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  • 2013/01/15 掲載

三菱重工業 元副社長 青木素直氏が語る、低収益性から脱するモノづくりイノベーション

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日本の製造業は収益性が低いと言われている。三菱重工業の元副社長で、現在は三菱総合研究所の副理事長をつとめる青木素直氏によれば、その理由は大きく2つあるという。「1つは急速に進むグローバル化への対応が遅れていること。もう1つは本質的な弱点を克服してこなかったことだ」。青木氏は、“マスカスタマイゼーション・モジュラーデザイン(MCMD)”をはじめ、日本の製造業に新たに求められるモノづくりの考え方について説明した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

低収益という“悪魔のサイクル”からの脱却

photo
三菱総合研究所
副理事長
青木素直氏
 営業利益率で10%を超える米GEや韓国サムスンなどに比べ、日本の製造業は収益性が低いと言われている。PTCジャパン主催の「PTC Live Tech Forum 2012 東京」において、三菱重工業の元副社長で、現在は三菱総合研究所の副理事長をつとめる青木素直氏は次のように指摘した。

「いまやグローバル競争は避けて通れない課題の1つだが、その対応が遅れてしまったことが低収益になった理由の1つだ。」(青木氏)

 円高による利益減、価格の下落、競争力の低下、製品寿命の短命化、新興国の追い上げなど、日本の製造業を取り巻く環境の厳しさが収益を圧迫している。グローバル市場はニーズも多様化し、利益を出しずらく、その変化も速い。対応の遅れは企業にとって大きな打撃になる。

 もう1つの理由として、青木氏はこれまで日本の製造業が性能・機能至上主義だった点を挙げる。顧客や利益に焦点を置かなかったため、成熟市場では低利益となり、新興市場ではオーバースペックで競争力のない製品を産んだ。

「良い製品とは何かという点について見直し、真の顧客思考へのパラダイムチェンジが必要だ。」(青木氏)

 技術者・作業者の「暗黙知」を重視してきたことも問題だ。知識が言語化されないために共有化しずらく、標準化やIT化に遅れをとった。それが技術・製品開発や製造作業の低生産性につながった。さらに全体最適化の不足も大きな問題だという。これは外部サプライチェーンやサービスの軽視をもたらした。結果としてリードタイムが長くなり、低利益で高価格な製品になった。

「低収益という“悪魔のサイクル”から脱却が求められている。そのためには売上至上主義から、顧客志向の収益優先への転換を図らなければならない。」(青木氏)

 具体的には、不採算製品・事業から撤退し、競争に勝てる領域のみを残して、シェアの大きな高収益事業を目指すことだ。より大きな新しい価値を創出する“ものづくりのイノベーション”によって低収益の原因を克服する。

 また青木氏は「日本の製造業は、慢性的な低利益のため一部の非製造業と比べ、年収が低くなる傾向にある。これは新卒者の理工系離れを加速し、優秀な人材が離れてしまうことを意味する。そうなると人材不足で製造業の崩壊が始まる。低収益からの脱却は、この点からも喫緊の課題だ」と警鐘を鳴らす。

 では、どうやって新しいイノベーションを生み出せばよいのだろうか?

 イノベーションというと、どうしても革新的な技術を生み出す開発に視点が向きがちだが、実はそれだけではないと青木氏は指摘する。

「たとえばグローバル市場のニーズを正確に把握し、生産性や収益率を高めることもイノベーションだ。より大きな価値と新しい価値を産むバリューチェーンを設計することもイノベーションの1つだろう。」(青木氏)

 いま日本の製造業にとって必要なことは、革新的な技術というよりも、まさに生産性や収益率を高める現実的なイノベーションのほうだ。

【次ページ】日本企業がグローバル競争で勝ち抜くための条件

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