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  • 2016/03/30

シーメンス島田専務、SAP馬場氏、長島社長鼎談、インダストリー4.0にどう備えるべきか

昨年からメディアをにぎわせている「インダストリー4.0」。しかし、その意味・意義を正しく理解している企業、個人は決して多くはない。そもそも「インダストリー4.0」にはどのような意味があり、日本企業に与えるインパクト、海外企業の最新動向、さらに日本企業が考えるべきこと、実行すべきこととは何か。「インダストリー4.0」の本場 ドイツ企業のキーパーソンであるSAPジャパン バイスプレジデント 馬場渉 氏、シーメンス 専務執行役員 島田太郎 氏、ローランド・ベルガー 代表取締役社長 長島 聡 氏が一同に介し、存分に語り合ってもらった(聞き手はフロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎氏とビジネス+IT 編集部 松尾慎司)。

日本の「インダストリー4.0」の理解はあまりに矮小化されている

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シーメンス
デジタルファクトリー事業本部
プロセス&ドライブ事業本部
専務執行役員 事業本部長
島田 太郎 氏
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ローランド・ベルガー
代表取締役社長
長島 聡 氏
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SAPジャパン
バイスプレジデント
Chief Innovation Officer
馬場 渉 氏
──まずは、ドイツ企業のキーパーソンでいらっしゃる皆さまのお立場から、インダストリー4.0とは何か、なぜこれほど注目を集めているのかについて、ご意見をお聞かせください。

島田氏:ドイツでモノを作って、どうやって中国とアメリカに勝つか。それにはデジタル化が不可欠です。そして、このデジタル化に対してドイツ政府の出した答えの1つが、インダストリー4.0です。

 ドイツには、それ以外にもさまざまなデジタル化の取り組みがあるのですが、日本はインダストリー4.0だけに過剰に反応している。理由は簡単で、日本が置かれている状況と似ているからだと思います。

長島氏:私は、インダストリー4.0を「異次元の見える化と圧倒的な機動力」と表現しています。非常に高い頻度で俯瞰して見られる。しかも、まだ作っていないデジタル空間にあるものまで見られるようになるのが「異次元の見える化」です。

 これまで見えなかった非効率な部分が見えきたら、それを高い頻度で修正したり新しい付加価値を付けたり、コスト削減したりできるようになる。これが「圧倒的な機動力」です。

馬場氏:重要なことは、ドイツ政府がすすめる「インダストリー4.0」と第4次産業革命としての「インダストリー4.0」は別物だということです。もちろん、より重要なのは後者です。

 インダストリー4.0は、国別対抗戦ではありません。“すでに起こった”あるいは“起こっている”現実です。この現実に対し、ドイツが引き続きリーダーシップを発揮するために作ったのが、国策としての「インダストリー4.0」です。

──昨年、メディアが盛り上がったのは、ドイツ対アメリカ、日米独の三国志みたいで面白いという側面もあったように思います。しかし、そもそもメディアの見方がズレていて、こういう見方をしていると本質を見誤るということですね。

島田氏:国別に分けるという発想自体がズレていると思います。たとえばシーメンスはドイツの企業ですが、ソフトウェア開発の拠点はアメリカにあります。疑問に感じるのは、インダストリー4.0という言葉のもとで政府が規格争いをやろうとしていることです。すると、どうしても国対決のようになってしまう。いまはオープンイノベーションの時代なのです。

馬場氏:冒頭で述べたように、インダストリー4.0には、広義の意味とドイツの国策という狭義の意味がありますが、日本では後者、しかも製造業の取り組みととらえられ、さらに工場のプレディクティブ・メンテナンス(予防保全)のような話ばかりになっていますね。

島田氏:非常に矮小化されていますね。シーメンスはものを作っている会社ですので、ものづくりで貢献したいと考えていますが、決してプレディクティブ・メンテナンスだけが目的ではありません。やろうとしているのは、まだ世の中にないものを作ったり、マス・カスタマイゼーションを実現したりすることです。それには、標準化やモジュラー化が必要ですが、それは製造業の基本動作であり、その基本動作を徹底的に磨き込む取り組みが、我々のような製造業から見たインダストリー4.0の本質です。

日本企業の強さは徹底的な顧客志向、なぜそれをものづくりに活かせないのか

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──日本企業の弱み、強みについて、ご意見をお聞かせください。

馬場氏:弱みはスピードがないことです。しかし、それは仕方ないと思います。品質や継続的な改善と表裏一体ですから。一方、アメリカはスピードは速いがあきらめも早い。ドイツは日本と似ています。日本人と同様に熟慮型で、品質を落としてまでスピードを追い求めようとはしません。

 ただ、マークザッカーバーグが「Done is better than perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)」といったように、アメリカの価値観を一生懸命、取り入れようと努力しています。個人はともかく、法人がグローバル化するためには、無国籍化は重要なテーマだと思います。

 一方、日本の強みは「顧客志向」でしょう。日本人は、悪く言えばまわりを気にして生きているから「自分はどうしたいのか」が個人も企業もはっきりしない。しかし、相手を観察し、相手を満足させるために徹底的に尽くす点では、日本人は非常に優れています。ただ、ものづくりになると、なぜかその日本人にエラーが起きる。相手がその品質をどう感じるかを無視して、過剰品質でも気にしないですね。

長島氏:私も弱みはスピードだと思います。日本人は、それぞれの工程を突き詰めるのは得意ですが、自分のやっていることを伝えるのは不得意です。たから、他の人とベクトルが合わない。その結果、最終的にできたものが、過剰なのか足りないのかわからなくなるのでしょう。

 これまでは、途中でそれを調整する人がいて何とかやってきましたが、そのやり方ではスピードが上がらない。この日本的なやり方が限界にきていると感じます。

島田氏:日本人の強みは「こだわり」だと思います。そんなところにこだわる必要あるのかというところにまで徹底してこだわる。それは強みですから捨ててはいけません。一方、アメリカは「割り切り」です。英語でいえば「good enough」ですね。「こだわり」は諸刃の剣でもあります。こだわらないでいいところまでこだわると、膨大なムダが生まれるからです。 食品ロスの問題などは典型的です。

 日本人一人一人のちょっとしたこだわりが、膨大なムダを生んでいる可能性があるのです。しかし、そのこだわりのおかげで生まれるものもたくさんある。ですから、こだわるところとそうでないところを分けるべきです。今までのように、すべてにこだわる余裕は、もうありません。

【次ページ】日本企業がグローバル化を目指すときに考えるべきこと

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