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  • 2021/08/30 掲載

なぜナイキはNo.1になれたのか?「勝利」を追求した創業者に学ぶ「自分を鼓舞する力」

連載:企業立志伝

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コロナ禍での開催となった東京五輪2020、さまざまな問題があったものの、現在開催中のパラリンピックでも多くのアスリートたちが活躍する姿を見せてくれています。スポーツの世界において、アスリートとともに激しい戦いを繰り広げているのがスポーツ用品メーカーです。その中でも圧倒的存在感を放つナイキは、1人のランナーの「とにかく負けたくない」という思いから始まりました。スポーツ界に革命を起こしたナイキの創業者、フィル・ナイト氏の人生から「戦い続ける理由」と「自らを鼓舞する力」を学びます。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ (ビジネス+IT BOOKS)
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日

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ナイキ創業者フィル・ナイト氏のブレない軸とは
(Photo/Drew Angerer/Getty Images)


スポーツに打ち込んだ学生時代

 フィル・ナイト氏は1938年、オレゴン州ポートランドで生まれています。父親は『オレゴン・ジャーナル』という新聞を発行しており、ナイト氏によると堅実な仕事のおかげでポートランド郊外に広々とした白い邸宅を購入し、何不自由ない暮らしができていたといいます。

 陸上競技とクロスカントリーに打ち込んでいたナイト氏は、のちにオリンピック代表チームのコーチも務めた名指導者ビル・バウワーマン氏の指導を受けるため、オレゴン大学に進み陸上部に入部します。

 ナイト氏は4マイル・リレーチームのメンバーになったことがありますが、優秀なランナーの多い陸上部では「やる気と粘り強さだけを身上とするその他大勢のランナーの1人に過ぎなかった」(『ジャスト・ドゥ・イット』p77)ようです。

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(Photo/Getty Images)

スタンフォードの課題で日本メーカーに着目

 オレゴン大学でジャーナリズムについて学んでいたナイト氏は、将来のことを考えてスタンフォード大学ビジネススクールの経営管理課程に進みます。自分の得意な分野で小規模ビジネスを始めることを想定したレポートを書くことになったナイト氏は、自分がよく知る競技用の運動靴市場についてまとめることにしました。

 当時、アメリカではドイツのアディダスのランニングシューズが高いシェアを誇っていましたが、その品質は決して良いとは言えなかったうえに、価格も法外でした。ナイト氏自身もアディダスの靴を履いていましたが、レポートをまとめるにあたり、その牙城を崩すにはどうすればいいかを考えたのです。

 ヒントは、『オレゴン・ジャーナル』に掲載されていた「日本製の安価なニコンの新作カメラが、高価で伝統のあるドイツ製カメラのライカにとって代わるだろうか」(『ジャスト・ドゥ・イット』p80)というカメラマンたちの議論でした。ナイト氏はレポートでこう結論付けます。

「日本製品は粗悪だと言われているが、低価格指向の日本メーカーが高品質のランニングシューズをつくれるなら、価格による差別化で日本が新たなマーケットを開くことになるであろう」(『ジャスト・ドゥ・イット』p80)

 そしてアメリカ市場でそれができるとしたら、ランナーが何を求めているかをよく知る自分しかいないというのがナイト氏の結論でした。クラスメートのみんなはそのアイデアに関心を寄せることはありませんでしたが、教授はAの評価をくれました。


「馬鹿げている」と言わせておけ、走り続けろ

 本来ならこのアイデアはそこで終わり、ナイト氏はMBAを取得したエリートとして社会に出るはずでしたが、その後も毎朝走りながら「日本に行き、靴会社を見つけて、自分のアイデアを売り込もう」と考えるようになります。1962年のある日、ナイト氏は自分にこう言い聞かせました。

「馬鹿げたアイデアだと言いたい連中には、そう言わせておけ……走り続けろ。立ち止まるな。目標に到達するまで、止まることなど考えるな。“そこ”がどこにあるのかも考えるな。何が起ころうと立ち止まるな」(『SHOE DOG』p8)

 ナイト氏は日本行くことを決意、その途中でさまざまな国を旅しようと考えます。

【次ページ】オニツカ訪問、とっさに思いついた「ブルーリボンスポーツ」

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