- 2026/09/01 07:10 掲載
エヌビディアも実は「22%割安」? AI相場の陰に隠れた「お買い得テック株」12銘柄(3/4)
【銘柄5~8】成長市場を握るエヌビディアなど4銘柄の実力
・SAP
- 米モーニングスターの株価/公正価値:0.69
- 米モーニングスターの不確実性評価:Medium
- モーニングスターのエコノミックモート評価:Wide
- 業種:ソフトウェア-アプリケーション
SAPは1972年にドイツで元IBM社員らによって設立され、いまや世界最大のエンタープライズアプリケーションソフトウェア提供企業だ。SAPは割安なハイテク銘柄で、株価は現在、米モーニングスターによる推定公正価値である302ドルに対して31%割安となっている。同社のエコノミックモート評価はWideである。
SAPはエンタープライズアプリケーションソフトウェアの世界最大手であり、ERPソフトウェア分野におけるグローバル市場のリーダーである。同社は、クラウドベースのSaaS製品のサブスクリプション販売に加え、オンプレミスソフトウェアのライセンスおよび保守料金から収益を得ているが、これらオンプレミス製品は現在、段階的に縮小されている。主力のERP製品であるS/4HANAのほか、出張・経費管理向けのConcurや調達向けのAribaといったバックオフィスソフトウェアも提供している。
同社はERPのクラウド化では出遅れたものの、現在では2つの有力な製品を提供している。大企業顧客がオンプレミスERP(ECC)からS/4HANAへ移行する際に利用するプライベートクラウド版のRISE with SAPと、より要件がシンプルなミッドマーケット企業向けのパブリッククラウド版であるGROW with SAPである。GROW with SAPは同社の製品ポートフォリオにおける重要な空白を埋めるものと私たちは見ている。従来、SAPのERPは導入コストの高さから小規模顧客には魅力に欠けていたからだ。これら新製品の投入により、クラウド売上は急速に拡大しており、SAPは多くの中堅企業の新規顧客を獲得している。
SAPはエンタープライズソフトウェア市場で一般的な「ランド・アンド・エクスパンド」戦略を採用している。RISE with SAPおよびGROW with SAPが顧客獲得の入り口となり、その後クラウドベースのモデルを活用して追加製品のアップセルやクロスセルを行う。同社は最新の長期目標をまだ公表していないが、少なくとも2027年までは売上成長の加速とクラウド事業の規模効率化に伴う利益率の上昇が見込まれている。
ロブ・ヘイルズ氏(米モーニングスター シニアアナリスト)
・ソニーグループ
- 業米モーニングスターの株価/公正価値:0.69
- 米モーニングスターの不確実性評価:Medium
- 米モーニングスターのエコノミックモート評価:Wide
- 業種:コンシューマー・エレクトロニクス
ソニーグループは、コンシューマー・エレクトロニクス事業をルーツとする複合企業であり、電子機器やデバイスの設計、開発、製造、販売を手掛けるだけでなく、コンソールゲームやモバイルゲーム、音楽、映画などのコンテンツ事業も展開している。私たちは同社のエコノミックモート評価をWideとしており、同社株は現在、米モーニングスターによる推定公正価値である34ドルに対して31%割安となっている。
技術や消費者の嗜好が急速に変化する中、コンシューマー・エレクトロニクスメーカーがエコノミックモートを構築することは困難である。デジタル家電の買い替えサイクルは通常4~6年程度だが、多くの製品がコモディティ化しているため、顧客が他社ブランドへ乗り換えるのを防ぐようなエコシステムを構築することは容易ではない。そのため、ソニーのエレクトロニクス事業の収益性は過去には不安定であった一方、音楽、映画、金融サービスの各事業は堅調な業績を生み出してきた。
ソニーは過去10年間、コンシューマー・エレクトロニクス事業の収益変動を抑制するとともに、音楽、映画、ゲームなどのエンターテインメント事業向けコンテンツの獲得に積極投資を行うことで、より堅固で安定した成長を実現できる事業モデルへと変革を遂げてきた。
コンシューマー・エレクトロニクス事業では、ソニーが強みを持つデジタルカメラや音響機器が利益を生み出している。一方、テレビ事業では、プレミアム製品に注力するとともに在庫を厳格に管理することで、損失回避を最優先としている。
音楽および映画事業では、コンテンツの拡充や新たなアーティストの発掘を進めることで、ストリーミング市場の拡大といった成長機会を取り込むことに成功している。
イメージセンサー事業は世界最大の市場シェアを有している。売上の大半はモバイル市場向けであり、スマートフォンカメラの画質向上に対する旺盛な需要の恩恵を受けている。ただし、エンターテインメント事業とは異なり、イメージセンサー事業には多額の設備投資と研究・開発投資が必要だ。固定費の負担も大きいため、同事業の収益性は十分に高い水準には達していないと私たちは考えている。
PlayStation事業はソニー最大の収益源である。ユーザーのPS4からPS5への移行は順調に進んでいるものの、ゲーム開発コストの上昇に加え、Steamなど他プラットフォームとの競争激化が事業上の懸念材料となっている。
伊藤和典氏(モーニングスター ディレクター)
・NXPセミコンダクターズ
- 米モーニングスターの株価/公正価値:0.76
- 米モーニングスターの不確実性評価:High
- 米モーニングスターのエコノミックモート評価:Wide
- 業種:半導体
NXPセミコンダクターズは高性能ミックスドシグナル製品の大手サプライヤーである。同社は割安なハイテク株で、株価は米モーニングスターによる推定公正価値である310ドルに対して24%割安となっている。半導体企業である同社のエコノミックモート評価はWideである。
NXPセミコンダクターズは自動車市場向け半導体サプライヤーの世界最大手の1社で、アナログおよびミックスドシグナル半導体市場全般でも有力企業である。高い顧客スイッチングコストと無形資産を組み合わせることで、自動車、産業、モバイルの各最終市場で強固な地位を築いていると考えられる。同社は景気循環の影響を受ける業界向けに製品を販売しているが、競争優位性の強さを踏まえれば、今後10年以上にわたって資本コストを上回るリターンを生み出せるものと私たちは確信している。
2015年のフリースケールと旧NXPの合併によって自動車用半導体の有力企業が誕生し、現在では同事業が同社の総売上高の半分以上を占めている。同業の多くの半導体メーカーと同様、NXPは今後、自動車の安全性、環境性能、スマート化の進展から恩恵を受ける好位置につけている。同社は自動車用半導体市場の大手企業の1社であり、特に自動車のさまざまな電子機能の頭脳として機能するマイクロコントローラーユニット(MCU)で強みを持つ。77GHzレーダーモジュールや今後登場する電気自動車向けバッテリー管理システムなど、アクティブセーフティシステムに使用されるNXP製品の開発について、私たちは楽観視している。
また、産業およびIoT部門の展望も明るい。これは、MCUと組み込みプロセッサで培ってきた強みに加え、両者の利点の一部を兼ね備えた新たなクロスオーバーMCUの開発によるものだ。さらに、NXPのモバイルウォレットソリューションは今後も業界のゴールドスタンダードとしての地位を維持し、アップルやグーグルなどが提供するモバイル決済技術を支える基盤であり続けると私たちは見ている。
ブライアン・コレロ氏(米モーニングスター シニアアナリスト)
・エヌビディア
- 米モーニングスターの株価/公正価値:0.78
- 米モーニングスターの不確実性評価:Very High
- 米モーニングスターのエコノミックモート評価:Wide
- 業種:半導体
エヌビディアは、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の大手開発メーカーである。同社のエコノミックモート評価はWideであり、株価は現在、米モーニングスターによる推定公正価値である280ドルに対して22%割安となっている。
エヌビディアのWideなエコノミックモートは、人工知能市場の爆発的な成長を支えるGPU、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーキング技術における圧倒的な市場リーダーの地位によるものだ。長期的には、大手テクノロジー企業がAI分野におけるエヌビディア依存を軽減するべく、代替サプライヤーの確保や自社開発ソリューションの構築を進めると私たちは予想している。しかし、こうした取り組みが成功したとしても、エヌビディアのAI市場における支配的地位を部分的に侵食するにとどまるだろうと考えている。【次ページ】【銘柄9~12】シノプシス・TSMCなど次に狙いたい「裏方4銘柄」
エヌビディアのGPUは並列処理に適しており、多数のコアを用いて大量のデータを同時に効率よく処理することができる。これに対し、インテルのPCおよびサーバ向けプロセッサや、アップルのMacおよびiPhone向けプロセッサに代表される中央演算処理装置(CPU)は、「0」と「1」のデータを逐次的に処理する方式を採用している。GPUの主戦場は長らくゲーム市場であり、エヌビディアのGPUグラフィックスカードは業界最高水準の製品として高い評価を受けてきた。
近年では、AIワークロードを高速化する上で並列処理が事実上不可欠な要件となっている。エヌビディアはAI向けGPUハードウェアで早期に先行したが、それ以上に重要なのは、独自のソフトウェアプラットフォームであるCudaを開発したことである。これらのツールのおかげで、AI開発者はエヌビディアの環境上でモデルを構築できるようになった。私たちは、エヌビディアがハードウェア面で優位性を持つだけでなく、Cudaを中心とした高いスイッチングコストの恩恵も受けていると考えている。このため、AIモデルの学習向けチップ市場において、他の半導体設計企業がエヌビディアに代わるリーダーとして台頭する可能性は低いとみている。また、エヌビディアのネットワーキング分野への事業拡大も目覚ましい成果を上げている。これにより顧客は複数のAI向けGPUをクラスター化して接続し、大規模なAIモデルの学習処理を効率的に実行できるようになっている。
私たちは、エヌビディアの将来性は当面、よくも悪くもAI市場の動向に大きく左右されると考えている。大手クラウドサービス事業者は今後も自社開発ソリューションへの投資を継続すると予想され、AMDもデータセンター向けGPUやAIアクセラレーターの開発を進めている。しかし私たちは、エヌビディアのGPUとCudaが依然として業界をリードする存在であるとみている。また、同社の極めて高い企業価値評価が正当化されるかどうかは、今後数年間にわたるAIインフラ構築投資の拡大ペースにかかっていると考えている。
ブライアン・コレロ氏(米モーニングスター シニアアナリスト)
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