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  • 2020/10/12

日立の組織戦略、ジョブ型人材管理の仕組みは?50人だけ「選抜エリートプログラム」も

前回、日立製作所が構造改革によってV字回復を達成したことについて、CHROの中畑英信氏に話を聞いた。成長か衰退かの戦略的転換点にいるという認識に立ち、グローバルを視野に入れた日立の取り組みは、日本的経営の代表的企業というイメージと実態はかなりかけ離れたものになりつつある。それは、今回紹介する次代の舵取りを担うリーダープログラムのシビアな運用にも表れている。全社的にはジョブ型への転換を図るべく、社員のスキルを可視化する基盤も導入した。後編では、成長軌道を確立するために日立が実施する構造改革について、組織面に焦点を当てて語ってもらった。

友永 慎哉

友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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日立製作所 代表執行役 執行役専務
コーポレートコミュニケーション・オーディット責任者
兼 CHRO
中畑 英信 氏
※本記事は、ワークデイ主催「Workday Elevate Digital Experience」での講演内容などをもとに再構成したものです。


 前回、日立製作所が10年あまり前に巨額の赤字を計上し、その後構造改革を実行することでV字回復を達成したことについて、日立製作所代表執行役 執行役専務コーポレートコミュニケーション・オーディット責任者兼 CHROの中畑英信氏に話を聞いた。

 同社は社会イノベーション事業のグローバルリーダーになるという目標に向けて、現在も構造改革を実施している。成長と衰退のどちらに振れるのかについて、「戦略転換点にいる」という同社の取り組みについて、後編(本稿)ではその組織改革の具体的な施策に着目する。中畑氏が「人財戦略が最も重要な取り組み」と話すように、未来を託す経営層を随時選出し、入れ替える取り組みや、全社30万人のスキルを可視化する基盤の導入など、ドラスティックな変革を仕掛けている。


優秀層を選抜するエリートプログラムを実施

 社会イノベーション事業とグローバル事業の推進を掲げる日立は、製品や情報システム、IoTを活用したサービスの提供によって社会課題を解決することを目指している。また、国をまたがる事業の推進、プロジェクトの実行も挙げており、それを実現する組織体制を確立していく考えだ。

 具体的には、国籍や性別を問わず各地の市場を知っていること、国や場所をまたがるワンチームとして業務を遂行すること、解決策をプロアクティブに考える文化を持つ組織を目指すという。

 「従来のように、国内市場を中心に、日本人・男性正社員が同じ場所や時間を共有する働き方ではなくなる」と中畑氏は話す。このあたりは、前編で紹介した鉄道事業の取り組みがモデルケースになっていることがわかる。

 特に強化しているのが、経営リーダーの育成である。社会にとっての価値、産業構造や事業構造の変化を見極め、市場や顧客、競合他社の動きを踏まえて適切なタイミングで経営判断できるリーダーを全世界から人選し、育成していく考えだ。外部人材も積極的に登用していく。そのために、変革を実践し、業績を上げている400人の中から、若手優秀層50人を「Future50」として集め、集中的に育成しているのである。

 プログラム執行側は、毎年30回開催する人財委員会で議論し、400人を選抜、特別アサインメントとして、全社プロジェクトへの参画や国際関係機関への派遣など将来を見越した抜てきなどを交えて育成しながら、リーダー候補50人を選抜する。また、指名委員会も設けており、社長や次期、あるいはその次のCEO候補者と議論や個別面談を実施している。

 全体方針として、若手、女性、外国人の起用を進めている。実際に2017年度は候補者367人のうち、44歳以下は50%、外国人は13%、女性は10%だったのに対し、2019年度は393人の候補者のうち、同55%、14%、15%といずれの数値も比率が高まっている。TOEICの平均点も2017年度の797点から順に、2018年度は818点、2019年度は833点と着実に上がってきている。

 特に鍵を握る年代は35歳から45歳のレンジだ。「海外だと40代で事業部長などを経験している者も少なくないが、日本ではこの年代は課長か部長クラスにとどまっているケースがほとんど。早期に高いポジションに就き、自ら考え、行動するしかない状況に置く仕組みを導入しようとしている」という。

 Future50について今後、特に経営層へのアサイン比率を増やす予定という。計画では2020年10月時点で12%、2022年10月時点では特別なアサインメント全体の24%を経営層へ配置にする予定だ。

 具体的な取り組みとして、2019年4月に日立グローバルライフソリューションズ社長として、46歳の谷口潤氏を選出した事例がある。

ジョブ型人材管理実現に向けスキル共有基盤を導入

 エリート育成の一方で、全社的な組織改革にも力を入れているという。象徴的な取り組みが、仕事に人を割り当てるジョブ型人材管理への転換である。多様な人材の活用、人材の流動性確保、国や場所、時間にとらわれない働き方を実践するためには、ジョブ型に変化せざるを得ないという判断だ。

 従来のメンバーシップ型は、職務を限定せずに人に仕事を割り当てる方法だった。新卒一括採用、年功序列などいわゆる日本型雇用システムがこれに当たるが、グローバルを前提にした今後の人事制度としては限界が見えてきている。

 ジョブ型を推進する際に最も重要なことは、「仕事に人を割り当てる」上で、人がそれぞれどんなスキルを持っているのかを体系的に把握することにある。日立はここで、30万人の人材に関する情報をリアルタイムで統合し、可視化する人財マネジメント統合プラットフォームを導入している。

 これは、点在する複数のデータベースや紙の書類、人の頭の中、人事部門などにそれぞれ断片的に存在する人材に関する情報を一元的に管理する仕組みだ。

【次ページ】スキルは自ら入力、評価や報酬などの情報を一元的に集約

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