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イノベーションの源泉となるダイバーシティ&インクルージョンの推進は、どんな企業にとっても経営課題だ。しかし、ダイバーシティの一翼を担うLGBTの理解は進まず、多様性を受け入れるインクルージョンの組織風土もなかなか実現しない。日本アイ・ビー・エムは、LGBTの取り組みをいち早く行ってきた企業として知られている。同社のダイバーシティ&インクルージョン推進は順調なのだろうか? 同社のダイバーシティ施策の本当の狙いは何なのか? ゲイの当事者として活動をリードする同社 ソフトウェア事業部 部長の川田篤氏に話を聞いた。
日本IBMではアライがLGBT対応に動き出した
日本IBMでは、2016年秋に「LGBTアライになろう!」というパンフレットを作成し、社内にアライ(Ally:同盟、支援の意)と呼ばれるLGBTの理解者、支援者を増やす活動を本格的にスタートした。
日本IBMのLGBTへの取り組みは2003年から段階的に、委員会の設置、LGBTコミュニティの支援、人事部と連携した制度改革など、どちらかというとLGBT当事者がリードするやり方で進められてきた。
川田氏は、「昨年始まったアライ活動の特徴は、社内のアライの人たちから提案があって動いているという点です。これまで社内のLGBTグループは当事者+アライという形で活動してきましたが、アライの人たちの意識が変わってきて、『自分たちにできることは何だろう?』とより積極的にいろいろなアプローチを取るようになりました」と語る。
日本IBMでは、「アライが中心になって活動をリードする」という、新しいフェーズを迎えている。日本IBMの15年近くにわたるLGBTの取り組みの中で、「アライはアライとしてきちんと行動する必要がある」ということに社内のアライが気づき、ここに至っているのだという。
アライ推進の具体的な活動のメインは、月に一度ランチタイムに開催している「LGBTアライ・ラウンジ」だ。アライのメンバーが中心に集まり、ランチを食べながら、「LGBTへの理解を深めるために何ができるのか」を話し合う。
「これまで日本IBMではLGBTの存在や課題の認知拡大のために、社内セミナーの実施、社内外への情報発信、LGBTパレードへの参加などをしてきました。LGBTというキーワードの可視化についてはある程度の成果は出してきたと思いますが、LGBTに関心がある人とそうでない人の差が大きいと感じています。LGBT理解のすそ野が広がっているかというと、残念ながらまだそこまでにはなっていません」(川田氏)
ダイバーシティとインクルージョンはイノベーションのための戦術
あるとき、アライの社員が自分の部署でLGBT勉強会を開いたとき、「そんな話聞きたくもない」と言って席を立った人が出たという。
「LGBTというキーワードは社内で浸透しているが、『知る』ところで止まってしまい、なぜ会社としてLGBTの取り組みを進めているのか全く腑に落ちていない社員が実は多いのではないかということに気がつきました。LGBTという言葉の可視化に注力してきたので、本当の意味での理解と、『LGBT』という言葉の間にずれがあったのだと思っています」(川田氏)
実際、「業務で優先すべきことがある中で、なぜLGBT対応に社内資源を割くのか理解ができない」という意見もあるかもしれない。なぜLGBTに対応していかなければならないのだろうか。
【次ページ】イノベーションで「アライ」が果たす役割
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