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  • 2016/05/23

千葉大 野波健蔵 教授、千葉市長 熊谷氏らが議論 ドローンは空の産業革命を起こすか

ここ数年でドローンの社会的な認知度も高まり、技術革新も進んだ。世界中でコンシューマー用市場が活況を呈し、B2B市場も立ち上がった。最近は産業用ドローンがイノベーションを起こすコアテクノロジーになるのでは、という期待も高まり、日本においては千葉市が積極的にドローンの実証実験を行っている。千葉大学特別教授の野波 健蔵氏と、行政の立場からドローン導入を推進する千葉市長の熊谷 俊人氏、Wired誌の元編集長で、3D RoboticsのCEOを務めるクリス・アンダーソン氏、アクセンチュアの程 近智氏が、産業用ドローンの可能性と未来について熱い議論を交した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

産業用ドローンで空の産業革命を起こすために

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千葉大学 特別教授
自律制御システム研究所 代表取締役
野波 健蔵氏
 新経済サミット2016に登壇した野波氏は、ドローン開発の第一人者として知られる自動制御の研究者だ。当初、NASAでコンピューター支援による有人ヘリコプターを研究していたが、帰国してオートパイロットを開発し、それをシングルローター型ヘリコプターに搭載。2001年には日本初の自律飛行に成功し、オートパイロットと飛行技術の特許を取得した。

「2010年には6枚羽根の独自マルチコプターを完成させ、東日本大震災と原発事故の際に福島県まで約2000キロの空撮を敢行した。これらの技術をベースに、2013年に大学発ベンチャーの自律制御システム研究所を立ち上げた。現在、約40名の従業員を抱え、ドローンベンチャーのなかでも資本金・社員数がトップの企業に急成長している。また技術についても、オートパイロットを開発できるのは我々のみと自負している」(野波氏)

 野波氏は「産業用ドローンで、我々は空の産業革命を目指している。物流拠点から集積場まで大型ドローンでモノを運び、そこから小型ドローンで『ラストワンマイル』に効率よく輸送したい。この革命を東京近郊の千葉県で実現するために、いま政府から多くの支援をもらい、千葉市と協力して進めている」と現在の実証実験について語った。

 空の産業革命のために重要なのは、ドローン自体のテクノロジーだけではなく、前述のような実証実験の場をいかにして確保するかという問題もある。モデレーターの程氏は「住民や国があっての世界で、先端的な取り組みを行うには、自治体の役割が大切だ」であるとし、熊谷氏に話を振った。

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千葉市長
熊谷 俊人氏
 千葉市長の熊谷氏は、もともとNTTコミュニケーションズの出身だ。2009年の千葉市長就任以来、自治体でICTを活用した産業育成を考えてきた。

「千葉市は国家戦略特区に指定され、野波教授にも参画いただき、ドローン実証実験に向けた準備を進めている。現在ドローンは山間部で実験が行われているが、ビジネスに乗るには都心部での可能性を模索する必要がある。そこでドローン実験に適した立地特性を生かし、幕張新都心で実験に取り組む予定だ」(熊谷氏)

ドローン活用の課題は

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 ドローンの活用は良い側面だけでなく、リスクもある。程氏は「まだ法整備もできていないが、どんな点がドローン活用の課題になるのか?」と熊谷氏に問いかけた。

 議論の中で課題として挙がったのは、プライバシー問題だ。画像をどのようにコントロールするのかということだ。また安全・安心を担保する技術と、それによってどのエリアまで飛行が見込めるのかの見極めも重要になるだろう。

 熊谷氏は「いずれにしても民間から始まっていく。我々も行政の立場から、ルールをしっかり決め、研究会などを立ち上げて、住民と一緒に実証実験を行いたいと思う」とした。

「実証には水平と垂直の活用がある。千葉湾岸には、EC企業が物流拠点を構えている。海上輸送に必要な法制度や規制改革を進め、水平的な輸送を行いたい。またベイタウンの住宅に対し、近隣の集配所から垂直的な輸送を試みたり、イオンモールの旗艦店に対して輸送する実験も併せて実施する方針だ」(熊谷氏)

 また千葉市では、可能なかぎりドローン関連産業と研究機関を集積したい意向だ。企業立地のために、関連産業を対象に4月から補助制度も追加する。熊谷氏は「行政としてドローン実証実験のフィールドを用意し、プライバシーや安全の問題を住民と話しあいながら進めていく。日本における基準を探し、それに従って条例などの法的な整備も考えていきたい」と、産学官民が一体となって取り組む姿勢を示した。

クリス・アンダーソン氏「ドローン自体に関心はない」

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3D Robotics CEO
クリス・アンダーソン氏
 続いて、北米最大のドローンメーカー・3D Roboticsのクリス・アンダーソン氏が、同社の取り組みついて説明した。同氏は、2012年までWired誌の編集長を務め、多くのベストセラーも送り出した有名な人物だ。モデレーターの程氏は「なぜドローンに取り組むのか?」と素朴な疑問を投げた。

 同氏は「私が興味を持っているのはデータで、ドローン自体には関心はない。ドローンに取り組むのは、空にセンサーを置くためだ」と明確に答えた。「物理学は世界の理解を深める手段であり、そのために最もよい方法がメジャーメントだ」と語るように、彼がデータ収集に対して強い関心を持つのは、もともと大学で物理学を専攻し、ロスアラモス国立研究所や、Nature誌とScience誌の編集に携わってきたバックグラウンドもある。

 これまでの20年間は、インターネットによって、デジタルワールドを計測することはできた。しかし身の回りの世界を見渡すと、実はアナログで物理的なものも多い。同氏は「我々は、そういったものを測る手段を開発してこなかった。ドローンは空飛ぶセンサーであり、収集されたビックデータに大きな価値を感じる。物理的な現実世界をデータ化して、地球を分析することで、農業、土木、建築、不動産、保険、捜索・救助など、幅広い産業に影響を及ぼせる」と説明する。

 また同氏は、3D Roboticsが開発したドローン「Solo」についても紹介した。Soloは、コンシューマー向け製品として、多彩な自動撮影モード、スマートフォンのアプリによる機体制御、GoProやジンバルを同時に操作できるスマートコントローラーなどを装備。30個ものセンサーと、高性能プロセッサー、高速ネットワークを採用し、さらにソフトウェアを変更することで、産業用ドローンとしても利用することも可能になるという。

「ドローンはIoTデバイスであり、そのセンサーをクラウドにつなぎ、インテリジェンス性を活用できる。両者の組み合わせにより、さらに従来よりもスマートなドローンが誕生するだろう」(アンダーソン氏)

 同氏は、Google EarthとGoogle Street Viewを例に挙げながら、これからの時代はこの2つの間に位置する解像度のドローンが大きな役割を果たすことを示した。つまりドローンならば、衛星から見た場合と、地上から道路を見た場合の中間の解像度で、時々刻々と変化する現象を観測できるということだ。

 アンダーソン氏は「たとえばドローンを使えば、農場のどこに農薬をまけばよいか、ワンクリックで把握することが可能だ。また建築現場も高精度に管理できる。自律型ドローンならば、観測コストも安くなり、従来まで不可能だったものまで測れる。“ドローンの目”で見ることで、センサーデータを賢く使いながら地球を守れる。ドローンの登場により、人類が世界を真の意味で理解できるようになる」と期待を込めた。

【次ページ】ドローンも「プラットフォームと標準化」で日本が負ける?

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