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  • 2022/04/25 掲載

東大 稲見昌彦教授が予見、「マルチメタバース時代が到来」の“圧倒的”説得力

連載:メタバース・ビジネス・インサイト

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メタバースの居住者は「人間」だ。けれども、この新たな世界で実現できることがあまりに広範に及ぶため、GAFAMのようなテックジャイアントでさえ、メタバースにどう接し、メタバースでどう過ごすか、今も描ききれていない。これに対し、「人間拡張工学」を研究する東京大学の稲見昌彦教授は明確なビジョンを描く。それは「メタバースが人間の能力を飛躍的に引き出す環境となり、一人ひとりが能力を発揮できるメタバースをいくつも行き来することで、人間はノード(結節点)になる」といったものだ。稲見教授にメタバース時代における人間拡張の可能性と、メタバース自体の発展性について見解を聞いた。

企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、写真:濱谷幸江

企画:林 裕人、執筆:漆原次郎、写真:濱谷幸江

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東京大学
総長特任補佐・先端科学技術研究センター身体情報学分野教授
稲見昌彦氏
1999年、東京大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。マサチューセッツ工科大学コンピュータ科学人工知能研究所客員科学者などを経て、2008年、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。2015年、東京大学大学院情報理工学系研究科教授。2016年より現職。

「人間の能力の拡張」を目指す稲見教授のメタバース観

 私は、人間が心のままにやりたいことをできるようになる「自在化」を実現するため、技術を駆使して人間の能力を高める「人間拡張」の研究をしています。人間拡張に興味を持ったのは1984年、ロサンゼルス五輪で「ロケットマン」が空を飛んでいるのを目にしたときです。当時、中学1年生でしたが、「人間の能力は拡張できる」と実感しました。

 メタバース的なものに出会ったのは、その5年後の1989年ごろ。VR(バーチャルリアリティ)の源流に当たるシステムが海外で開発され、友人と盛り上がり、自分も調べはじめました。

 こうした流れと付き合いながら見えてきたことですが、結局、人間との関係でいうとメタバースには大きく2つの意味があると考えています。それは「人間の能力を引き出す環境である」ということと、「本質的にインクルーシブなメタ媒体である」ということです。


メタバースは人間の「能力を引き出す」環境である

 「人間の能力を引き出す環境である」というのは、メタバースが、人間の能力を拡張するための“身体側”のツールでなく、バーチャルとはいえ物理法則や時空などを変えてしまえる“環境側”のツールであるという意味です。

 そもそも人間の能力とは、“身体側”つまり脳や体に紐づいているものと思われがちですが、その捉え方だと不完全です。人間の能力は、自分と環境の相互作用の「間」に存在するものだからです。

 たとえば、「バスケットボールは苦手だけど野球は得意」という人がいるのは、“身体側”の事情は同じでも“環境側”が異なるからです。バスケットボールとの「間」では能力を発揮できないけれど、野球との「間」なら能力を発揮できる。

 その点メタバースは、人間の能力を拡張するために、いかようにでも設定できる“環境側”のツールであるわけです。拡張するだけでなく、ゲームと同様ルールや制約を設定することもできます。

 これまで「人間」については「人」のことがよく考えられてきましたが、私はむしろ「間」のほうに、人間やその能力の本質があるのではないかと考えているところです。環境との関係、つまり間において、人間は「間人」であるといってよいかもしれません。

 もう一つの、メタバースが「本質的にインクルーシブなメタ媒体である」というのは、人間が使ってきたさまざまな媒体をすべて包摂しうる媒体であるという意味です。

 これは「ドラえもん」の「もしもボックス」を考えると理解しやすいかもしれません。「もしもボックス」さえあれば、「タイムマシーン」や「どこでもドア」でできることを実現できてしまいます。

 「もしもボックス」がすべてのひみつ道具を包摂できるように、メタバースも新聞、ラジオ、YouTubeなどの既存メディアをすべて包摂することができるわけです。

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稲見研究室は、メタバースプラットフォームの開発・運営をするクラスターが立ち上げた「メタバース研究所」に協力している。この研究所の最終目標は「人類を質量から開放し、潜在能力を最大限まで引き出す」こと。稲見教授は、メタバースで身体を瞬時移動させる感覚を人間にもたせることで、「自分が“遍在”する、ユビキタス感覚を実現しうる」と言う

【次ページ】メタバースではなく「メタマルチバース」に未来はある

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