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- 2019/04/10 掲載
デザインシンキングとは何か? システム開発に適用するための5つの段階--ガートナー
デザインシンキングとは何か?
デザインシンキングは100年ほど前にドイツで発祥した。1990年半ばにIDEO社がデザインシンキングのトレーニングを提供し始め、現代風のデザインシンキングを蘇らせた。アップル、GEなどでもデザインシンキングが取り入れられ、2010年代に入ってからは、IBM、SAP、オラクルなどのソフトウェアベンダーも自社に採用し、今やサービスとして顧客に提供している。
なぜこれほどまでにデザインシンキングが指示され、広まったのか。従来、IT製品は事前に綿密に設計された要件に沿って開発された。しかし、出来上がった後に使ってみると、ユーザーにとって使いにくい、実はユーザーが求めているものではなかったという結果が往々にして起きていたからだ。
「デザインシンキングは単純な前提に基づいている」とファイファー氏は話す。「単純な前提」とは、まず「人」にフォーカスするということ。ユーザーを中心に据えてデザインする。そして、人の行動を「観察」する。なぜ人がその行動をとり、結果としてどのような目的を果たそうとしているのか、行動のモチベーションと何を達成しようとしているのかを観察し、体得するのだ。そして、どのような関係のネットワークが形成されているのかを把握し、人のニーズを理解する。
ファイファー氏は、デザインシンキングの定義として「複雑な問題を解決するためのデザインに必要な考え方を用いた、人間中心の協調的な問題解決アプローチである」というIDEO社・CEO兼社長であるティム・ブラウン氏の言葉を引いた上で、「私は彼の定義に少し疑問がある」といって持論を述べた。
デザインシンキングをある特定の「問題を解決するためのもの」と考えると1つのありきたりな答えに行き着いてしまうかもしれない。しかし「目的を達成するためのもの」という考え方にシフトすれば、その目的にたどり着く道筋はさまざまな可能性が考えられ、クリエイティブなソリューションが発案できるというのが、ファイファー氏の考えだ。正しいことを正しく行うことで、デザインシンキングの可能性は広がる。
デザインシンキングの基盤となる6つの考え方
デザインシンキングには6つの基盤となる考え方がある。「共感」「語るのではなく、見せる」「実験」「プロセスに注意する」「行動重視」「コラボレーション」の6つだ。中でも「共感」は、人を中心に据えるデザインシンキングの中核をなすものであるとファイファー氏は話し、かつて務めていた製菓会社・フリトレーでの「ルートライド」の経験談を紹介した。
ルートライドは年に1度行われるもので、システム開発者がセールス担当者とトラックに乗って回り配達・セールスの現場を体験するものだ。セールス担当者がコンビニやガソリンスタンド、スーパーマーケットに商品を配達し、店主と話す。その現場に開発者がついて回って体験する。
「私の部門の開発者に、そのルートライドに参加してもらった。朝4時に配送センターへ行き、1日中セールスに張り付いてきた彼らが帰ってきて話すのは、『びっくりした』『すごい体験だった』『セールスの現場があのようになっていると知らなかった』『自分たちがつくったシステムがどれだけセールス担当者にとって不便なものかも分かった』ということだった」(ファイファー氏)
「彼らが『共感』したことは測り切れないほどの効果があった。ユーザーと同じことをしてみる、ユーザーの立場に実際になってみる、このことがデザインシンキングにとって非常に重要だ」とファイファー氏は強調する。
【次ページ】デザインシンキングの5つの段階
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