志経済産業相が記者会見で打ち上げた。休廃止は2030年までに段階的に進める方針。電力大手などが持つ国内の石炭火力約140基のうち、設備が旧式で二酸化炭素を多く排出する非効率な施設は114基。このうちの100基程度が対象になるとみられる。

 梶山経産相は「2030年に向けて安定供給を確保しつつ、非効率な石炭火力の早期退出を促す仕組みの創設や再生可能エネルギーの導入を加速させる基幹送電線利用ルールの抜本見直しなどを検討したい」と述べている。

 日本は欧州諸国やカナダなどが脱石炭に動く中、石炭火力推進の姿勢を崩さなかった。石炭が特定地域に偏在していないことから、エネルギーの安定確保に効果的なうえ、安い発電燃料を求める電力大手や経済界に配慮したためだ。

 しかも、日本経済が国際社会で地盤沈下を続ける中、石炭火力が有望な商品になるとして途上国に輸出してきた。このため、気候変動枠組み条約締約国会議が開かれるたびに、欧州諸国やカナダ、環境団体などから批判を浴びてきた。

【次ページ】設備容量では約900万キロワット減るだけ

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