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  • 2024/01/16 掲載

「Web4.0」とは何か? Web3.0の次に来る「大変革」が生み出す経済効果が凄いワケ

連載:デジタル産業構造論

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ここ数年、非中央集権的なWebのコンセプト「Web3.0/Web3」やそれを実現するための技術「ブロックチェーン」や「NFT」に注目が集まり、今やこれらは幻滅期に突入している。そうした中で、直近、欧州はこのWeb3.0をさらに進めたコンセプトとして「Web4.0」を提唱しはじめた。本記事では、「Web4.0」とは何か、Web4.0が目指す世界感、その具体的な事例などについて解説する。
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欧州が推進するWeb4.0とは?

Web4.0とは?

 欧州は2023年7月、今後のデジタルを前提とした時代では、「現実世界とデジタルの密接な連携」が重要であるとの認識から、新たに「Web4.0」戦略を打ち出した。

 欧州委員会の定義によると、Web4.0とは「デジタルとリアルのオブジェクトや環境が統合され、相互にコミュニケーションすることで没入感のある体験が可能になる世界」を指す。近年、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)の第3世代にあたるWeb3.0という概念が広まりつつあるが、Web4.0はその先のWWWの第4世代として欧州が戦略的に位置付けているコンセプトでもある。

 このWeb4.0の実現に欠かせない技術が、高度な人工知能(AI)、IoT、ブロックチェーン、メタバース・デジタルツインなどだ。

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欧州の提唱するWeb4.0戦略
(出典:欧州委員会より筆者作成)

Web1.0~Web4.0の変遷

 Web4.0とは、具体的にどのような世界観を目指すものなのか。Webの世界のこれまでの変遷を振り返ると、インターネットが普及しはじめた頃は、情報の作り手(たとえば、Webサイトを作り、情報を載せる…など)は、企業や専門人材など一部の人間に限られており、情報の作り手と受け取り手(閲覧者)が分かれていた。つまり、情報は一方通行に向かって発信されるだけであった。

 その後、インターネットの通信速度の改善や、動画投稿サイト、SNSの普及などを背景に、誰もが情報の発信者へと変化した。しかし、そうした中で、GAFAなどの巨大ITプラットフォーマーが提供サービスを通じて取得したユーザーデータを独占するような中央集権的な状況を指摘する声も上がり始めていた。

 この状況を踏まえ、非中央集権的なWebの在り方への変革と、ユーザー側にデータの所有権を戻すことを目指した自立分散型のWebのコンセプトとしてWeb3が提唱されるようになった。また、NFTやブロックチェーン技術を鍵としてもWeb3.0に注目が集まっている。

 そして、このWeb3をさらに進めたものがWeb4.0だ。これまでのWeb3.0までの動きと、インダストリー4.0をはじめ、欧州が提唱してきたCPS/デジタルツインのコンセプトを融合させてWeb4.0のコンセプトが提示されているのだ。

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Web1.0~4.0振り返り
(出典:筆者作成)

Web4.0の影響力、医療・交通・教育はどう変わる?

 欧州委員会はWeb4.0戦略の下、現実世界とデジタル世界が融合することによって、あらゆる産業にインパクトが生まれるとしている。下記がその一例だ。

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Web4.0による各領域へのインパクト例
(出典:欧州委員会より筆者作成)

 成長期待も高く、2030年にはWeb4.0によって作り出される市場の規模は約8,000億ユーロに拡大し、2025年までに新たに86万人の雇用が生まれるとの見方もある。

欧州の「Web4.0」戦略、どう進める予定か?

 欧州の産業戦略としては、インダストリー4.0/インダストリー5.0GAIA-X/Catena-Xなどのデータスペース(データ共有圏)の取り組みにも見られるように、Web4.0の実行戦略においても、民間の戦略とともに標準化・人材育成・ルール形成をセットで進めることが重要と考えている。

 そうした点を踏まえ、具体的なWeb4.0の実行戦略としては、大きく分けて(1)人材育成・スキル強化、(1)Web4.0産業のエコシステム形成、(3)政府・都市による戦略的メタバース展開、(4)グローバルスタンダード・標準化戦略など、4つの方向性が掲げられている。

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欧州委員会によるWeb4.0実行戦略
(出典:筆者作成)

国家・都市が取り組む「Web4.0プロジェクト」の事例5選

 すでに欧州の進めるWeb4.0戦略の下、複数のプロジェクトが展開されている。

 それぞれのプロジェクトを見ていくと、各プロジェクトが個別の取り組みに終わらず、複数国や都市、産業が連携し合うような取り組みになっている特徴がある。ここからは、すでに進んでいるWeb4.0のプロジェクトを紹介していく。

事例(1):Citi Verse

 1つ目が都市横断で没入型都市環境の都市空間メタバースを構成する、Citi Verse(都市横断でのメタバース空間)プロジェクトだ。

 この都市空間メタバースでは、市民をはじめ、ほかのユーザーがデジタルアバターとしてメタバース空間に参加でき、仮想商品/サービス(行政、経済、社会、文化的なオンライン活動など)や仮想環境(ゲームシーン、オンラインフォーラム、仮想都市など)を享受できる。

 加えて、この都市空間メタバースを基に、シミュレーションを通じてリアル都市の開発を進めているほか、AR/VRを用いてリアル都市のナビゲーションも整備している。

 都市空間メタバースに参加する企業は、ショッピング、観光、エンターテインメントに関連した革新的で循環的なサービスを提供できるようになる。

 一方、自治体やその関連コミュニティは、メタバース空間を通じて都市のインフラを管理しつつ、都市計画や交通規制などを含む、モビリティに関する意思決定を行うこともできる。

 これにより、持続可能性と回復力を向上させ、都市計画の共同設計への積極的な市民の参加を可能にすることができる。 【次ページ】「Web4.0プロジェクト」の事例、残り4選をまとめて解説
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