開閉ボタン
ユーザーメニュー
ユーザーメニューコンテンツ
ログイン

  • 会員限定
  • 2016/06/01

電力の地産地消が拡大、宮城県東松島市の「スマート防災エコタウン」が描く未来とは

東日本大震災の被災者が暮らす宮城県東松島市の災害公営住宅が、近隣の病院などへソーラーパネルで発電した電力の供給を始めた。街全体の電力利用をITで効率化するスマートコミュニティーが増えているが、街区を越えた自営線で電力融通に踏み出すのは全国で初めてという。東北大学大学院経済学研究科の増田聡教授(都市・地域計画学)は「地産型エネルギーとその地域管理を復興事業で実現したユニークなプロジェクト」と評価する。同災害公営住宅は、なぜ街区を超えた「電力の地産地消」に取り組むのか。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

photo
街区外へ自営線を使って電力供給を始めた東松島市スマート防災エコタウン
(写真:積水ハウス提供)


ソーラーパネルで発電、一部を病院などへ供給

関連記事
 この災害公営住宅は、東松島市赤井地区の市営柳の目東住宅で、愛称は「東松島市スマート防災エコタウン」。大手住宅メーカーの積水ハウスが設計、施工した。

 東松島市復興政策課、積水ハウスによると、東松島スマート防災エコタウンは水田を造成した約4ヘクタールの敷地に、集合住宅15戸、一戸建て住宅70戸が並ぶ。計画人口は247人。2015年8月から入居が始まっている。

 ソーラーパネルは集合住宅、集会場の屋根の上や敷地内の調整池に設置された。最大発電能力は470キロワット。一般家庭100世帯以上の消費電力に相当する。電力は災害公営住宅内の各戸に供給されるほか、近隣4カ所の病院、公共施設にも送られる。

photo
設置されたソーラーパネル
(写真:東松島市提供)


 夜間は昼間に発電した余剰電力を共用の大型蓄電池に貯めて使用する。蓄電池の容量は480キロワット時。不足が生じた場合は、卸売電力を購入する。将来は市内のごみ焼却場など低炭素型発電所から電力を購入して対応することも視野に入れている。

photo
余剰電力を貯める大型蓄電池
(写真:積水ハウス提供)


 非常用の大型バイオディーゼル発電機も設置している。最大発電量は500キロワット。大規模災害で長期間の停電が発生しても、3日程度は電気を通常通りに使用できる。電力の供給先を病院や集会所などに限定すれば、さらに長期の利用も可能になる。非常用発電機の燃料がなくなったあとも、太陽光発電と蓄電池で最低限の電力供給ができる。

 配電は災害公営住宅内と周辺の病院、公共施設を結ぶ自営線網を使い、スマートグリッドと呼ばれるエネルギーネットワークを構築して進める。電力供給の制御はCEMS(地域エネルギー管理システム)で最適化する。各家庭でもエネルギー使用量を見える化し、節電を意識できるよう工夫した。

 東日本大震災では、東北から関東にかけて大規模な停電が発生した。東北では青森、秋田、岩手3県の全域、宮城、山形、福島の広範囲に及び、約440万世帯が被害を受けた。関東では茨城県を中心に約405万世帯が停電している。

 宮城県仙台市の場合、市内全域の電力が復旧するのに10日ほどかかった。被災地全体でみると、復旧までの期間は東京電力管内が1週間余り、東北電力管内が3カ月ほど。その間、被災地の住民は救援物資の発電機などに頼る生活を余儀なくされた。発電所や変電所だけでなく、広範囲にわたる送電網も復旧しなければならなかったからだ。

 しかし、東松島スマート防災エコタウンのように自立した発電設備と地域内の送電ネットワークを持っていれば、こうしたリスクを大幅に軽減できる。

 積水ハウスでプロジェクトリーダーを務めた石田建一常務は「災害時の電力復旧が遅れがちな地方では、防災力が高く、経済的に地域活性化に貢献できる街が必要。地球温暖化防止に貢献でき、非常時にも電力供給が可能な新しい街を造ることができた」と胸を張る。

【次ページ】提示された未来のコミュニティー

新エネルギー ジャンルのトピックス

PR

ビジネス+IT 会員登録で、会員限定コンテンツやメルマガを購読可能、スペシャルセミナーにもご招待!