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  • 2015/07/29

医療ツーリズム、徳島県が「ピンチをチャンス」にできなかったワケ

秋田県仙北市が地方創生特区の指定を受け、検診や治療、手術などを目的とした旅行客を受け入れる「医療ツーリズム(メディカルツーリズム)」に動き出したのを契機に、全国の自治体が改めて医療ツーリズムに大きな関心を寄せ始めた。5,500億円もの巨大市場が生まれるという需要予測が発表されて以降、すでに各地で医療ツーリズムの専門会社が生まれているほか、大手旅行会社も中国を中心としたアジアの富裕層を狙って受け入れに力を入れている。しかし、受け入れを華々しくスタートしたものの、進展が見えない自治体もある。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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医療ツーリズムは、地方創生の起爆剤となるか

がん検診で中国人観光客受け入れ

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 北海道の空の玄関・新千歳空港。年末年始など繁忙期には国際線の出発ロビーに外国人観光客の長い行列ができる。雪が珍しい中国南部や東南アジアの富裕層から注目を集め、観光ブームが起きているからだ。中国の大ヒット映画「狙った恋の落とし方」が北海道東部でロケをしたことも追い風になっている。道観光局のまとめでは、道内を訪れる外国人観光客は、2013年度で115万3100人。1997年度の11万8600人に比べ、約10倍に増えた。

 こうした一般観光客とは別に、医療目的の観光客受け入れも始まっている。4月には帯広市の病院に中国から51人の医療ツーリストが訪れ、がん検診を受けた。札幌市に設立された医療観光会社「メディカルツーリズム・ジャパン」が企画したもので、同社は中国人の医療通訳を養成し、月に治療目的で10~15人、健康診断で20人程度の医療ツーリストを中国から受け入れ中だ。坂上勝也社長は「受け入れ先はまだ関東、関西が中心だが、北海道のニーズはある」と将来に期待する。このほか、大手旅行代理店の近畿日本ツーリストもがん検診と北海道旅行をミックスした中国人向け旅行企画を進めている。

 医療ツーリズムとは、検診や治療、手術などを目的とした旅行を指す。国際的な医療ツーリズムが本格的に登場したのは1990年代。米国では費用が安く、待機時間のない診療を求めて南米へ向かう医療ツーリストが出現した。中東の産油国では富裕層が先端医療を求めて欧米へ向かうが、2001年の同時多発テロで欧米の入国審査が厳しくなると、渡航先を経済成長が目覚ましいアジア諸国へ切り替えた。こうした世界の流れを受け、日本も2010年、成長戦略に「国際医療交流」を盛り込み、受け入れへ舵を切っている。

2020年の市場規模5,507億円と推計

 中国、台湾、香港など東アジアの中間所得層は現在、ざっと5億人と見積もられている。2020年にはそれが17.5億人まで増える見込みだ。将来、どのくらいの外国人医療ツーリストが日本を訪れる可能性があるのだろうか。

 日本政策投資銀行が2010年5月に発表した『進む医療の国際化~医療ツーリズムの動向~』によれば、2020年で中国から31.2万人、ロシアから5.4万人、米国から5.9万人と予測している。観光を含めた医療ツーリズムの市場規模は5,507億円で、うち1,681億円が純医療分。さらに、経済波及効果は2,823億円と推定した。医療ツーリズムが大きな可能性を秘めていることを示したわけだが、この数字が楽観的過ぎるとして、否定的な見解を示す専門家もいる。

 国内では、神戸市がポートアイランドに医療機関を集積する神戸医療産業都市構想を打ち出し、そこで医療ツーリストを受け入れるとしている。大手旅行代理店のJTBは社内に医療ツーリズムの専門部門を立ち上げた。

 そうした中、全国の先鞭をつける格好で、医療ツーリズムに乗り出したのが徳島県だ。徳島県は人口当たりの糖尿病死亡率が長年全国トップを続けてきた。この不名誉な記録の下で培った糖尿病の検診、治療技術を医療ツーリスト誘致に結びつけようと、鳴門海峡の渦潮観光とセットにした中国人向けツアーを発案した。

【次ページ】ピンチがチャンスに変わらなかった

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