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  • 2016/05/24 掲載

P2Pレンディングは前途多難? レンディングクラブを追うFinTechスタートアップが語る

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FinTech(フィンテック)分野の中で、借り手と投資家をマッチングさせるP2Pレンディングがよくも悪くも注目されている。この分野をリードするレンディングクラブを追うP2PレンディングサービスのスタートアップであるBuleVine、Insikt、Avantの代表が新経済サミット2016に登壇。破壊的なイノベーションを引き起こす可能性を秘めたP2Pレンディングのポテンシャルや法規制の課題について議論した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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P2Pレンディングの未来をスタートアップが議論

中産階級の低所得者層に融資を行うInsikt

 P2Pレンディングとは、ネット上で、借り手と投資家をマッチングさせる資金貸借のプラットフォームを提供するサービスのことだ。P2Pレンディング最大手のレンディングクラブは2014年12月にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場し、当時の時価総額は1兆円を超えるなど話題になった。


 Insiktもレンディングクラブと同様、「Lending as a Service(LaaS)」を標榜して、3年前にホワイトラベルローン(相手先ブランドで商品やサービスを提供するローン)の提供を開始した企業だ。

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Insikt
CEO
ジェームス・グティエレス氏
 Insikt CEO 兼 共同創業者のジェームス・グティエレス氏は、ヒスパニック系の人々に少額融資を行うOportunを創立した人物で、50万人以上に15億ドルを上回る融資を行い、同社をマーケット・リーダーに育て上げた実績がある。

 米国では現在、多くの人々が金融支援を受けられないのが実情だ。400ドルのお金が急に必要になっても、国民の47%が銀行口座に預金がなく、クレジットのニーズが非常に高い。特に中産階級の低所得者層の与信供与には高いニーズがあり、Insiktも彼らをターゲットにサービスを展開しているという。

「顧客の消費行動を把握するビッグデータを活用して、企業は融資をしようとしない。そこで我々は『Lendify』というクラウドベースのプラットフォームを開発した。これはクレジットのスコアリング、アプリケーション、バックオフィス、ファンディング、モバイルなどの機能を統合したものだ。特にモバイルによる手続きは重要だ。Insiktはデータをうまく活用し、労働者のためによいサービスを展開したい」(ジェームス氏)

 Insiktはいわゆるノンバンクで、銀行業ではない。資金調達の方法は、ホワイトラベルによってローンを提供するというやり方だ。Lendifyを通じ、任意の小売店、オンラインブランド、銀行などから融資できるようにしているが、その際に投資家はオンラインツールを使ってリスクや投資効果を追跡できる。

請求権譲渡の仕組みを初めてオンラインで完結させたBlueVine

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 パロアルトに拠点を置くスタートアップのBlueVineは、中小企業が抱える売掛債権をベースに融資をする「インボイスファクタリング」(請求権譲渡)のベンチャーだ。同社は、このビジネルモデルを初めて100%オンライン上で実現したFintech企業として注目されている。

 請求権譲渡の特徴は、企業が請求書を譲渡する代わりにお金を前借りでき、従来のように数カ月後の振り込みを待たずに、キャッシュフローのギャップを改善できることだ。すぐに売掛金が入り、それを投資に回せれば、さらにビジネスを成長できるわけだ。

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BlueVine
創業者 兼 CEO
エアル・リフシッツ氏
 もともとTI(テキサス・インスツルメンツ)のエンジニアで、コンサルタントやVCの経験もあるCEOのエアル・リフシッツ氏は「従来のサービスとは違う方法で、中小企業向けに運転資金を再構築したい。クラウドに接続すると登録企業のインボイスが表示され、それをボタンで選べば24時間内に最初の前借りが行える。インボイスが承認されたら、銀行の口座に電子的に支払いが行われる。また郵送で小切手を送ることも可能だ」と説明する。

 請求権譲渡は、米国だけで1000億ドルの取引規模がある大市場で競争相手も多い。しかし、これらはすべてオフライン企業だった。Webサイトがあっても、オンラインで口座を開設できないし、審査期間も長く、融資条件も複雑でわかりにくいものだった。

「そこで我々は、技術を最大限に活用し、100%のオンラインでインボイスファクタリングを行っている。20以上のAPIでWeb上からデータを集約し、マシンラーニングのアルゴリズムで、迅速にオペレーションできるように工夫している。新商品も立ち上げた。Line of Creditという形で、リボルビングローンができるものだ。ボタンクリックですぐに融資できるユーザーエクスペアレンスや、幅広い商品を展開していきたい」(エアル氏)

ミドルクラスの消費者向けにサービスを提供するAvant

 Avantは、借入れコストと借入れのハードルを下げる非常にシンプルなミッションをグローバルで展開するために、3年前に設立されたスタートアップだ。同社はシカゴ、ロサンゼルス、ロンドンなどにオフィスを増やすなど急成長している。

 同社は、銀行から見落とされたミドルクラスのコンシューマを対象に、個人ローン、カードローン、自動車ローンなどを展開している。

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Avant
キャピタルマーケット 部門マネージャー
ティム・クラーク氏
 キャビタルマーケット部門マネージャーのティム・クラーク氏は「この分野は米国で12兆ドルの規模があるが、金融危機後、中間層の対応ができておらず、なかなか与信限度を得られない。医療費など人生の危機に直面したとき、効率よく融資する技術によって、安価にお金を提供したい」と語る。

 Avantはオンラインの融資プラットフォームで、現在まで30億ドル以上の資金調達を行い、米国内46州と英国で50万件以上の融資を行ってきた。平均融資額は約8000ドル、年間金利は9%から36%で、平均融資期間は約4年間となっている。

「ローンを申し込んで、5分間で審査できる。バックエンドに最先端のマシンラーンニングのアルゴリズムを活用しているからだ。ほぼリアルタイムで融資判断を行い、翌日には融資が受けられるため、顧客満足度も非常に高い。またマーケティングも同様に高度なマシンラーニングを使い、ターゲットを分析している」(ティム氏)

【次ページ】米国でのP2Pレンディングの普及状況、法規制の問題

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