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  • 2021/02/19 掲載

Andy Jassy(アンディ・ジェシー)氏とはいかなる人物か? 新アマゾンCEOに直接対面した筆者が見た横顔

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米アマゾンは2月2日、創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾス氏がCEOを退任すると発表した。2021年第3四半期から、現在Amazon Web Services(AWS)を指揮するAndy Jassy(アンディ・ジェシー)氏が後任としてアマゾンを指揮することになる。世界を席巻するカリスマの退任であることはもちろん、27年という企業の歴史の中で初のCEO交代ということで、特別な意味を持つ。ここからの興味は、ジェシー氏がどのようなかじ取りを見せるのかということと、DXへの機運が高まる日本市場への影響などへと移ってくる。ベゾス氏の今後の役割にも目が離せない。アマゾン社員の反応などの情報も含めて、アマゾンのCEO交代劇について解説する。

執筆:友永 慎哉

執筆:友永 慎哉

製造業向け基幹系システムの開発を経験後、企業ITの編集、ライター業に従事。ファイナンス、サプライチェーンなど、企業経営の知識を軸にした執筆に強みを持つ。インダストリー4.0など新たな技術による製造業の世界的な変革や、Systems of Records(SoR)からSystems of Engagement(SoE)への移行、情報システムのクラウドシフトなどに注目する。GAFAなど巨大IT企業が金融、流通小売り、サービスといった既存の枠組みを塗り替えるなど、テクノロジーが主導する産業の変化について情報を収集・発信している。

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アマゾンの新CEOに就任するアンディ・ジェシー氏
(写真:ZUMA Press/アフロ)

キーワードは「アマゾンの再発明」

 今回、ベゾス氏がジェシー氏を後継者に選んだ理由はほかでもない。AWSをアマゾン全体の63%という圧倒的な利益を生み出す企業へと押し上げた成果を評価したものである。

 ジェシー氏は、ベゾス氏のビジネス哲学を実践し、もともとはEC事業を運営する社内システムだったクラウドをAWSとして切り出した。20年近くを経て、いまや年間500億ドルのビジネスに育てた。

 アマゾンがEコマースの巨人、AWSはITインフラの巨人と分けて考えがちであるが、実態はAWSが生み出す利益を、小売り、ロジスティックス、ストリーミング、人工知能(AI)などを用いたアマゾンのビジネスの革新につなげるという図式になっている。

 今回は、切っても切れないこの関係が、アマゾンの公式の組織図へと反映された結果と言える。ご存じの通りアマゾンはオンランイン書店から始まり、世界最大のEC、動画エンターテインメントを含むコンテンツビジネス、新聞社の経営に至るまで、絶え間ない発展を遂げてきた。

 ジェシー氏はこうした経緯を、AWSの年次イベント「re:Invent」において、イベント名のままの「再発明」という言葉で説明している。2020年12月のオンライン開催では「長期間ビジネスを持続させることは非常に難しく、実現するためには何度も自分自身を再発明する必要がある」と強調した。

 ジェシー氏による再発明の手腕を、アマゾン全体へと展開することで、変化の激しいグローバル市場でのアマゾンの存在感を確実に高める狙いがある。

 加えて、2021年7月にエグゼクティブチェアマンに就任するベゾス氏は今後、「Day 1 Fund(ホームレスの家族の支援と教育分野を支援する慈善基金)、Bezos Earth Fund(地球温暖化対策を目的とするベゾス地球基金)、Blue Origin(航空宇宙企業)、The Washington Post、そして他の情熱に注力する」と従業員向けのメールで話し、ブログでも公表している。

 「引退ではない」と強調していることからも、今後も一歩引いたところから経営にかかわっていくことが分かる。

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ベゾス氏が2021年2月2日にアマゾンの従業員向けに出したレター

 ジェシー氏に経営を任せる一方で、たとえば有力なライバルが登場すれば買収して取り込んでしまうなど、攻めと守りの両面で今後もベゾス氏が、外へのにらみを利かせるかもしれない。


ジェシー氏の横顔

 文句のつけどころない業績は理解したが、新CEOとなるジェシー氏はどんな人物なのか。就任が公表されて以降、米系メディアもこぞってこの話題を取り上げている。

 ハーバード大でMBAを取得後、1997年のアマゾン入社以来、AWSをゼロから立ち上げ、2016年のAWSのCEOに就任、ベゾス氏の「影のアドバイザー」として活躍してきた。

 ベゾス氏はジェシー氏を「傑出したリーダーになる」と高く評価しているといったところは、共通した報道内容である。

 CNNは2020年アマゾンの委任勧誘状を引用し、2019年のジェシー氏の総報酬額が3488万ドルで、ベゾス氏の基本給である170万ドルを大きく上回ったと報じた。Business Insiderは、米マイクロソフトがかつてのCEOだったスティーブ・バルマー氏の後任として打診したこと、また、UberがCEOへの就任をジェシー氏に要請したとのうわさ話を紹介している。

 また、ツイートからもジェシー氏の人柄が見えてくる。2020年9月には、警察官による黒人救急救命士の銃撃事件についてツイートするなど、Black Lives Matter(人種差別抗議運動)やLGBT支援について、公に明確な意見を表明している。

 一方で、2019年に、アマゾンが「欠陥のあるアルゴリズム」(肌の色が濃い女性の顔認識エラーが高いなど)を含む顔認識技術を警察や政府に販売するとの決定を、ジェシー氏が擁護したとの一件を、The Vergeは指摘している。その後、アマゾンは2020年6月に、この技術を法執行にかかわる機関に販売することを自粛すると発表している。

 実はこのコラムを書いている筆者自身が、以前上級副社長時のジェシー氏来日の際、個別インタビューしたことがあった。物静かで理知的な人といった印象を持っている。東日本大震災から間もない時期で、日本では特にクラウドシフトは限定的との見方が強かった中、深い技術知識で丁寧に質問に答えてもらった。「思った以上に速くクラウド化は進みそうだ」と感じた記憶がある。

【次ページ】DXレポート2から眺めるJassy’s アマゾン

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