標準化を進めるために着手した“システム資産の見える化”
現在同社では、日本、北米、南米、欧州、中国、アジア太平洋という世界の6極で生産/販売活動を展開している。しかしグローバル化が急速に進み、新興国での生産/販売の拡大も迫られる中、より効率的なビジネス活動を展開するためには、“グローバルでのシングルオペレーション”を実現する必要がある。
「そうしたビジネス側の要求に応えるためには、IT側もグローバルの変化に素早く対応できる構造に改革していかなければならない。」
これまで同社では、6つの各地域で個別にシステムを構築してきており、データの持ち方やオペレーションの方法もバラバラだった。
「これをグローバルで連携し、運営できるシステムに変革していく必要がある。目指したのは、システム資産を効率よく活用していくこと。そこで老朽化資産の一掃を図り、標準化を推し進めていくことに取り組んだ。」
同社には1970~80年代から稼働し続けている大規模なシステムが膨大に存在しており、サポートが切れたハードウェアやソフトウェアが数多く残っていた。ノウハウの継承もままならず、システム間で機能が複雑に絡み合っている状態も大きな課題だった。
「古い仕組みが多いということは、ドキュメントも残っていないということ。これでは業務間の関連性がなかなか見えてこない。またプログラムを1つ1つを解析していくなどの作業にも時間がかかり、業務を棚卸しする際にも、必要/不要の判断がつかない。」
さらにその仕組みを理解している人間がいなければ、障害発生時の対応にも時間がかかり、言語そのものが分からないといった状況も生まれてくる。
「そこでまずシステム資産の見える化に取り組んだ。」
ヒントになったのは、メインフレーム資産の棚卸し作業
同社のIT部門は大きく4つに分かれている。IT戦略の立案などを行うグローバルIT戦略管理室、インフラの開発/運用を行うシステム基盤部、生産系のアプリケーションを開発/運用するSCMシステム部、そして有馬氏が主任を務めるコーポレート・セールスシステム部は、人事・経理系、販売系、サービスのアプリケーションを開発/運用する。
今回の取り組みに先立ち、生産系システムを担当するSCMシステム部では、2005年頃からグローバル部品表を始めとする新しい生産システムの構築を開始したが、その際に現状分析に非常に時間がかかり、当初の計画よりも1年半ほど着手が遅れたという。
その時の反省を踏まえ、SCMシステム部では再構築して新しくなったシステムのドキュメントを元に、外部のツールを使って、システムの関連性と業務フローを一目で把握できる“システム鳥瞰図”というものを作り上げた。
「当然コーポレート・セールスシステム部でもシステム鳥瞰図を作れということになった。しかし2~3年ほど手付かずのままで、昨年私が異動してきた時に、それではチャレンジしてみようと思った。」
それまで有馬氏はシステム基盤部に所属しており、約2年前からメインフレーム資産の延命化を図るために、OS/390からz/OSへの移行を展開、併せてそれまで7区画あったメインフレームの本番環境を3区画に統合するという作業も行った。
「そのためには重複するメインフレーム資産を整理する必要がある。この時の経験が、コーポレート・セールスシステム部での取り組みのヒントになった。」
この時の区画統合作業では、併せてプログラム言語の最新化を図り、データベースもADABASからDB2へ移行するなどした。そしてXINFOというIT資産解析ツールを使い、メインフレームの棚卸しを行った。その結果、プログラムは9万4000本、JCLは8万3000本などの現状を把握することができた。
「この時に得られたインフラ側の情報を使って、コーポレート・セールスシステム部が担当する販売系のシステムで、業務の関連性などを可視化することができないかと考えた。それが今回の主旨。」
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