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  • 2020/12/15 掲載

令和2年版「情報通信白書」まとめ。500ページ超で示された「Beyond 5G」への見通し

連載:第4次産業革命のビジネス実務論

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総務省は2020年12月、最新のICT技術/デジタル技術の動向を毎年取りまとめている「情報通信白書2020」を公開しました。今回の情報通信白書の特集テーマは「5Gが促すデジタル変革と新たな日常の構築」です。本白書では新型コロナウイルス感染症がもたらすニューノーマルを見据え、5Gなどの技術がもたらす影響について分析しつつ、「Beyond 5G」に向けた動向にも言及しています。今回は500ページ超に及ぶ「情報通信白書2020」から注目すべきポイントを取り上げます。

執筆:東芝 福本 勲

執筆:東芝 福本 勲

東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス 代表
中小企業診断士、PMP(Project Management Professional)
1990年3月 早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRM、インダストリアルIoTなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長をつとめる。主な著書に『デジタル・プラットフォーム解体新書』(共著:近代科学社)、『デジタルファースト・ソサエティ』(共著:日刊工業新聞社)、『製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略』(近代科学社Digital)がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。また、企業のデジタル化(DX)の支援/推進を行うコアコンセプト・テクノロジーなどのアドバイザーをつとめている。

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500P超の情報通信白書、押さえるべきポイントは
(Photo/Getty Images)


新型コロナがもたらすデジタル化の波

 情報通信白書2020では、新型コロナの感染拡大により、ICT技術/デジタル技術が国民生活や経済活動の維持にますます不可欠となり、これまでデジタル化が進まなかった領域にもデジタル化が波及していくとの予測が述べられています。

 新型コロナ前とは異なる新常態(ニューノーマル)への不可逆的な変化の中で、デジタル技術を最大限に活用することにより、個人・産業・社会といったあらゆるレベルで変革がもたらされ、それが新たな価値の創造へとつながっていきます。

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Before CoronaとWith Corona
(出典:総務省「情報通信白書2020」)


新型コロナがもたらす生活様式の変化

 新型コロナによる、新たな生活様式への移行が求められる中で、ICT技術/デジタル技術を用いた、非対面で非接触の生活様式への変化が進んでいます。新型コロナ対策として、早い企業は2020年1月から在宅勤務(テレワーク)を開始しており、その普及率は3月から4月にかけて大きく向上しています。

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3月と4月のテレワーク実施率
(出典:総務省「情報通信白書2020」図表2-3-2-5)

 一方、テレワークを実施した人のうち、実施するうえで何らかの問題があったとした人の割合が72.2%となっており、その中では「会社でないと閲覧・参照できない資料やデータなどがあった」が26.8%と最も多くなっています。今後は、緊急避難的な対応ではなく、ペーパーレス化やセキュリティ対策、電子契約の採用などの環境整備を伴うテレワーク推進が求められます。

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テレワーク(在宅勤務に限る)を実施してみて問題があったこと
(出典:総務省「情報通信白書2020」図表2-3-2-4)

 テレワークの拡大以外にも、行政とシビックテック(技術を活用して市民が中心となって社会課題を解決しようとする活動)・民間企業などとの連携による人との接触リスクの可視化、学校での遠隔授業の拡大、遠隔医療の要件緩和などICT技術/デジタル技術を用いた取り組みが拡大しています。

 一方で、誤情報やフェイクニュースの流布、通信トラフィックの増加、セキュリティリスクへの対応 、公衆衛生とパーソナルデータ活用のバランスなどの課題が顕在化してきており、その解決の取り組みを推進していく必要があります。


人口減少・少子高齢化対策として求められる技術活用

 日本は課題先進国と称されるように、諸外国に先んじて人口減少・少子高齢化が進んでいます。人口減少・少子高齢化による生産年齢人口の減少に対応するためには、労働者1人当たりの生産性(労働生産性)の向上が必要です。

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世界の高齢化率の推移
(出典:総務省「情報通信白書2020」図表2-1-1-1)
 労働生産性を向上させるためには、提供するモノやコトの付加価値を上げるか、付加価値を上げずに業務効率化をはかり、労働投入量を減少させるかのどちらかが必要です。

 また地方都市における生活の質(QoL:Quality of Life)を向上することができれば、地方から都市部への人口流出を防ぎ、地域の活力を維持創出することにも寄与することが期待できます。

 平成27年版情報通信白書では、地方創生を実現していく上でのICTの役割として、(1)ICTによる雇用の質の向上、(2)ICTによる地域企業の商圏拡大、(3)ICTによる交流人口の拡大、(4)ICTによる新たなワークスタイルの実現の4つの可能性を挙げていました。これらを踏まえた上でICT技術/デジタル技術が社会課題解決に果たす役割として期待されるものを改めて整理し、本白書では以下の4点に再定義しています。

●労働の質の向上
 RPAなどの導入で定型作業を自動化し、業務の効率化を進めることで、人は人にしかできない生産的な仕事に注力できるようになる。

●市場の拡大
 時間や場所の制約を超えて市場が拡大するとともに、マッチングコストの低下により規模の制約を超えて多品種少量生産でも市場が成立するようになる。

●関係人口の拡大
 地域づくりの担い手として地域外の人材を取り込むための情報発信や、関係づくりの取り組みが拡大する。(「関係人口」とは、移住した「定住人口」でも観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す。)

●就労機会の拡大
 テレワークやクラウドソーシング、アバター導入など、場所にとらわれない働き方が可能になったことで、育児・介護・障害などこれまでさまざまな事情により就労が困難であった人が就労機会を得られるようになる。

 このように、社会課題に対応するためにICT技術/デジタル技術を導入・活用することで、雇用や生活の質、労働生産性の向上を積極的に進めて行くことが求められています。

【次ページ】情報通信白書2020で示された5Gの見通し

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