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- 2019/04/18 掲載
基礎からわかる「国際送金の課題」、なぜブロックチェーンで解決しようとしているのか
シンガポール「Money20/20」レポート
根本的な課題は「国境を越えた送金」
まずは国境を越えた送金で採られる「コルレス契約」という送金方法を説明しましょう。たとえば私が米国のX銀行に銀行口座を持っており、Aさんは日本のY銀行に口座を持っているとして、私がAさんにお金を送りたいと考えたケースで見てみましょう。
私がAさんへの送金の手続きをすると、米国のX銀行は、私の口座から送金額分を引き落とし、そのお金を米国のX銀行の中のY銀行の口座に振り込みます。それが終わると、日本にあるY銀行の方で、日本にあるY銀行の中のX銀行の口座から同額のお金を引き落とし、日本にいるAさんの口座に振り込みます。
これは非常にシンプル化した説明であり、事実そのままではないのですが、コルレス契約とはこういった仕組みで国際送金を実現しています。
これだけ聞くと、どこにどう問題があるのかわからない人もいるでしょう。ここから、もう少し詳しく仕組みを見ていきましょう。
国際送金の課題:スピード
コルレス契約では、「誰が」「誰に宛てて」「いくら」を「送るのか」という情報が不可欠です。こうした支払いに必要な情報をここでは「メッセージ」と呼びましょう。メッセージは「SWIFT(スウィフト)」と呼ばれるシステムの上でやりとりされます。スウィフトは約50年使われている非常に古いシステムです。
国際的な送金が行われるとき、「誰が」「誰に宛てて」「いくら」を「送るのか」というメッセージが送られます。その後承認を経て、米国のX銀行も日本のY銀行もそれぞれ必要な処理を行い、処理内容が銀行の元帳へ記載され、一連の処理の後にはスウィフトでメッセージが送られます。そして間違いがないように最終確認が行われます。このやりとりが完結するまで3日から4日かかります。
もちろん、こうした処理は1日1回だけ起きるのではなく、毎分毎秒、各国間で膨大な数の送金が行われています。そのため、この一連の処理が大きな負担になっているのです。
国際送金の課題:送金途中の手数料
さて、ここまでは割とシンプルな話でした。問題は、国境を越えた2つの銀行が協力関係を持っていないときです。では今回私の銀行は米国のZ銀行ということにしましょう。私が米国のZ銀行から日本のY銀行にあるAさんの口座にお金を送るとしましょう。米国のZ銀行は日本のY銀行にスウィフトでメッセージを送ります。そうすると日本のY銀行は米国のZ銀行に対し「我々のコルレス契約は米国のX銀行なので、そちらを経由して送金してください」と伝えます。
この場合、2つの銀行の間に別の銀行が入るため、プロセスがより複雑になります。そしてさらに複雑になることもあり得ます。銀行同士の協力関係によっては、2つの銀行の間に3つも4つも送金を媒介する銀行が入る可能性があるからです。このように中間ポイントを複数持つ送金は、実はよくあることなのです。
こうした中間ポイントで何が起きるのか? それは手数料を取るということです。ここで問題になるのが、スウィフトは途中でどれだけの手数料が取られるのかをメッセージに含まないということです。
そのため、たとえば最終的に100万ドルを相手に送り届けたいとしても、相手に100万ドルを届けるためにいくら手数料上乗せすればいいのかわからないのです。
また、お金が移動する間、お金が今どこにあって、どのようなステータスにあるのかがわかりません。さらに、それぞれのポイントで時間がかかるので、処理日数はさらに増加します。そして数日経って、やっと送金相手にお金が届きます。
前述の例では2人の個人間の送金という形でお話をしましたが、これが企業間の取引となると、ステークホルダーも多く、やりとりがさらに複雑化します。
これがこれまでの国際送金の在り方です。効率が非常に悪いですよね。
国際送金の課題:コミュニケーション不在の非効率な送金プロセス
約50年間、銀行が増えたり減ったりする中、スウィフトは成長しました。中には長い間、多くの銀行と関係を保ってきた銀行もあります。こういった銀行は大きな銀行です。小さな銀行は関係を持つ銀行の数も比較的に少ないため、送金ルートの間に大きな銀行を入れなければ送金ができません。そして送金ができても、決済のためのルートが長くなってしまいます。繰り返しになりますが、スウィフトでは、決済の経路を順番に辿らなければなりません。そして決済の経路を順番に辿るためには、コルレス契約が必要だったのです。
【次ページ】メッセージと送金を1つのネットワークに
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