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  • 2016/06/02 掲載

Uberとトヨタ、LyftとGM――ライドシェアリングと自動運転を巡る提携の背景

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配車サービスやライドシェアリング(相乗り)と自動運転の2つの技術は、あたかもクルマの両輪のごとく、新しいモビリティを構築し、次世代の輸送システムを発展させていくことになりそうだ。ライドシェアリングサービスを提供するスタートアップと大手自動車メーカーが提携する背景にあるものとは何か。Lyft、Cabifyの創業者らが、ライドシェアリングと自動運転の未来について議論した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

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ライドシェアリングサービスと自動運転を巡る提携の背景

Uberを追うライドシェアリングのスタートアップ

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ウォール・ストリート・ジャーナル
特派員
久保田 洋子氏
 新経済サミット2016では、両分野に精通した国内外のパイオニアが登場し、マイカーを利用した有償での乗合いサービス「ライドシェアリング」と「自動運転」に関して議論された。

 ライドシェアリングや自動運転は、社会を激変させる破壊的なイノベーションであるがゆえ、社会的かつ技術的な規制のハードルも高い。モデレータの久保田氏は、各パネリストの紹介を兼ねて「これらのテクノロジーがどのような方向に向かうのか?」と見通しについて質問した。

 Cabify 創業者兼CEOのファン・デ・アントニオ氏は「我々の目標は、クルマの所有権を置き換えていくこと。数年前まではクルマは所有するか、レンタルするか、選択肢は2つしかなかった。レンタルではクルマを借りて自分で運転したり、タクシーやハイヤーに来てもらうということだった。しかしSNSが普及し、モビリティも進化し、最近では第3のオプションが増えた」と語る。

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Cabify
創業者 兼 CEO
ファン・デ・アントニオ氏
 スペイン発のサービスCabifyは、南米(チリ、ペルー、メキシコ、コロンビア)、スペイン、ポルトガルのスペイン語圏でビジネスを行っているライドシェアリングサービスだ。「スマホのアプリで自分のいる場所と目的地を設定すれば、近くにいるドライバーが迎えに来てくれる。南米とイベリア半島には約7億人が暮らし、1億台以上のクルマがあるため、大きな破壊を起こせる。1種類の言語なので、他のリージョンに比べて参入しやすい」(ファン氏)

 Lyftは、西海岸のサンフランシスコから北米を軸足に、各国でアライアンスを組みながらグローバルで展開しているライドシェアリングサービスだ。4年間でドライバー数は31万5000人、社員数は1000人を超え、1カ月あたり1000万台の乗車がある。これまでにGM、アリババ、楽天などから20億ドル以上を調達している。

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Lyft
共同創業者 兼 CEO
ローガン・グリーン氏
 共同創業者兼CEOのローガン・グリーン氏は「我々のビジョンは人とコミュニティを優れた交通手段でつなげること。すでに全米200以上でオペレーションを開始している。グローバル(のタクシー配車サービス)ではインドのOla、東南アジアのGrabTaxi、中国のDiDiとアライアンスを組んだ。まもなく中国でも我々のサービスで移動できるようになる。Cabifyもアライアンスが組めるだろう。いろいろな企業と協力し、グローバルを完全にカバーしたい」と意気込む。

 同社は直近で5億ドルを調達し、新しいプログラムを始動させている。GMと組んで、ウィークリーでのレンタルを行うというものだ。「このプログラムでGMのクルマを利用できる。長期的には輸送交通の市場は発展していくだろう。10年後はクルマの所有モデルがなくなり、我々のような輸送サービスへの移行が進むはず。オンデマンドのネットワークと自動運転によって、完全に新しい世界になる。GMと協力して、この分野に一歩踏み込んできたい」(ローガン氏)

GMやダイムラーはライドシェアリング分野に積極的

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 このようにインパクトの大きなライドシェアリング分野だが、自動車メーカーとスタートアップの提携が注目されている。ライドシェアリングのリーダー企業であるUberは、2016年5月25日、トヨタとの提携を発表したが、Lyftはそれに先んじてGMとの提携を進めていた。

 Lyftのローガン氏は「この分野で先見の明があるのはGMだ。米国での収益は、郊外で使われる大型SUVやトラックで創出されている。逆にいうと都市部で積極的に消費者を獲得するチャンスがあるということ。自動運転を使ったライドシェアは都市部から始まる。そこでGMはビジネスの商機を狙っている。とにかく先んじて、この市場をとりにいこうという考えだ」と説明する。

 一方、Cabifyはどうだろうか? 久保田氏はファン氏に、自動車メーカーからのアプローチやプラットフォームの融合について質問した。

「業界では動きが激しい。我々の本社はヨーロッパにあり、地元の自動車メーカーとOEMと関係が強い。彼らはこの分野で買収したり、投資を加速化させている。たとえばメーカーではダイムラーが積極的に動いている。最近、スペインで時間単位でレンタルできる自動車サービスを始めた」(ファン氏)

 通信分野の出身の同氏は、プラットフォームの融合についても独自の考えを示した。「通信事業と自動車業界の共通項はネットワークの敷設だ。これには莫大な投資が必要で、単一プレイヤーではうまくいかない。当然ながら両者は少し先を見て、どれぐらい投資すべきかを考えているはず。いろいろと考慮したえで、パラダイムシフトを促すことになるだろう。いずれにしてもメーカー、規制当局、そしてサービスプロバイダーが一丸となって課題を検討する必要がある」(ファン氏)

【次ページ】ライドシェアへの反対論と規制をどう変えていくか

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