- 2025/11/29 掲載
「子育てもあるし、大変だろう?」──上司の“善意”が私のキャリアを奪った日(2/2)
聞き取りで判明…パワハラが疑われるような指導の数々
従業員数約130名の旅行代理店S社の営業部員であるシュンさんが、人事部へ異動届を出してきました。営業課長のイトウさんのマネジメントについての不満からでした。
営業課長は売上に大きな貢献をしていて、特に法人顧客の開拓は社内トップの成績です。その反面、部下育成やマネジメントの観点では課題もあり、新人の定着率が他部署と比べて低いことが問題視されていました。
人事部はシュンさんの異動届を受理しましたが、申請理由の聞き取りをしたところ、イトウさんにパワハラが疑われるような指導があることがわかりました。
- シュンさんに対して「若いくせにパソコンも使えないのか」「学校で何を習ってきたんだ」と叱責する。
- 有休申請の際に、「休んでいたら仕事ができないのに」「オレたちの若い頃は休みなんてなかった」などと嫌味を言う。
- 社内勉強会の後に必ず飲み会を開く。自由参加としているが、出席者と欠席者では露骨に差のある待遇をする。気に入った社員には顧客情報や社内の人間関係を伝えているようだが、参加しない社員には「すぐ聞かないで自分で調べて」と突き放す。
- SNSマーケティングなどと組み合わせる営業活動を提案しても、「そんなことはうちの会社では必要ない」と提案自体を却下する。
人事部は、イトウさんの言動が直ちにパワハラにあたるとは考えませんでしたが、「若いくせに」といった、世代に原因を求める発言が見られることや、有休申請に対する対応は不適切であると考えました。
また、話を聞いた経営者も、根拠があれば新規提案を一度は試してみたいと思ったので、イトウさんに対してマネジメント方法を見直してほしいと伝えました。
イトウさんはショックを受けたようでしたが、それだけでは行動改善につながりません。もともとS社は足で稼ぐ文化、行動量を重視する文化がありました。時代の変化とともにマネジメント層の意識改革が必要だと考えた経営者は、アンコンシャス・バイアスに注目したハラスメント研修を取り入れることにしました。
研修のワークショップでは、社歴が長い社員たちが、行動量を重視する文化に適合してきたことがわかりました。また、長い社会人経験によって自分なりの成功法則があり、それを崩されることに抵抗感があることもわかりました。社員たちは過去の経験にとらわれ、時代も顧客も変化しているのに、自分の営業スタイルをアップデートできていなかったのです。
一方、若手はそうした文化に染まっていません。経験も浅いので、思いつく手法を素直に提案します。しかし、社歴の長い社員には、過去の手法を試さずに新しい手法を採用することは不誠実で軽薄と映ったのです。
相談を受けた私とS社の経営者・人事部は、パワハラの芽を摘むための方策を考えました。その結果、特に中堅管理職に向けたマネジメント強化を目的に、「越境学習」を取り入れることにしました。
その後、イトウさんはS社が初めて副業を認めた社員になり、中堅企業T社で営業支援を行うことになりました。足掛け半年、頻度としては月に3日ほど展示会に参加し、T社のメンバーとして会場に立ちました。
会場設営や展示物の見直しをする中で、T社の若手プロジェクトリーダーの指示を仰いだり、営業トークを学び合う経験は、イトウさんに大きな変化をもたらしました。新たな経験に刺激を受けたことで、なんと自らSNSの講座にも通い出しました。このように、自分を客観的に見る力をつけることは、バイアスから脱する有効な方法です。
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