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  • 2022/02/09 掲載

製造業の未来「メタモビリティ」「メタファクトリー」とは?現代自動車が明かした未来

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1月初旬に米ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー見本市「CES」で韓国の現代自動車が行った記者会見は、自動車産業の枠を超えたユニークな内容だった。「メタモビリティ」という新しい概念を掲げ、ロボットを組み込んだ新たな交通エコシステムを築くという。また、ボストンダイナミクスやマイクロソフトとの提携により、ロボットとAI、VRプラットフォームを使って「メタファクトリー」と呼ばれるメタバース技術を用いた生産体制の確立も目指す。製造業全体に大きな影響を与え得る同社の取り組みの概要とその可能性をお伝えしよう。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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現代自動車が描く「メタモビリティ」「メタファクトリー」とは何か
(出典:現代自動車より引用)


動かないモノが動き出す「メタモビリティ」の世界

 現代自動車が掲げているのは「Expanding Human Reach(人間の可能性を広げる)」というテーマだ。これをモビリティとつなげ、「制限なき移動の自由」という意味で「メタモビリティ」という概念が提唱された。

 同社CEO、チョン・ウィソン 氏は、メタモビリティとは「人間の移動をロボティクスとメタバースプラットフォームを使い、リアルワールドとつなげながら無限に広げていくこと」と説明した。同時に、今後は「MoT(Mobility of Things)」というコンセプトが生まれ、従来は動かないと考えられていたモノがロボティクス技術を用いて動くモノへと変貌するとも語った。

 同社の考え方は、スマートデバイス(車、UAM=アーバン・エア・モビリティ)を使ってメタバースプラットフォームにアクセスし、そこにAI、自動運転、ロボティクスなどの技術を用いてリアルワールドとバーチャルワールドの垣根をなくすというものだ。

 では、具体的にメタモビリティとはどのようなものなのか。同社バイスプレジデントでありロボティクス部門トップであるヒョン・ドンジン氏は、2021年のボストンダイナミクス獲得によりますます精度を増したロボティクス技術とモビリティの融合についてプレゼンテーションを行った。

 そこでは、「P&D(プラグ・アンド・ドライブ)」と呼ばれる自律走行型モジュールとさまざまなデバイスを組み合わせ、MoTを実現するプロセスが語られた。たとえば、車いすにP&Dを組み合わせ、自宅から小型のポッドで外出する。街では小型ポッドをそのまま収容する公共交通機関のバスが走行し、目的地まで移動できる。

現代自動車が公開しているコンセプト動画。女性をスマートフォンのようなデバイスを操作するとロボットが杖を運んでくる。小型ポッドに乗り、街へ出かける。街には小型ポッドのまま乗車できるバスが行き交う

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P&Dを組み合わせて移動できる小型ポッド
(出典:現代自動車プレスリリース)

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自律走行型モジュールのP&D
(出典:現代自動車プレスリリース)

 P&Dは、このほか物流ロボット、ベビーカーなどさまざまなものと組み合わせることが可能だ。モジュールにはそれぞれ車輪がついており、これを2つないし4つ組み合わせることでさまざまなモノを移動できる。顧客の需要により、プラットフォームのサイズを変更できるため、大型コンテナの移動も可能となる。

 コロナ禍で在宅勤務が増えた結果、オフィススペースを縮小した企業に対し、オンデマンドのオフィススペースを提供することにも役立つという。P&Dを使うことにより、簡単にレイアウトの変更、使用機器の搬入などが可能となり、必要なときに必要な場所を提供可能となる。

 また、パンデミック下で病院を大規模災害センターに変更するなど、従来のビジネスモデルを変革する可能性についても言及された。


車をデジタルツイン化。実際にその場にいるかのような体験

 現代自動車では、このロボティクス技術から、車をスマートアクセスデバイスと捉える方向にさらに発展させる。同社TaaS(トランスポーテーション・アズ・ア・サービス)部門のトップであるチャン・ソン氏は、車やUAMのデジタルツイン化という考えを説明した。

 自動運転が実現すれば、車は動くリビングスペースとなる。その中でVR技術を用い、ゲームやエンターテインメントを楽しむ、あるいはバーチャル会議に参加する。つまり、車内スペースがデジタルツインとして機能する。


 ただし、ここまではどの自動車メーカーも考えることだ。現代自動車は、その先にあるものとして、ロボットを物理的なアバターとしてメタバースに参加するという考えを示した。

 たとえば、在宅勤務を行う人がロボットアバターを用い、物理的にオフィスに出勤する。AIや高度VR技術を用い、ロボットがカメラを通して見たりアームで触れたりするものを、人が実感覚として感じることができる。VRを通した仮想空間、つまりメタバースでありながら、ロボットというアバターを通して実際にそこにいるかのような仕事を行うことができる。

 逆に、出張で家を離れているとき、自宅のロボット=自分のデジタルツインが自宅で犬の面倒をみることもできる。餌をやったりなでたりすることを、遠くにいる自分自身が見て感じることも可能となる。

現代自動車が公開しているコンセプト動画。父親が娘に火星に行こうと提案する。自分のアバターを選ぶと、実際の火星にいるロボットがカメラで風景を映し出すと、親子はメタバース上の火星に立つ。砂嵐の風を感じ、岩を触るなど、実際に火星にいるかのような体験をする

【次ページ】ロボットではなくヒトにアバター的役割を持たせる日本企業

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