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  • 2016/01/07 掲載

FinTechで注目すべき、クレディセゾンやオリックスなどの「ノンバンクの戦略」

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金融とITが融合する「FinTech(フィンテック)」。2016年も大きな話題になりそうで、「2020年に全世界で400億ドルの市場になる」という予測もある一方で、「銀行がいらなくなる」など、危機感をあおる刺激的なフレーズも飛び交う。日本でこのFinTechが語られる時、銀行やIT企業の話が先行し、ノンバンクの存在が過小評価されている感がある。しかし、長年にわたり個人相手に決済や顧客管理や与信のスキルを磨いて築いた有形無形の資産を活かせば、クレディセゾンやオリックスなどのノンバンクがFinTechでイニシアティブを握ることも十分にありそうだ。
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FinTechとは、FinanceとTechnologyからなる造語だ。当初は金融機関のシステム構築を手がける企業を指すこともあったが、現在はその意味が失われている

FinTechの世界市場は、2020年に400億ドルに拡大

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 金融とITが融合する「FinTech」という言葉はいま、良い意味でも悪い意味でも熱く語られ、一人歩きしては時におかしな方向にも迷い込んでいく。

 アクセンチュアの調べによると、2014年の全世界トータルのFinTech投資額は122億ドルで、前年2013年の40.5億ドルの約3倍に伸びている。アメリカでは、2010年は16.44億ドルだったが、2014年は98.87億ドルで約6倍。同じ期間にアジア・太平洋地域では1.03億ドルから8.79億ドルへ約8.5倍に伸び、日本では5万ドルから5,440万ドルへ約1080倍になる急増ぶり。2015年は1~9月の9カ月間で4,370万ドルで、単純に年率換算すると5,826万ドル。1ドル=120円で為替換算すると約70億円になる。

 将来予測では5年後の2020年に全世界で400億ドルを超えるという試算がある。2014年実績の3.2倍以上で、IT業界では「21世紀前半最大のフロンティア」とも目される。

 しかし、ITと融合する側の金融業界にとっては、FinTechは将来、大きな収益を生み出す「金の卵」にも、増殖して本業をなぎ倒してしまう「がん細胞」にもなりうる。そのため日本ではいま、「待望論」と「脅威論」が両方語られるような状況になっている。

FinTechで銀行はなくならない。むしろ、生まれ変われるチャンス

 脅威論のヘッドラインは「FinTechで銀行がいらなくなる」という刺激的な言葉。先行するアメリカでは、FinTechベンチャーが個人間、国際間の送金手数料や電子商取引の決済手数料を格安にしたり、無料にしたりして、金融機関から顧客を奪っている。

 その代表的な存在は1998年に創業してすでに上場を果たし、全世界で1億7300万人が利用するPayPal(ペイパル)だろう。決済の分野では他にSquare(スクエア)などもあり、アップルの「Apple Pay」やグーグルの「Google Wallet / Android Pay」は、クレジットカードレスの「スマホ決済」を拡大させている。送金や決済に伴う手数料収入が激減すれば、金融機関やクレジットカード会社の業績は打撃を受ける。


 さらに、「クラウド型の自動資金運用(ロボ・アドバイザー)」を手がけるWealthfront(ウェルスフロント)やBetter Payment(ベターペイメント)などに資産運用の領域を侵食され、クラウド・ファンディング型の「ファイナンス仲介業務」はLending Club(レンディングクラブ)などに融資の領域を侵食されたら、金融機関の収入源はますます縮小してしまう。その危機感が「銀行がいらなくなる」論の根拠である。


 2015年9月にはマッキンゼーが、「FinTechによって、今後10年間に銀行の業務収益は40%減少し、利益は60%減少する」という、銀行業界にとってショッキングなレポートを発表して波紋がひろがった。

 だが、世界大恐慌時の1933年に制定された「グラス・スティーガル法」による金融規制の緩和が70年代からなし崩し的に進行し、1999年のグラム・リーチ・ブライリー法(GLB法)で銀行業務と証券業務の垣根が取り払われ、投資銀行と商業銀行が分化し、金利や手数料の自由化、金融関連業務への参入の自由化が相当進んでいるアメリカと、金融庁によるさまざまな規制が残っている日本を同列に論じてしまっては誤解を招く。それがFinTech脅威論の最大の弱点と言える。

【次ページ】ノンバンクはすでにFinTech戦略に動いている

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