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- 2016/12/06 掲載
欧州の隠れ工業国「チェコ」がドイツと提携するワケ
隠れ工業国チェコが進める「Prumysl 4.0」とは
日本ではあまりなじみがないかもしれないが、チェコ共和国はヨーロッパで屈指の工業国として知られている。チェコの製造業が占めるGDP比は、ドイツや日本のそれよりも高い。もともとチェコは、作家のカレル・チャペックが「ロボット」という言葉を生み出した国であり、そのあたりからも工業立国である理由に合点がいくだろう。Marik教授は「我々の製造業の75%がドイツ向けであり、32%をドイツに輸出している。そのためチェコも、インダストリー4.0へのすり合わせなければいけない。とはいえ、Prumysl 4.0を単なるインダストリー4.0のレプリカにするつもりはない。チェコの状況とニーズにマッチしたものにしたい」と打ち明ける。
ドイツとの提携で、チェコは「得意領域」の存在感を示せるか
「雇用面や労働力、教育、金融などで、社会にどんな変革をもたらすのか、広範囲での提唱もなされてきた。産官学の連携、業界団体、中小企業といったすべての機関や団体が、このビジョンに向けて動き出しているところだ」(Marik教授)
2016年、チェコはドイツとインダストリー4.0において2国間で協力することに合意。8月には、ドイツのメルケル首相がプラハを訪問し、チェコのソボトカ首相とインダストリー4.0に関する会談を行った。チェコでは、人工知能やロボットの導入にあたって、今後1億ユーロの資金を投下していく方針だという。これからの方向性を見極めるのは難しいが、この協力体制によって基本的な体制の土台をつくり、研究・開発環境や教育を変えていく。ここには生産性の向上や中小企業の育成などの目的もある。
「インダストリー4.0のグローバルな価値創出に組み込まれることで、チェコが得意とするロボットやAGV(無人搬送車)といったモビリティ分野に貢献できると考えている。応用技術についてはリソースを統合し、国家戦略チームにより実験ラボの投資を行う。チェコ工科大学のCIIRCで建設中の新ビル内にテストベッド(注1)がつくられる。ここで中小企業が利害関係を超えて、共同実証実験やデモを行えるようにしていく」(Marik教授)
(注1)実際の運用環境に近づけた試験用プラットフォーム
このテストベッドは、Prumysl 4.0とインダストリー4.0をつなぐ重要なハブとなるものだ。チェコにとって、ドイツをはじめとする他国との相互運用性の観点からも注目すべきだ。ベストプラクティスを共有することで、グローバルプレイヤーに対する競争力もつけられるだろう。スタートアップ向けの場も提供されており、優秀な学生によるイノベーションも推進していく方針だ。
テストベッドに関してはチェコとドイツそれぞれに2つの施設がつくられる。地域分散型でリソースを共有していくが、他国との協業も図っていく方針だ。Marik教授は「いまグローバル企業とのジョイントベンチャーも進めている。シーメンス、IBM、ロックウェル、Automoation、イートン、シュナイダー、ABBなどが参加している。しかし、まだ日本企業の参加はないため、ぜひ協力して欲しい」とアピールした。
【次ページ】工業国として高みを目指すチェコの課題
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