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  • 2020/10/21

「富岳」「Zoom」「bellFace」らが受賞、見えてきたITの「不易と流行」 篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第127回)

篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第127回)

情報通信技術(ICT)市場の発展と拡大に寄与することを目的に創設されたMM総研大賞の授賞式が2020年9月に開催された。毎年の受賞対象は、社会の変化を敏感に映し出すと同時にICT市場に通底する潮流も描き出している。17回目となる今年は、8年ぶりに世界一を奪還したスーパーコンピューターの「富岳」が大賞に輝いたほか、Web会議システムの「Zoom」、人の動きを見える化した「モバイル空間統計」、オンライン営業システムの「bellFace」など、コロナ禍における社会的課題の解決に貢献する16の製品とサービスが表彰された。今回はMM総研大賞から読み取れるICT市場の「不易と流行」を考えてみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
■研究室のホームページはこちら■

インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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2020年のMM総研大賞では、「富岳」が大賞に輝いたほか、「Zoom」や「モバイル空間統計」、「bellFace」など、コロナ禍の課題解決に貢献した製品・サービスが表彰された。MM総研大賞2020から読み取れるICT市場の傾向とは
(Photo/Getty Images)
 

第17回MM総研大賞とは

連載一覧
 2020年9月17日にMM総研大賞2020(審査委員長:村井純慶応義塾大学教授)の授賞式が都内で開催された。今年17回目を迎えるこの賞は、情報通信技術(ICT)市場の発展と拡大に寄与することを目的にMM総研が2004年に創設したものだ。

 こうした継続性のある表彰制度は、過去の受賞内容を辿ることで、その時々に何が社会の関心を集め、話題となったかを跡付ける貴重な情報を提供してくれる。同時に、この分野に通底する一貫した潮流を読み取ることも可能だ。まさに「不易と流行」の宝庫と言える。

 創設当初は、デジタルカメラやDVDレコーダーなどいわゆる「情報家電」が主役であったが、近年では、MaaSやクラウドなどネットワーク関連の「サービス」が主役に躍り出ている。モノからコトへと市場の重心がシフトしている様子が窺える。

 かつてはマルチメディアを意味していたMM総研のアルファベット2文字も、現在の含意は「モバイル&モビリティ」に再定義されているようだ。

 今年、最高峰のMM総研大賞に選ばれたのは、8年ぶりに世界一を奪還し、初の同時4冠も達成したスーパーコンピューターの「富岳」だ。さらに、スマートソリューション部門最優秀賞、ものづくり優秀賞、話題賞など合計16の製品とサービスが表彰された。

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MM総研大賞の創設当初は、デジタルカメラやDVDレコーダーなどいわゆる「情報家電」が主役であったが、近年はMaaSやクラウドなどネットワーク関連の「サービス」が主役となってきた
(Photo/Getty Images)
 

コロナ禍で課題解決力を発揮した製品・サービス群

 今年の特徴は、Web会議システムの「Zoom」、人数を見える化した「モバイル空間統計」、オンライン営業システムの「bellFace」など、コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う社会の変容に深くかかわる製品とサービスが目立ったことだ。

 コロナ禍で在宅勤務が奨励される中、ユーザーのコミュニケーションに寄与したこと(Zoom)、1時間ごとの人口動態を24時間365日把握することで感染症対策に活用された課題解決力(モバイル空間統計)、インストール不要でオフィスから全国の企業へ5秒で接続できる営業システムの利便性と信頼性(bellFace)などが高く評価された。

 大賞に選ばれた「富岳」は、感染拡大防止のキーワードとなった「3密」状態で、飛沫がどのように広がるか、その様子のシミュレーションでも威力を発揮した。メディアを通じて広く認知されたシミュレーション映像のインパクトは大きかった。

 猛暑が続いた夏場でもマスクの着用が定着したのは、多くの人がこの映像を共有し、視覚的、直感的に理解できたことが少なからず影響したと考えられる。世界一のスパコンは、コロナウィルス感染症の拡大防止という身近な課題解決にも貢献しているのだ。

受賞製品・サービスに通底する3つの「不易」とは

 上述のとおり、今年のMM総研大賞には、コロナ禍の世相が色濃く反映されているが、一方で、一貫した「不易」の潮流も読み取ることが出来る。それを示すのが、ICTの分野に通底する3つのキーワードだ。

 第1に「ジェネラル・パーパス・テクノロジー(GPT:General Purpose Technology)」、第2に「ユーザー・イノベーション(UI)」、第3に「エッセンシャル・テクノロジー(ET)」だ。いずれも、コロナ禍にあって改めて鮮明に照らし出された。

 ICTは、あらゆる分野で業種横断的に活用される多目的の汎用技術(GPT)だ。この点は、国際社会でも共通認識となっており(連載の53回54回参照)、産業のみならず、教育、医療、行政など広範な領域に活用されて、世界の発展に寄与すると位置付けられている。

 コロナ禍にあって、テレワーク、遠隔医療、オンライン授業、行政手続きの電子申請など、ICTは広範な領域の課題解決に貢献するGPTだと再認識させられた。その結果、創出されるのが利用者の創意工夫で生じる思いがけない「イノベーション=ユーザー・イノベーション(UT)」だ。大賞に輝いたスパコンの「富岳」にもこれが当てはまる。

「富岳」がコロナ禍で活躍できた経緯

 スパコンのシミュレーションと言えば、台風の進路や宇宙探査などが連想される。筆者が審査員の1人として授賞式に出席した際、「3密状態における『飛沫』のシミュレーション」について開発者に尋ねたところ、次のような興味深いエピソードを聞くことが出来た。

 スパコンの開発陣は、燃費向上に役立つべく、エンジン内における燃料の「噴霧」をシミュレーションする際に利用されると想定していたようだ。ところが、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、思いがけず会話による「飛沫」のシミュレーションに応用されたとの話だった。

 まさに開発側が当初想定していなかった用途で技術が活用され、社会的課題の解決につながったわけだ。この点は、次世代ネットワークサービス部門の最優秀賞に選ばれた「モバイル空間統計」や話題賞の「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」にも言えそうだ。

【次ページ】感染防止に貢献した「モバイル空間統計」とは何か

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