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- 2014/04/16 掲載
ユーザー中心設計(UCD)のためのインタビュー入門、「ユーザーの声を聞くべからず」
ユーザーの声に耳を傾けるのではなく、ユーザーの「体験」を知る
数年前から流行りはじめたキーワード「UX(ユーザー体験)」に、改めて注目が集まっている。「かつてはUXやUXDと聞いても、難しそうで社内でどう進めたらいいかわからないという方が多かったが、ここに来て実際に取り組む企業が増えてきた」と語るのは、アイ・エム・ジェイ(IMJ)の佐藤哲氏だ。そのIMJが主催する「UXD/HCD ワイワイCAFE」で、利用品質ラボの樽本氏を招いた「UX、デザイン思考、リーンスタートアップのためのインタビュー入門」というワークショップが3月に開催された。
このUXやデザイン思考のためのインタビューを実施するにあたって、樽本氏は冒頭「ユーザーの声を聞くべからず」と、自身の考えを示すとともに、重要なのは「ユーザーの体験」を聞くことであるとした。
ここで言うユーザーの声とは、ユーザーに評価を含めた主観を問うものを指す。たとえば、デジタルカメラのUXDを考えるときに、デジタルカメラの使い勝手や不便なところ、欲しい機能などを直接的に問うのが、「ユーザーの声に耳を傾ける」ということになる。
一方、ユーザー体験とは、ユーザーが実際に体験したことを指す。たとえばデジカメをどこで使ったのか。撮った写真はどう使うのか、ということを問うのが、「ユーザーの体験に耳を傾ける」ということになる。
アンケートやグループインタビューでは「体験」は聞けない
一般的なアンケートやグループインタビューは、ユーザーの「声」を聞くのにはよいツールだが、「体験」を問うには不適切と樽本氏はいう。では、どのようにして聞けば良いのか。それが「師匠と弟子」という人間関係モデルに基づいた調査手法「Contextual Inquiry(コンテクスチュアル・インクワイアリー)」だ。これを樽本氏は「弟子入り」と呼ぶ。この手法では、インタビューを受ける側を師匠、インタビューを行う側を弟子と見立てて、師匠の「体験」を弟子に継承してもらう。
シナリオには師匠による詳細な「体験」が記載されているが、弟子には簡単なストーリーしか伝えられない。そのうえで、限られた時間のうちに、どのような質問をすれば師匠が「体験」を語ってくれるのかを考えながら弟子は質問をする。
今回のグループワークで渡されたシナリオの1つは、「プレゼンテーション資料の作成」がテーマだった。ある人がプレゼンテーション資料を作成するにあたって、どんな方法で作成し、その過程でどのようなソフトウェアを使っているのか、どのようなことに時間を割いているのかがこと細かく記載されている。
最初は特にヒントもなくグループワークを開催すると、時間が限られているにもかかわらず、多くの参加者が質問することにさえ窮するという状況に陥った。
そこで、インタビューの1回目を終えた時点で、樽本氏はいくつかのヒントを出した。その1つめは、質問には無駄な質問があるということ。たとえば、Yes/Noを問う質問は、体験を問うには不適切で、また仮説を検証するような質問も無駄になるのだと説明した。
ヒントの2つめは、「体験」は連続しており、点ではなく線で捉えるということが大切だということ。そのため、質問も「なぜ?」や前後関係を問う質問が有効だと説明した。
「たとえ質問に対する答えが、体験の途中であっても、その前に何をしていたのか、またはその後に何をしたのかを問うていけば、網羅的に体験を聞き出すことができる。なぜ?と前後関係を聞いていけば、どんどん質問があふれてくるし、また答えてくれるはず」
たとえば、デジカメを最近使っていたのはいつか?と聞いて、日曜日の午後の公園だったとすると、その公園に行くまではどうしていたのか、公園についてすぐにデジカメを使ったのか、公園に行ったあとは別のどこかに行ったのか、家に帰ったあとデジカメはどうしたのか、デジカメのデータはそのあとさらにどうしたのか、といった具合にどんどん質問が出てくるし、またその答えも回答しやすくなる。
この2つのヒントをもとに2回目のインタビューを実施。結果として、相当量のことを聞き出せたチームもあったようだ。
【次ページ】ユーザー体験を導き出すインタビュー設計の方法
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