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2016年12月19日

「Industry of the Future」とは何か? フランスが第4次産業革命で目指す社会

インダストリー4.0の本場・ドイツを中心にグローバルで製造プロセス標準化の流れが加速している。ヨーロッパ諸国では、従来からの産業構造の再編に取り組んでいるところだが、フランスのように早い段階から国を挙げて新たな施策を打っている国もある。「ロボット革命国際フォーラム」に登壇した「Alliance Undustrie du Futur(Industry of the Future)」のTahar Mellti氏は、フランスが進めている「Industry of the Future」について詳しく解説した。

執筆:フリーライター 井上 猛雄

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産業の未来(Industry of the Future)連盟
アライアンス専務理事
Tahar Melliti氏


フランスが進める改革「Industry of the Future」とは

 2008年のリーマンショック以来、フランス産業のGNP比は12%にとどまっている。それ以前は15%前後だったため、停滞が続く中で産業界の雇用も10%も削減されてしまった状況だ。

 また、フランス国内の産業設備は平均で20年ほど経っており、すでに中小企業の設備は30年以上も使われいるものも多い。このような状況を見直すべく、フランス政府は2015年4月に産業の未来アライアンスを立ち上げ、2020年に向けた新しい国家戦略「Industry of the Future」を推進しているところだ。

 まずフランス政府は、一丁目一番地であるIndustry of the Futureに加え、9つの市場をターゲットにしたソリューションを提示している。これは「次世代交通網」「IoT」「新資源」「未来の医薬品」「デジタルセキュリティ」「スマートシティ」「データエコノミ―」「ヘルス&フード」「エコ・モビリティ」といった分野だ。

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(クリックで拡大)

フランス政府が2020年に向けて掲げる国家戦略。Industry of the Futureと、9つの分野にフォーカスしたソリューション


 これらの産業を進展させるには、まずビジョンを明確にしなければならない。Mellti氏は「そこで我々は、まずフランスのIndustry of the Futureにおいて、エクスぺリエンス(経験経済)を創出し、トランスフォーメーションのプロセスと、主要な社会プロジェクトにより、自然・生命・プロダクトを調和させるビジョンを明確にした。フランスは、メジャープレイヤーになるためのリソースや技術ノウハウを持っている。中小企業から大企業まで、すべての企業を成功に導くためにサポートしたい」と強調した。

 またIndustry of the Futureのために、新たなアライアンスも組んだ。政府・学術界・産業界のキープレイヤーを一丸でまとめ、現在では合計3万3000社にのぼる企業が参加しているという。彼らは各地域のまとめ役にもなっている。運営委員会はフランスの経済相を中心に、2か月ごとに会議を開催し、課題解決にあたっているところだ。

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新たなブレークスルーを創出させるために、政府・学術界・産業界で新たなアライアンスも組んだ。現在は計3万3000社にのぼる企業が参加している


 このアライアンスでは「顧客とサプライヤーを結ぶ新経済モデルの確立」「工場間の接続と最適化」「新技術によるロボット協調と適応マニファクチャリング」「サプライチェーンとリレーションカスタマーサプライ」「教育の進化と集中」「産業へのデジタル技術の適用」というゴールが設定されている。

「Industry of the Futureでは、ヒューマンセントリックなアプローチが求められ、最適化・接続性・創造性の観点が重要だ。デジタルネットワークにより、モノやオブジェクト、機械、組織、エコシステムなども同時につないでいくことになる」(Mellti氏)

肝入り政策で中小企業のエコシステム構築を目指す

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 Industry of the Futureでは、「生産拠点の刷新と新生産技術の促進」「ビジネスモデル変革を促すデジタル技術のサポ―ト」「中小企業のエコシステム構築」という目標を掲げている。そして目標達成のロードマップを、以下の5つの柱として策定した。

 これらは「新技術による産業発展」「中小企業の変容の促進」「雇用訓練と労働環境の適用」「オープンな標準化に向けた国際協調」「創造性に優れた産業の育成」というプログラムで、6つのWGが推進にあたるものだ。

「このうち中小企業のエコシステムについては特に肝入りの政策だ。Industry of the Futureに向けて、新設備やデジタル機器を投資するために、2016年末までに1万5000社にリーチし、2000社をサポートしていく予定だ。またR&Dプログラムを展開し、技術的なソリューションを開発していく。ロボット工学など短期目標のロードマップに基づき、製造・設計・ロジスティック関連技術を支援していく」(Mellti氏)

 つい先ごろ、フランスの産業を新技術で加速させるために「FACTORY LAB」を立ち上げたばかりだ。これは学術、サプライヤー、エンジニアからの技術を最終的に統合するプラットフォームだ。航空宇宙分野、海洋分野、化学分野など、産業のエンドユーザーに向けて、年間20のプロジェクトを立ち上げていく予定だ。

ドイツのインダストリー4.0との連携も

 標準化の推進に関しては、2016年末までにドイツとロードマップを共有し、国際標準への道筋をつけていく方針だ。一方、15個のショーケースとなるプロジェクトを立ち上げ、新たな輸出産業を活性化させる「Creative Industry」と呼ばれるバナーをつくり上げるという。例えばショーケース・プロジェクトの事例には、ドイツ企業も含めた有名どころの企業が並んでいる。

「例えばAIR LIQUIDEは、エネルギー管理やモニタリング用のリモートコントロールのプロジェクトを担当している。またBOSCHとも地域のバイオマスを活用することで、CO2削減のプロジェクトに取り掛かっている。SEWは、ロジスティックとモビリティを統合したロボティクスのプロジェクトを開始した。シーメンスは造船設備の増強に取り組んでいる」(Mellti氏)。

 また、ドイツのインダストリー4.0とコラボレーションを組みながら、中小企業に特化した150以上のユースケースをWebサイトでも展開中だ。雇用訓練と労働環境についても、継続的に施策を進めていくという。「まずビジネスの進化を理解し、具体的なショーケースを活用して分析を行っていく。さらに労働環境への影響について定義し、既存技術を参照したり、適用することで、新しい教育もつくり出していくという流れだ。その教育は産官学においてブラッシュアップしていく」(Mellti氏)。

 このようにフランスのIndustry of the Futureは、インダストリー・ドリブン(産業駆動型)によって社会に実装していくモデルだ。さらにコーディネートと相互扶助に基づいた集中プランを策定していく。また経済大臣のリーダーシップのもと、政府が強力に関与し、公的投資銀行も資金面で中小企業を全面的にサポートしていくという。この方針を見ると、いかにフランス政府が第四次産業革命に本腰を入れているか分かるだろう。

【次ページ】フランス政府が2000社の中小企業に21億ユーロの資金を投下

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